王様ランキングの主題歌としてOP曲を担うこの『BOY』。
アニメタイアップ的にはバナナフィッシュの『Prayer X』以来。もう3年か・・・あれからバンドもデカくなったもんだよ。
さて、自分は王様ランキング全巻読んでる漫画自体のファンでもあり、ヌーを追いかけるファンとしてこの交わりは普通に驚いた。今日もあれこれと書いていきたい。
王様ランキング
さて、アニメ見た?むしろ漫画読んでる?
主題歌のオファーを頂いた時に初めて“王様ランキング”という作品の存在を知ったのですが、こんな素敵な漫画があったのかとびっくりしました。ギスギスした今の時代にとても必要な、強さと優しさ、愛おしさと切なさがたっぷりと詰まったこの作品に携われて幸せです。King Gnuにとって久しぶりの新曲“BOY”、未だかつて無いほどに優しく愛らしい素敵な楽曲に仕上がりましたのでどうぞ皆様お楽しみに!
―― 常田大希(Gt/Vo)
ざっくり一言で、出生に色々あってバカにされ蔑まれ、王国の恥とされている「ボッジ」が「カゲ」という到底人には見えない暗殺一族の生き残りと出会う事から物語が進んでいく。
もうここで常田氏に全部言われてるんだけど、とにかく強い王様を目指すボッジの愛らしさやカゲをはじめとする周囲のキャラの深みが絶妙。
とにかくたくさんのキャラクターが出てくるが、普通であれば絶対に嫌な奴として描かれる継母キャラが意外な一面をもっていたり、ぱっと見、正義キャラなのに魔がさしてしまう闇があったりと、所謂ステレオタイプな考えを裏切ってくれる面白さがこの物語にはある。
そして何より主人公のボッジ。
どうしようもなく応援したくなるし、カゲとのバディ感は寄生獣のミギーを思い出す。彼らの涙と成長の旅が魅力溢れるキャラクターに囲まれて丁寧に描かれるのがこの「王様ランキング」と思ってくれていい。
ONE原作のワンパンマン的で、線少な目なweb漫画絵が敬遠されるかもしれないが、アニメではより可愛くなってる。魔法陣グルグルの絵柄が好きならハマれるかも!
楽曲について
タイアップ&歌詞
そんな王様ランキングの世界観とタイアップしたのが今作『BOY』って訳。
必然、歌詞も音色もかなりチューニングされている。ここなんか旅に出るボッジの心境・境遇そのまんま。
物語の始まりはいつも
静寂を切り裂き突然に
胸の中ざわめく焔に
照れて忘れて大人になる
個人的に好きなラインはサビのこちら。
その涙が汗が滲んだ
誰とも違う美しさで
笑っておくれよ
息を切らした君は
誰より素敵さ
過去に『Tokyo Rendez-Vous』でドス黒いリズムに乗せて虚構、欺瞞、喧騒、金、そして愛。様々な欲望に埋もれた「東京」という混沌都市を歌っていたバンドとは思えん爽やかさ。カメレオンバンド過ぎる。
で、バンドとしての曲の位置づけを考えた時に、一番関連がありそうな曲を考えた時、真っ先に『Teenager Forever』が浮かんだ。
King Gnuは一貫して、ひたむきに走り続ける事、走り続ける中に見出す煌めきを、そしてその中で他の誰でもない自分に気づく、半ば諦めにも似た逆らい難い現実をメッセージとして発してきた。
今回の”BOY” では少年が何の疑いも無く、「走れ遥か先へ 汚れた靴と足跡は確かに未来へと今駆けてゆく」、正に旅の始まりを描いていて、この地続きの道の先に『Teenager Forever』がある。少年(BOY)はいつしかTeenへと成長し、「望んだこと全てが叶う訳はないよ」と現実にぶち当たる。それでも続く道の先で、「それでも信じてみたいの」と歌う。あぁ素敵。
つまり、『BOY』は『Teenager Forever』のプリクエル(前日譚)としてひと繋ぎの物語なのかなと。
アニメタイアップの条件を完璧に満たしつつ、バンドとしての流れも損なわない。
兄貴かっけーっす!
サウンド
漢字一文字で表すとするならば「凛」。
公開まで一切のネタバレが無いようにしてたんだけど、絶対井口ボーカル曲だと予想してた。それは案の定だったんだけど、既存曲よりもストリングスがグッと前に出てめちゃめちゃワクワクする冒険ファンタジーしてる。OP曲として最高の出来だと思う。
さっきも出た魔法陣グルグルとか、多分剣と魔法が出てくるストーリー全般に似合う。気持ち、Vo. 井口の歌声もいかに軽く、且つ凛々しさを感じさせるかという聴かせ方になってる。
僕の好み的にはもっとせきゆーと新井先生がゴリゴリ前に出た黒いサウンドなんだけど、バイオリンやチェロなんかの弦楽器とKing Gnu的ロックが融合した今作も素敵。
せきゆーのドラムはいつも手数が多いけど、この曲でも冴えわたるそのストップ感。どこで叩かないのか、音の空白をどう作るのかを不断の努力でサウンドメイキングするその姿勢には頭が下がる。
一曲の中でドラマ構成がきっちり作られてて、後述の起承転結の「転」部分でバンドによるブレイクがあって、ギターソロでブチ上がる。
しかしほんと減ったよね、ギターソロ。JPOPどころかワールドミュージックでも、もはやダサイの代名詞になりつつあるけど、King Gnuの楽曲においてVinyl等に代表されるこのブレイク部分こそが、King Gnuサウンド足らしめていると思うのでこういうスキルフルな聴かせどころは今後も残して欲しいな。
タイアップという制約があるからこそできた傑作。でそこからバンド史上最もパンキッシュな『Teenager Forever』に繋がっていく、と。
いかがだったろうか
MVも良かったね。監督オスリンがヌー曲を聴いてどういう解釈をするのかいつも楽しみにしてる。想像だけど、クリエイティブ戦隊PERIMETRONがどういうアートを産み出すかを一番楽しみにしてるのは常田氏じゃないかな。ちゃんとBOYが主役の物語でいじめられた少年が仲間を集め"Kids Gnu"が結成されるまでのお話。で、MVから繋がったMステでの話題作りのうまさも含めて天才的やね。
良い曲を作ってりゃ誰かが見つけてくれるって訳ではなく、+αでどうやって人に届けるか、しかもおもしれえ方法で!って思考ができるのが、King Gnuというバンドの強みだとあらためて思った。
ネクストフェーズへ走っていくKing Gnuのシーズンスタート曲。こっからまだまだ楽しみにしていきたい。