人の認知って不思議だ。音楽性としては全然似ていなくても「同時期に売れた四人組バンド」とか「ボーカルの名字が同じ」とかいうだけで、混同しちゃうことはなぜかよくある。僕の母はいまだに常田大希がテレビに出る度に「髭ダンかっこいい♡」と勘違いしてる。オカンいい加減にしとけよマジで。もう5回は訂正しとるぞ。
そんな認識違いの最たる例として、今回書いていくアーティストは、"YOASOBI"、"ヨルシカ"の2組。
今旬なアーティスト筆頭とも言えるだろうが、アルファベット、カナとずらしはあれど「夜」由来の名前を冠するアーティスト達。更に女性ボーカル、コンポーザーがボカロP、発音的には四文字、とかで更に混同する要素は増えていく。
うっかり"ヨアソビ"とか"YORUSIKA"って書いた日にはもう目も当てらんない。
今日はガチ勢ではなく、最近よく名前聞くけど詳しくはない・・・って人が夜?ヨ?YO!!・・なんだっけ?とならないようにつらつら書いていく。
YOASOBI
コンポーザーのAyase、ボーカルのikuraからなる、"小説を音楽にするユニット"。 2019年11月に公開された1st single「夜に駆ける」は公開1か月でYouTube100万回再生を突破、2020年4月には1,000万回再生を達成。
オフィシャルHPより引用
「夜に駆ける」で現在進行形でバズってるので知っている人も多い事と思う。
「小説を音楽にする」というコンセプトを持つ所謂「プロジェクト型ユニット」。
小説を読む⇒楽曲を聴く⇒MVのループで、何度も楽しめて多角的にツボを突かれて、よりエモくなれるという仕組み。
「夜を駆ける」であれば原作は「タナトスの誘惑」(星野舞夜 著)をむしろ読まないとなんの話をしてるのかよくわからないので、深く作品を理解するのであれば必読。その掘っていく過程で、思い入れが強くなり、より深みにハマっていくのが恐ろしいところ。いや、発明だよこれは。
必然的に歌詞はストーリー性を帯び、楽曲の音像はよりドラマティックになる。音数の多さがすごいよね、キラッキラしてるもん。
個人的なお気に入りは「あの夢をなぞって」。2分からのギターソロ狂おしい程好き。
なんだろうな、絶妙なsupercell感が僕のノスタルジーを揺さぶるんだと思う。
化物語で有名な大名曲、『君の知らない物語』に匹敵する好きさ加減。
少し長いけど、原作の『夢の雫と星の花』(いしき蒼太 著) を読んでから曲を聴き、MVを見て欲しい。普通に鳥肌が立つほど揺さぶられるから。これは卑怯、マジであらがえない。このコンセプトを考えて音像として実現させる手腕を持つコンポーザーAyase・・・末恐ろしい男や。
ボーカルについて
まずはボーカルでそれぞれのアーティストを区別するってのが一番分かりやすいと思うのでそれぞれ触れていく。まずYOASOBIのボーカルikuraこと幾田りら。
本日はタワーレコード新宿店さんに
— 幾田 りら (@ikutalilas) March 14, 2020
お邪魔してきました🕺🏻
ポップ展開して下さっていました!
コメントカードを書かせていただいたので、ぜひ見に行ってみてね✔︎ pic.twitter.com/ruF0mPgoOJ
か、可愛い・・・大学の中規模サークルで一番可愛い女子感ある。彼女の歌は中音域から高音域への伸びがとても良い。
こちら宅録バージョンの夜に駆ける。原曲よりスローなテンポを刻む正確なビート感とファルセットへの切り替え部分の声の良さがイチオシ。原曲よりボーカロイド感が少ないのでより声が際立って聴こえる。ぜひ一度ご覧あれ、
コンポーザーについて
コンポーザーって何やねん!という人もいると思うが、基本的には作曲・編曲を行う人のこと。(バンドやユニットによって当然その役割は変わってくる)
この役割を"YOASOBI"の首謀者ことAyase氏が担っている。
所謂ボカロPでボーカロイド楽曲を作品としてを世にリリースしているんだけど、個人的にはラストリゾートと幽霊東京がお気に入り。退廃的な世界の中で虚ろな自分の意義を見出そうともがき、自問自答してる世界観が刺さる。いてえ。
特に幽霊東京はセルフカバーもしており、イケボぶりを発揮している。こんなんずるいだろおがよ
まとめると、首謀者Ayaseがヴィジョンを定め、ボーカリストikuraと共に文学を音楽(と映像)で表現するユニットが"YOASOBI"。はい、ここテストに出まーす。
ヨルシカ
コンポーザーの”n-buna”がボーカル”suis”を迎えて結成したバンド。
ヨルシカ メンバー:n-buna[ナブナ](Guitar / Composer)、suis[スイ](Vocal)
サポートメンバー:下鶴光康(Guitar)、キタニタツヤ(Bass)、Masack(Drums)、平畑徹也(Piano)
オフィシャルHPより引用
こちらは 2017年に結成されたバンドだが、既に2枚のミニアルバムとフルアルバムをリリースし、この夏には3枚目も出そうという状況。曲作りのペースが異常。
仮にYOASOBIがアルバムを作ったとしたら、物語の短編集(オムニバス)になると思う。対してヨルシカの場合は、アルバムが単体の物語になっている。いや、単体どころか、アルバムを超えて登場人物が交差し、物語が影響し合う。複数巻に渡る長大な物語であるところが決定的に違う。必然的にアルバムはコンセプチュアルになり、特にフルアルバムの『だから僕は音楽を辞めた』と『エルマ』は対になり密接に関わる。(ここでその話をすると2万字いくのでやめとく)
単体の楽曲の有名どころとしては『ただ君に晴れ』。
夜に浮かんでいた 海月のような月が爆ぜた
バス停の背を覗けば あの夏の君が頭にいる
夏日 乾いた雲 山桜桃梅 錆びた標識
記憶の中はいつも夏の匂いがする
字面を読むだけでも、人それぞれが持つ懐かしいあの夏の記憶を思い起こす。感情を揺さぶる。この表現でもうお分かりと思うが、このユニットの首謀者n-buna(ナブナ)は音楽家であり物書き。
彼の作詞の凄い所は楽曲を通して同じサビを繰り返さず、メロディが同じでも表現が変わる。つまり、物語が進行しており、刻一刻と状況や感じ方が変わる事を意味する。だから考察が難しいし、深い。あと、歌詞覚えるのめっちゃ大変そう。
感心しすぎて長くなってるので個人的なお気に入り曲を雑に紹介する。
それぞれのアルバムのプロローグや幕間のピアノインストもめちゃくちゃ好きだがキリがないのでやめる。聴け。超聴いてくれ。
ボーカルについて
先入観を持たずに作品を楽しんでもらうため、メンバーの顔を公表していないが、ボーカルはsuis[スイ]。お地声としてはそんなにキーが高くない。ソプラノというよりかはアルトボイス。だから高音はかなりファルセットで抜いて歌う事が多いのが特徴。
彼女の歌の何が好きって、そりゃ表現力よね。
僕がヨルシカの最高傑作と思ってるのはこの曲なんだけど、それはsuisの「名演」とも言える素晴らしい歌唱がデカイ部分を占めてる。2:50からのほとんど泣いているような自問自答から主人公エイミーの感情を、アルバムの最後にふさわしくここまで爆発させる事ができるのは世界で彼女だけだと思う。全曲中、この曲のキーが彼女の1番美味しい歌なんじゃないかな。
n-bunaの紡ぐ物語を最も忠実に表現できる最高の「演者」がsuisだと強く思う。
彼女を選んだ目に狂い無し。素晴らしい。
コンポーザーについて
n-bunaの事を知りたければこのインタビューは必読。
曰く、
僕が曲を作るのは、完全に自分のためです。「作りたい物語があるから作る」っていう、そこに尽きます。
このスタンスが本当にアーティスティック。時代や人に迎合する事なく、自分が作りたい物語を作る。結果としてその真摯な姿勢こそが多くの人に届き、受け入れられる。
僕が彼の作品を聴いて感じるのは、音楽はあくまでも手段であるという事。彼の脳内にあるストーリーを最も表現できるのが音楽であった、っていう方がしっくりくる。それほど物語が強いし、文学性に溢れてる。
ボカロP時代の楽曲で一番好きなのは『夜明けと蛍』。一時期この一節が忘れられんかった。
したいことが見つけられないから 急いだ振り 俯くまま
転んだ後に笑われてるのも 気づかない振りをするのだ
形のない歌で朝を描いたまま 浅い浅い夏の向こうに
冷たくない君の手のひらが見えた 淡い空 明けの蛍
まとめると、ストーリーテラーで音楽家のn-bunaが紡ぐ物語作品をsuisが歌い演じ、表現するのがヨルシカ。
いかがだったろうか
共通項はありつつも、似て非なるアーティストであることがわかってくれただろうか。
今聴かないのは勿体無いほど深く味わえるアーティストなので、知らなかった人は感覚過敏になるほど感受性を強くして楽しんで欲しい。
え・・・?まだ夜属性のアーティストは"ずっと真夜中でいいのに"も"夜の本気ダンス"も"Yonige"もいるって・・・?
あとは各自しっかりと自習するように!以上、アディオス。