
女王(クイーン)、女神、女帝、姐さん、しーじゃ、覇者・・・Awichの呼び名の多くはどれも位(くらい)が高い。
元々そう思うわせるだけの気迫と実力があったわけだが、最新作『Queendom』はレベルが違った。聴いて鳥肌が立つ程に。
泣けるアルバム、首を振れるアルバムといった素晴らしい作品はここ最近多いものの、「鳥肌が立つアルバム」というのはここ最近なかった。
そんな名盤をリリースした彼女の偉業、そして魅力についてもっと広まって欲しい一心で色々と書いていきたい。
AIやRADWIMPS等ジャンルを超えたコラボレーションも積極的に展開しているので、今後の邦楽動向をチェックする上で超重要人物になるのは間違いないので知らなかった人はぜひ。
Who is Awich?
Awich(エイウィッチ、1986年12月16日 - )は、日本の女性歌手、ラッパー。沖縄県出身。YENTOWNのメンバー。 19歳で渡米し、学士号を取得。アメリカ人男性と結婚し娘を出産するも、夫と死別。その後日本に帰国し、本格的な音楽活動を再開。2020年ユニバーサルミュージックよりメジャーデビュー。
レぺゼン沖縄
平成という時代のDIVA、安室奈美恵を筆頭にDA PUMPや三浦大知ら独自性を持った沖縄のアーティスト達。
そんな沖縄には今良いラッパーがとにかく多い。
Awichも勿論その内の一人なんだけど、日本でも特異な文化圏がそうさせるのか、とにかく声もフローもメロディも特徴的且つオリジナリティに溢れてる。
しかし、今作『Queendom』ではこの沖縄という島が、Awichにとってはある種の「業(カルマ)」であった事が刻銘に語られている。
安売りした my body and soul 鼻で笑われてた「bitch you a Hoe」
死ぬほど憧れたフェンスの向こう 大嫌いだった Okinawa is my home
飛び交うヘリコプター ここから飛び立ちたかった 重くしがらむこの島のカルマ
Queendom
横浜、川崎、大阪、名古屋と特に出自を大切にするヒップホップアーティストは多いが、Awichにとってもそれは例外ではない。だからこそ沖縄を愛しつつも、彼女を縛る呪いでもあったという点は興味深くそしてリアルだ。
よく考えれば自分にとっても地元は愛しているけど憎い部分もある両面持ち合わせてたしな。別に沖縄出身者でなくとも響くもんは響く。
余談だけど、たぶんSPEEDの『Body and Soul』も文字って細かく沖縄要素を刻んで入れているあたりセンス◎。
YENTOWN
彼女のプロデュースを担うChaki Zuluらを中心メンバーに据えたヒップホップクルー、YENTOWN。こちらもAwichの楽曲に多大な影響を与えているので少し触れる。
JNKMN、PETZ、kZmらが所属しており、BADHOPらの川崎勢とも違うサウンドテイストで、現代ヒップホップシーンのトレンドを作り出す側のクルー。
ちな、僕はkZmめっちゃ好き。Bloc Partyのサンプリングが最高すぎる。
Awich自身も”MONYPETZJNKMN”の客演として呼ばれていたり、kZm一人の客演だったりと流動的。新作でも『WheU@』でYENのメンバーがネームドロップされてるし、常に一緒にいる家族というよりも、ゆるく独自性を大事にした、でも絆は深い家族という印象。
他のアーティストからのリスペクト
所謂アーティシズムの化身とでも言うべきアーティストで、ヒップホップ界隈の中も外からも熱い支持を得ている。
まず、ヒップホップ界隈からの扱われ方はこちらの動画を観てもらえば一発でわかると思う。
AKLO、R-指定、IO、T-Pablow、YZERRという日本代表とでも言うべきスタア達の中、見事にトリを担いまとめあげるこの胆力に震える。画面越しにチキン肌がヤバい。
楽曲ではANARCHYやMighty Crownといったヒップホップ・レゲエ界の大物とも共演しており、後ほど触れる今作のメンツを見ても間違い無く日本トップのリスペクトのされ方。
一方他ジャンルとのコラボレーションも積極的に行い、クロスボーダー化を進めている。SOIL & "PIMP" SESSIONS、KIRINJI、AI、RADWIMPSといったジャズ、ポップ。R&B、ロックと、もうボーダー超えまくりである。個人的お気に入りはSoilとのこちらの楽曲。
先日の関ジャムでも様々なプロデューサー陣から絶賛されているし、藤井風が「流石に伝説」とYOUTUBEに熱くコメントする等若手ミュージシャンにも多大な影響を与えている。これ前にも書いたな。

最新アルバム”Queendom”
「女王の国」ここに建つ。
リリース後、アルバムトータルで何度も聴いたが、とても一言では語りつくせない。あえて、一単語だけで表せと言われたらそれはもう「覚悟」で間違い無い。
そう、私が”QUEEN of HIPHOP”になるという強い覚悟だ。
1曲目の『Queendom』は上で触れた沖縄への呪詛、そしてアトランタでの夫の死という悲劇についてあまりにもリアルに語られている。
彼女の自分史を駆け抜ける中で芽生えた覚悟が次のフレーズにギラッギラに輝いている。
One 知性で稼いでくMoney
Two 美声に宿らせるPower
Three 体に絡みつくRespect
For the freedom, this is my Queendom
極東の女王 イタミはNo more
2曲目の『GILA GILA feat. JP THE WAVY, YZERR』はもはや説明不要のキラーチューンとなった。ヒップホップでは「ボースティング」という自己賛美の文化があるが
病める民が求むこの言葉がセラピー
って半端じゃない。
普通いくら稼いだだの、俺の女がどうだのとボースティングするもんだが、「民が求むこの言葉がセラピー」って最上級に自分を上げてて、感動すら覚える。
「姉さんならもっとイケる」あの日YZERRが言ってくれた
というこのフレーズが示すようにこの頃から明確に王国建設を志して上に上がる事を意識している事に後から気づく。
ちなみにこの曲はプロデューサーのChaki ZuluによるビートとJPのラップの中毒性がやばすぎる。JPはリリーススピードもクオリティも調子良すぎてもう手が付けられないね。
個人的には『Heartbreak Erotica』の変幻自在フロウ中毒になってるし、『Follow me』の抒情的な歌詞にもグッときた。
風の結人達が歌う愛の結歌に波が踊る
雲が流れて月が満ちるあなたに心寄せる
今をときめくKEIJUと¥ellow Bucksをフィーチャーした “Link Up”では
私がBoss Gyal 覚悟は決めた 異論は認めん
唾奇もOZもチコもdaiaも皆ついてこい
キャー、僕も姉御に「異論は認めん」って言われたいです。沖縄の後輩達を先導するこの歌詞に痺れすぎて何っ回もリピートした。
『口に出して』にもハマっちゃって以前こんな記事を書いた。
しかしやはり今作の白眉は『Skit (Toyomi Voicemail)』からの『44 Bars』。愛娘の熱いVoicemailから繋がる愛と覚悟の44小節。
RedBullの64Barsという企画をオマージュした?形で今感じている事、大事にしている事をすべて吐き出している。
なぜこんなにも胸に迫るのか?
それは圧倒的にリアルで内省的だからだ。
大きくなったけどまだ小さな手 親子の絆なんてちゃっちい言葉で
説明できるもんじゃない言うならば共犯者 産まれた時から since 2008
自分の子供を「言うならば共犯者」と表現する事、そして「ちゃっちい言葉」に込められた彼女の感情の載せ方のエグさ等音で聴くとまた10倍ヤバい。
完成していたアルバムを白紙に戻し、「時代を作る」つもりでゼロスタートを切ったことや、自分を脅し追い込み、ゆえに感じていた恐れについても赤裸々にspitしている。
曲の、そしてアルバムのラストフレーズ。
やる、今、出来ることの最善 let’s go
普通レッツゴーはアルバムのド頭にもってくるもんよ。
それをラストのラストに持ってくる事の意味。このアルバムですら始まりでしかなく、自分がヒップホップオーバーグラウンドまで上げてやる、そのスタート地点だとでも言わんばかり。
この覚悟よ。『Queendom』を冠するこのアルバムの〆にこれしかないという曲。
私が、引っ張っていくんだ、新しい時代
これを言えるラッパーが、アーティストがどんだけいる?
Awichの高らかな王国建設宣言に拍手。
いかがだったろうか
思ったよりも色んなラッパーの名前を出しちゃって、ビギナー向けの記事じゃなくなってしまった気がする。
凄い凄いばかり言っていたし女王だの女帝だの言ったからすげークールで高圧的なイメージが湧いてるかもしれないが、実は所作や笑顔等めっちゃ可愛いし、感受性の豊かさ、繊細さ等を持ち合わせている。
あと、彼女の魅力は何よりもライブでのステージング。この武道館でのライブはクオリティとしても出た面子としても日本の音楽史に刻まれるべき名演だった。興味沸いた人は絶対に見るべし。無料で見れるからぁ!!
アメリカで学士号2つ修得するという勉強家の面もあるし、まだまだ語りつくせない魅力に溢れている。今後色んなジャンルで彼女がフィーチャーされていくのは間違いないので、書いてきたような背景を知っているとまた違って聴こえるのでマストチェックでよろしく。
それでは今回はこの辺でアディオス。
