僕はレベル40

心が動いたことをかいていく

愛が音になってる、MISIA×藤井風の"Higher Love"について徹底的にゴスペル解釈する

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あけましておめでとうございます。

 

年末からいまだに紅白の録画見てるんだけど、ここ数年で一番よかったね。

「歌心」としか言えないヒロジの熱唱も、ミレパのアヴァンギャルドで紅白っぽさ皆無のヒリヒリしたパフォーマンスも、「歌は我が命」を体現するキー様も全て自分に響いた。

でも、やはり一番感動したのはMISIA×藤井風の"Higher Love"だった。

リリースからは暫く経ってしまったけど、紅白のパフォーマンスに触れながら色々と語っていきたい。で、読んだ人が「ゴスペル」というジャンルについてちょっと知った上で"Higher Love"を聴いて、より深くこの名曲を味わえたらこれ幸い。

ちな、この記事はゴスペル歴10年くらいの奴が自分の体験を基に書いてるので悪しからず。

 

ゴスペル・・・?

日本でのイメージ

多分みなさんがゴスペルと聴いてイメージするのはほぼ2つ。

まずは日本の「ゴスペル」イメージを「アカペラ」と誤認させてしまったあの方々

そしてウーピー・ゴールドバーグ主演の映画、「天使にラヴソングを」だ。

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この「天使にラヴソング」は間違いなく名作だけど、教会でシスター達が合唱するイメージも実は"one of them"でしかない。本場のライブではむしろフルバンドでグルーヴィな演奏を伴うスタイルで歌唱するパターンの方が主流。超絶かっけーです、ハイ。

そもそもの定義は過去にもゴスペルについて書いた。

定義的にはゴスペル(Gospel)とは"God"と"Spell"が合わさった造語。

つまり「神様の言葉=福音」という意味だ。

古くは18世紀、アフリカから奴隷としてアメリカへ連行された黒人達がキリスト教に改宗させられ、神への賛美を独自のリズムと音階で音楽へと昇華させたのがスピリチュアルミュージック(黒人霊歌)としてのゴスペルであった。

引用元:https://imlv40.hatenablog.com/entry/2018/03/27/221711 

述べてきたようにゴスペルという音楽は、「キリスト教」と不可分であり、そして後にブラックミュージックに大きな影響を与えている。だからゴスペルが無ければ、その影響を受けた後世のミュージシャン達、つまりMISIAや藤井風も生まれてなかったかもしれないのよ。

改めてゴスペルを構成する重要な要素はこんな感じだ。特に1はマスト。ここテストに出まーす。

1. 神への賛美(愛のメッセージ)を歌う

2. 複数人数のクワイア(聖歌隊)を構成され、主旋とハモリに分かれる

3. ソウル・ブラックミュージックのリズムと音階で歌われる*1

 

Higher Love


というわけでゴスペルを少し知ってもらった上で曲についてもうちょい深掘りしていきたい。

歌:MISIA、作詞作曲:藤井風って字面がまずもって最強すぎる。こんなん絶対凄いですやん・・・ってなるけど、述べてきたゴリゴリのゴスペルソング。

まずは歌詞

タイトルの"Higher Love"をゴスペル流に解釈すると「天におられるあなたに愛を高く届けます」って意味。または「あなたの崇高な愛」という意味で、どっちにも解釈できうる。

ちなみにあなた=GOD(神)ね。おそらくほとんどの人はキリスト教的な「神様」に馴染みが無いと思うので、何か目に見えないなんか不思議な力/存在、と置き換えてもいいと思う。

届け higher love

この手にhigher love

この身の中に宿る確かな愛を引き上げて

自分の内なる思い、愛を届けるという出だしから強いメッセージ。からの

この声を誰に届けよう行き場のない寄る辺もない沈む私へ

ゴスペルの歌詞って基本、「こんなに小さな私だけどあなたがいればマジで最強っす、何も怖くないっす!」って意味なので、

汚れのない終わりのないあなたへ

というゴスペルで頻出の歌詞"pure(汚れのない)"とか"immortal(不滅の)"に繋がっていく。

風楽曲で言えば、『何なんw』に一番近い歌詞で、あちらは「Higher self」を歌っている。

ここで、本人が"Higher self is something like GOD."と言及するようにスピリチュアルな意味で神様と繋がる精神性を大事にしている。初めて聴いた人が何言ってるかわかんねーなってなるのは当然の事。

翻って"Higher Love"においても、

遥か遠く遠くいるような気がしてたけど

本当はいつも一緒だったのね

深い眠りから目を覚ました

今静かにあなたに叫びます

という目を開かされる="Awakening"を歌っていて、目覚めという意味で一貫性があるのがわかる。藤井風というアーティストが初期に歌っていることから一貫してブレずに、メッセージを届ける姿勢がわかるし、それを他でもないMISIAに提供しているって事だ。

受け手のMISIAは?

じゃあ楽曲を受けて歌うMISIAはどーなのよっていう所だが、彼女も子供の頃から教会でのゴスペルに慣れ親しんできた模様。*2

MISIAの楽曲で一番ゴスペルしてる曲が、"THE GLORY DAY"。

うめぇ・・・口から愛が出てるわ。愛が音になってる。

こちらはイエス・キリストが生まれた日を祝している熱いバラード。クリスマスの元々の意味やね。

他にもLive for AfricaやTICADでの活動等、彼女の隣人愛とでも呼ぶべき慈愛の精神がそこかしこに溢れている。*3

 

というように、藤井風の精神性が表れたゴスペル調の歌詞とメロディをMISIAが歌うってのこの上なく自然でスムースな流れってのがわかる。

紅白でのベストアクト

そして、既に何回録画を見たかわからない二人の共演、"Higher Love"!

まず前提としてNHKの演出が素晴らしすぎる

風ファンとして正直心配になる程に「推された」紅白歌合戦。実家からのワープ演出でのサプライズで新人としては異例の2曲を演奏し、これだけでファンとしてはお腹いっぱいだった訳だが、まさかの歌:MISIA、ピアノ:藤井風。字面が最強すぎる。

サプライズからのサプライズ演出。この流れ!まずは演出Pに惜しみない感謝と拍手を送りたいよね。

MISIAの『明日へ』ラストの熱唱ロングトーンで息も絶え絶えの中、軽快にキラッキラなスマイルでイントロを弾き出す風。精神性が鬼!と思いつつもイントロ始まった時点でもはや最高潮だった。

 

しかし、まだ「上(Higher)」があった。

 

そう、風ハモリである。もうね、「あぁ、この曲はこれが完成形なんやな」と思わせるだけの厚みがあった。やはりゴスペルはリードボーカルとハモリで完成する。

他にも魅力が溢れすぎていたんだけど、文章でまとめ切れる自信が無いので好きポイントを箇条書きする。

 

・MISIAの歌う表情。完全に聖母。くしゃっと目が細くなるのが可愛すぎた。

・二人のドヤ感が最高。これぞゴスペル、これぞアーティスト。

・とにかく風氏の表情がズルすぎた。笑顔もキメ顔もどこ抜かれても絵になりすぎ。

・部屋着からの正装への風衣装チェンジ。これもズルい。

・紅白でしかなし得ないような豪華なオーケストラとビッグバンド。

・紅白のテーマをそのまんま表すカラフルで絢爛なお花。

・MISIAの重心の低い歌とグルーヴ。体の揺れを見てるだけでご飯食べれるレベル。

・ピアノ弾く手やっぱ綺麗すぎん?手タレなの?手タレなのか!?

・ブレイク前の金管楽器(楽曲でいう2:44の箇所

 

最後に特筆したいのはこれぞゴスペルなアレンジ。

まずは、MISIA×風の息ぴったりのハモリとユニゾンね。

ゴスペル特有のテクいフェイクと原曲に無い音程の上下で完全にシンガーとしての最強っぷりを示しつつ超音波かと思うレベルのMISIAの高音。そしてロングトーンシャウト。もう少し上がると子供しか聞こえなくなるレベル。イルカか?

そしてそれに呼応する風ピアノ。もう大泉洋ちゃんのようにブラボーしか言えん。

この曲YOUTUBEで100万再生っすよ?2億だろ!と憤りつつも、世間的には知られていないHigher Loveが歴史と伝統の紅白を〆たと思うとすごく胸熱だし、何度も言うがこの絵を描いていた紅白の演出陣の慧眼に恐れ入る。

 

いかがだったろうか

ゴスペルは音楽ジャンルの中でも一二を争う程ソウルフルでテクニカルだ。以前アメリカの宣教師でゴスペルの先生に言われた大切なメッセージが「ゴスペルは神様へのスペシャルギフトです。だから私たちはできる限り綺麗にラッピングしてから渡す必要があるのです」というものだった。

先日の紅白を観て、この"Higher Love"は思いと技量がありったけ込められた愛のギフトだと強く感じた。これは藤井風の提供コメントとも重なる。

“ゴスペル”。

MISIAさんへの楽曲提供という機会を授かった時に浮かんできたキーワードです。森、教会、インドカレー屋さん…色んなところに行って、インスピレーションを探しました。

降りてきたのは、崇高な愛(Higher Love)を求める、人間くさいゴスペル。

MISIAさんの神懸かった歌声は、本当に天まで届きそうでした。

そして黒田卓也さんのジャジーなアレンジはこの曲をあったかい人間味で包んでくれました。

素敵なものが色々つまったギフトのような作品に仕上げていただいて幸せです。

みなさんのもとに、このHigher Loveが届きますように。

この素敵なコラボレーションが見られたのはゴスペルを歌ってきた人間としてもアーティストのファンとしても至福であり福音であったよ。ありがたやありがたや。

それでは2022年もよろしくね、アディオス。

Super Best Records-15th Celebration-

Super Best Records-15th Celebration-

  • アーティスト:MISIA
  • Ariola Japan
Amazon

 

*1:近年はヒップホップ・トラップとも融合した新しいゴスペルも生まれてる⇨

Anthony Brown & group therAPy - I Got That (LYRICS) - YouTube

*2:https://ja.wikipedia.org/wiki/MISIA#cite_note-livedoor-15

*3:ちな、久保田利伸とのライブ最高すぎるのでぜひ。MISIA Live For Africa~アフリカのためにできること~2008.05.26~27 横浜BLITZ - YouTube

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