僕はレベル40

心が動いたことをかいていく

King Gnu(キングヌー)の3rdアルバム "CEREMONY"について長々と書いていく

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ついに出た(通算3回目)

 

うそです。2ndの『Sympa』から1年なのでぶっちゃけ「ついに」という程は待ってない。

それどころかこの1年あらゆるメディアに露出しつつもコンスタントに曲を出してたのでむしろ、え?もう出るんすか?くらいの感覚。

そんな彼らの3rdアルバム『CEREMONY』。目まぐるしく状況が移り変わる、まさしく激動の中をサバイブしてきた彼らの大傑作について書いていく。

例によってスーパー長いので、あしからず読んでくれ。

 ちなみに過去作レビューはこちら:

アルバムの意味

中身について触れる前に、アルバムの意味付けみたいなところから触れていきたい。

まずはタイトルの”CEREMONY”。何も考えずに訳すと儀式・式典。大事なのは、「じゃあ何の儀式なんだ?」ってことだ。

まず、リリースを2020年の年明けすぐに合わせてきたところから見て、2020年代の幕開けを飾るという意味は大いにありそう。そして、来るドデカイ祭典として、東京オリンピックについても大いに意識していると思われる。

そしてアルバムとしての文脈だ。前作でシンパ(同調者)を募ってそのプランが成功という言葉では足りない、超ド級の大成功を収めた彼ら。

で、普通に読み解けば、得た仲間たちと夢を見に行く大冒険の幕開けともとれる。

つまりアレです。ワンピースで言えば(イーストブルー)編が"Sympa"であり、グランドライン編が今作"CEREMONY"。アラバスタくらいにいるイメージだ。伝われ。

ジャケットデザインが不穏

と、ここまでは軽いノリで語ったが、ジャケットデザインはかなりダーク。ジャケット含めたアートワークもアルバムコンセプトの一部なのでここは重要。ジャケットにはたくさんのシンパがKing Gnuの象徴と思しき少年?を囲んでいる様子が描かれている。このシンパの暗い事暗い事。背中にはKing Gnuロゴ。そしてフリーザ様のポッドみたいなやつにはTOKYO 2020の文字が刻印されてる。これが五輪をメタってるのか、カオティックトーキョーの新たなディケイドを示しているのか、あるいは両方かはわからん。

ここでよく見ると気づく大事な事は、この紙吹雪のような紙物体が、リリースされたシングル達のジャケットであるという点

そう、バラバラに切り裂かれているのだよ。

ここの解釈はほんっとに色々できる。 

これってつまり・・・解散の暗示?と見ることもできるし、これまでのKing Gnuを捨てて、次は新しいモードへ向かう儀式とも取れる。おい、次のアルバムはきっと踏み絵になるぜ!?

あるいは曲を浴び聴かせるという事のメタファーかもしれない。

一説にはぬーを解散たがってるとの噂もあるが、少なくとも常田大希というプロジェクトの首謀者が新しい何かを始める区切りにしている、という事だけは間違いない

ちなみに歌詞には様々な角度から切り取られたセレモニーの様子が描写されている。必見! フォントとかも全部違う。芸コマすぎるので全部味わい尽くせ!

とまぁ、コンセプト一つとってもあれこれ想像してから聴くと全然違う意味合いを帯びた曲になるのでみなさんも存分に妄想されたし。

楽曲について

それでは楽曲について触れていく。発売日まで一切の新曲やティーザーに耳を閉ざし、餓死寸前の状況まで自分を追い込んでから聴いた。贅沢だった。この10日ほど色々な聴き方をした。ある時はボーカルに集中、次はリズム隊だけ追ってみたり、ランニングしながら聴いたり、寝る体制で聴いてみたり。とにかく丁寧にメッセージを受け取るだけの真摯さは持とうと思った。

I. 開会式、VI. 幕間、XII.閉会式 

一聴してすぐにわかる。

な、なんか不穏ぇ・・・

おどろおどろしいという表現の方が適切か。ホーンセクションが入ってきてようやくファンファーレになる。前作のSympa I〜IVよりも更にクラシカルに彩られた前奏・間奏・後奏。どの曲にも共通して聴衆の叫び、チャントが入っていて、そこに弦隊がクロスすると (名作という意味での)クラシック映画の空気すら感じる。ヘイトフル・エイトとかな。

ヘイトフル・エイト [Blu-ray]

ヘイトフル・エイト [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: Blu-ray
 

それぞれが丁度いいアルバムの襖になってて、次の空間への入り口になってくれる。この役割がコンセプトアルバムとしての今作の流れを作ってるのは間違いない。

そしてまたコントラバスとチェロがいい音しとるわ。 

メディアで藝大出身のオシャレバンドみたいな括られ方をされてるのが、ほんっっとに反吐が出るんだけど、すごいのは藝大出身じゃなくて(いやすごいんだけどさ)、常田大希という男の音楽的素養が凄いんだ。  

II. どろん

彼らの十八番、疾走感のある、でも影のあるロックナンバーで本編がスタート。てっきり飛行艇から始まりそうな気がしてたので、良い意味で裏切っていく。井口ボーカルと常田ボーカルのユニゾンで始まるのがなんとも憎いね。完全に分かってる。特にVo. 常田としては全曲で一番キーが高い。彼は今作かなり歌ってるので、そこも聴きどころ。

そしていきなり全開にブリンブリンなDr. 勢喜&Ba. 新井のリズム隊コンビ。特に1:52からの流れは絶対ライブのハイライトになるので、要チェック。

そして歌詞は曲調と合間って不穏な中を走り抜ける感じ。

いつだって期限付きなんだ 何処までも蚊帳の外なんだ 血走って噛み付いた 味方は何処にいるんだ?  

あれだけ売れてもこの懐疑心。どこまで行っても焦燥感に苛まれる苦悩が激しいギターに表現されてる。

個人的パンチラインは

大都会の他愛もない大恋愛 

だ。母音A・Iでズラしつつ韻を踏みまくるリズムが気持ちいい。

高く飛びたきゃ膝を曲げるんだ しゃがまなきゃ飛べやしないな 

 も好き。

III. Teenager Forever

ティ・ティ・ティ・ティ!!!

詳細はこの前書いたので割愛する。 CEREMONYで唯一何も考えずに縦ノリで暴れられる明るい曲。この曲が異質って逆にすごい。

IV. ユーモア 

はい、It's a small world ファンの皆様、お待たせいたしました。

メディアでは白日ばっかりが持て囃されるんだけど、実は最もKing Gnuでしか成立しない曲はこのユーモアIt's a small worldだと思う。

この夜感は井口理の声質あってこそ。流石夜の帝王だけあるな!

夜王井口の一番聴いてて気持ちが良い音域は実はここで、3人のミドルテンポ演奏に彼の中性的なボーカルが乗る事でコミカルでユーモラスな、不思議な空気感が生まれる。これぞオリジナリティよ。

ちなみに本作の曲で一番歌詞に同意したのはこの曲。深夜帯に作業してる時のハイになったりローになったりするあのホルモンバランスな。この曲はブログを書いてる時の僕ですよ、マジで。

午前一時、二時、三時のハイ↑ロー⤵︎ハイ⤴︎の表現で、なんだかんだで上手く行く気がして「きた」と、「いる」で過去形から現在形に移行する事で微妙な感情の機微を捉えているのもワンポイント。

好きなフレーズは

背伸びしたってアヒルはアヒルか

空の蒼さを眺めているんだ 

じゃなくてとしてるのがあくまでも心象風景としての「アオ」のイメージ。深読みしていけ。

あと、コーラスワークがとても良き。常田ボーカルは珍しく歌詞にならないイェイイェイを歌ってるし、新井先生やエルムホイちゃんの声も重層的に入ってる。ライブではアコースティックverも披露してくれそうで楽しみ。  

そしてこの曲の終わりと共にアルバムの前半ハイライトに突入する。

V. 白日

あえて最近聴いてなかったのでこのタイミングで熟聴。やっっっっぱり曲が良過ぎる

プレイも展開もメロディも気合い入りすぎだ。何度聴いても天才的なメロディと井口ファルセットの最高さに耳を奪われるんだけど、このバラードに持ち前のファンクネスを重ねてきてるところこそがこの曲の真骨頂。ボーカルにしか耳がいってないお前さんや、一度で良いからイヤホンでドラムとベースだけに集中して聴いてみてくれ。

特にドラムの、出だし〜「雪が降りしきろうとも」までの音に空白のある叩き方と「今の僕には」〜サビ前までの空白のない叩き方、そしてサビでまたファンクに戻るこのノリの使い分けを意識する事ベースもサビ前の階段で沈んでいくラインとか、間奏でのギターと競い絡むかのような見事なうねりが最高なので注耳すべし。こちらの過去記事もぜひ:

 

VII. 飛行艇

本作では幕間で一呼吸置いてからアルバムの後半を始動させる曲。この置き方は素直にウマイ!!と思った。

2019年個人的に一番アガった曲。King Gnuの姿勢を示した曲としても最重要曲だと思う。一曲に2記事も書いたしな!


VIII. 小さな惑星、IX. Overflow

HondaのベゼルのCMタイアップ曲でもある小さな惑星と家入レオに提供したセルフカバー曲、Overflowこの2曲はセットもんなので合わせて語る。

メッセージ性の強い飛行艇から、小気味良いカッティングと共にグッと流れが変わる。

なぜセットもんと考えたかと言うとまずはBPM。こちらの画像の丸を見ればわかるようにテンポがほぼ一緒!

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初聴時、小さな惑星の終わり方があまりにもフッと終わるもんだから次の曲が始まったのに気づかなかった。この違和感の無さ、淀み無さは絶対意図的。

そして、歌詞は恋人との関係性にフォーカスした、ミクロな視点で語られるストーリー。多分この物語はも含めての3部作。 

小さな惑星:愛の誕生と発見の歌

Overflow:男視点で、無くした愛を取り戻す歌=ワンチャン復縁狙い

:女視点で愛の終わりの歌(途中の男目線パートはOverflowの主人公)

  おそらくOverflowの主人公へのアンサーソングになってる。

※あえて男女としているがThe holeのMVみたいなケースもあるのでそこは各自脳内変換でよろしく。

最初なんでこのタイトルにしたのかな~と思ってたんだけど、小さな惑星とは、地球という小さな惑星(ホシ)の小さな街角で出会った小さな二人の存在の物語という意味でタイトルを付けられているんじゃないかな。

こう考えると楽曲の瑞々しさの説明がつく。Vo.井口のボーカリゼーションも軽快さとか初々しさは絶対意識してるはず。

そして段々と二人の関係にひびが入り、修復しようとする男サイドがいっぱいいっぱいになってるOverflowと。そんな地続きのストーリー。

あと、小さな惑星のベースがめちゃめちゃかっこいい。意識してなかった人は2番に入った直後の他の楽器がミュートされて、ボーカル裏で鳴ってるのを注意して聴いてみてくれ! 

余談だが、家入レオ版も中々良い。歌ウメェなレオ!低音が少しきつそうだが、高音がスコーンと伸びてより疾走感がある。

 

X.傘

  

こちらの記事で男目線と女目線でパートが分かれてるって話をしてたんだけど、意識して聴いたら完全にOverflowの主人公へのアンサーソングになっているもんな。ガチでその巧妙さに恐れ入る。

 

アルバム通して聴くと新しい発見があって、これこそがアルバムで聴く意味やなと。 

ストリーミング全盛の時代だからこそ、単体でも聴けるけど実は連続性のある曲になってるのが潮流へのカウンター的な姿勢でかっこいい。 

XI. 壇上

 さて、壇上だ。間違いなくアルバムの白眉。前作のThe hole的立ち位置。今作の最重要楽曲どころか今のKing Gnuの思いがすべてが込められた曲と言っても過言ではない。

まず、イントロが好きすぎて涙出る。ピアノとヴァイオリン2本のアンサンブルが正に心の琴線に触れてきやがる。邦楽No.1イントロはミスチルのサインだったと思ったんだが、この曲は超えてくるレベル。

そしてここに低音の激渋ボーカルが乗る。かなり歌い方に癖があるが、僕の心に染みるぜぇぇ↑となるくらいには感動的。何より、あぁ本当に真摯に、真心込めて歌ってんなって胸を打つ。そらめちゃくちゃスキルフルって訳ではないんだけどね、上手な歌を聴きたい時はルーサーでもスティーヴィでも聴くしな。そしてこれにはバンドとして大きな意味がある。そう、Vo. 常田によるソロバラードという事がエポックメイキング。 

今までは井口ボーカルだけでは綺麗に纏まりすぎるところに、常田ボーカルのインディー感・オルタナ感をスパイスとして加えてきた。これがスパイスだけで食べても感動的に美味しかった、というお話。

そして、歌詞。好きなラインが山ほどある。

履きなれた靴で出かけよう 靴音を高らかに響かせながら 決して足跡を消さないで いつでも辿れば 君の元に帰れるように

骨までずぶ濡れの明日さえも 信じられるかい?

全部好きだが特に刺さったけど特にこの辺りかな。

 

なぜタイトルが壇上なのか

まず、歌詞中のこの「君」と言う単語を誰に置くかで全く意味が変わってくる。

こんなに長々と読んでるあなた?誰だと解釈する?

まぁバンドとしてのKing Gnuという線が妥当だけど、自分としては、ファンも含めたKing Gnuという社会現象を「」と表現しているのじゃないかと思ってる。そしてクリエイターとしての常田大希を「」だと。そう考えると「君はすっかり変わってしまった」という表現がしっくりくるし、「君を失望させてまで」は今後ファンを、世間を裏切ってでも自分の美学を貫き通すという決意の現れとして話が通るんじゃないかな。

メジャーアーティストになって、自分の想定するペースよりも遥かに早い処理速度が求められ、いつしか創作が「仕事」になってしまってる自分をアイロニカルに見てる。そんな感じ。それでもクリエイターとしての魂は「汚れた部屋」の中にまだ生きてる。そんな状況でも、King GnuのShowとしての「壇上」に立ち続けなければならない、そんな状況をまっすぐに、自嘲的にも歌ったのがこの壇上だと僕は捉えてる。

なんでこのタイトルが壇上なんだろう?ってずっと考えてんだけど、多分"Show must go on"っていう意味でのこのタイトルなんだと思う。

 まぁ、恋人としての「君」として、素直に感動するも良しだけど!

 楽曲としては、「最終列車は〜」からの展開が特に好き。この大サビからDr.勢喜のスケールでかいドラミングと、Ba.新井のシンベが全開で鳴るとドラマティック過ぎていつも涙腺を刺激される。こういうバラードでシンセベースを使うのはもはやKing Gnuメソッドと言って良いかも知れんね。

King Gnuの多種多彩な楽曲にまた新しいバリエーションが加わった。多分もうラストアルバムくらいまでソロのバラードは無さそうなくらいレアだと思うけど。 今作を〆る最重要楽曲。
  

不満 

端的に言う。唯一の不満はボリューム不足な。

すぐ終わりすぎる。あと、小さな惑星〜までの流れが軽いので、壇上が性急過ぎる気がする。この圧倒的名曲の前にもう1、2曲階段を登って欲しかったと言うのが本音。

この点はもっと時間が経つとやっぱりこれくらいが良いんや!!ってなる可能性もあるので、現時点ではそんな感じ。

 

いかがだったろうか

現時点を総括する、スゲェアルバムを作ったなぁ・・・ほんまお疲れ様でした。という気持ち。 

次はガチの踏み絵アルバムを作って欲しい。今作はミスチルで例えるとヒット曲満載の『Atmic Heart』だ。次作は『深海』に潜るようなアルバムを持ってくると思う。方向性としてはくるりの『ワルツを踊れ』のようにクラシックとロックの融合点を目指すとめちゃめちゃ面白いと思うんだけどどうだろうか。それこそウィーンとかで録音しちゃってさ!

それでは今回はこの辺でアディオス。

 

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  • アーティスト:King Gnu
  • 出版社/メーカー: アリオラジャパン
  • 発売日: 2020/01/15
  • メディア: CD
 

 

 

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