僕はレベル40

心が動いたことをかいていく

心を震わせる藤井風の12の名歌詞Vol.2 LASA編

藤井風は哲学者だと思っている。

そう、だからこの記事のサブタイトルは「歌う哲学者、藤井風」でも良い。

冒頭から何だコイツゥゥまーた訳わかんない事言っとんなコイツゥゥと感じた人もいると思うが僕は心からそう信じてる。

なぜそう信じられるのか。またなぜ彼の歌を聴くと心が震えるのか。今日はそんな事を色々と語っていく。

 

位置づけ的には、前に書いたこちらの記事のLOVE ALL SERVE ALL(以下LASA)編と思ってくださいまし。(『青春病』は書いた当時のままVol.1に入れ込んでいます)

 

 

何故藤井風の歌詞が現代人の心をとらえるのか

具体的な歌詞に入る前にまずは前置き。

 

言うまでも無く、歌詞は時代の空気感や世相を敏感に反映している。分かりやすいところではスマホ、ポケベル、手紙といった通信手段が出てくるケース。例えば恋愛に紐づくツールとして時代を反映し、聴き手に風情や懐古を感じさせる手法。「あったねそんなんっ!!」ってなるアレだ。それ以外にもテレビやYOUTUBEといったメディア、あるいはUberみたいなサービスを具体名で歌詞に入れ込む歌も結構ある。宇多田ヒカルなんかはもろにそのタイプ。

メール無視してネトフリでも観て

パジャマのままでウーバーイーツでなんか頼んで

宇多田ヒカル/BADモード

一方、そういう具体的な固有名詞ではなく「その時代の価値観」を反映させた歌詞もある。つまり、20年代には20年代の、90年代には90年代の価値観があり、その時代で受容される/されない歌詞が存在するってことなんだが、まぁ令和とバブル期で受容される/されない歌があるのは当たり前で、今聴くと「キッツイな・・・これ」となる歌もあるし逆に今の歌を過去に持っていっても「は?」となるよね。

 

で、藤井風だ。

彼の歌詞には今の時代を、そして今の世界をどう生きるのか、どうあるべきなのかという哲学がこれでもかという程に込められている。

じゃあ彼はどう生きようとしているのか?

僕が思うに、藤井風は「何を得ようとしているのか」ではなく「何を捨てるのか」あるいは「何をしないのか」という事を主眼に生きているように思える。

後で取り上げるつもりの『まつり』や、僕の人生で最も大切な曲『帰ろう』などがわかりやすくって、僕らはみな満ち足りている。だからこそ全て人に与えよう、要らない感情は捨ててしまおう。というのが彼の根源的発想だ。

人間、誰しも足そう足そうとしてしまうところを風はどう引いていくかを考える。

そう、引き算の美学である。

バブル期のイケイケな時代にそんな事を歌っても辛気臭いと言われるのがオチだろうが、この飽和してるけどなんか不安で孤独な時代を生きる僕らには刺さる。刺さりすぎる。

後世に残る歌にはすべからくその時代の恋愛観や哲学が歌詞に反映されているが、間違い無くそんな歌を歌うのが藤井風であると思う。

 

それでは紹介していく 

相変わらず前置きが長いが本題に入る。

まつり

Pick upフレーズ 1 

で、一体何がほしいわけ 誰に勝ちたいわけ

なかなか気づけんよね 何もかも既に持ってるのにね

Pick upフレーズ 2

あれもこれもが大当たり 比べるものは何もない

勝ちや負けとか一切ない ない ない

のっけからアレだが、この曲すべてに心震えたと言いたい。だが、あえて!あえて一番ハッとさせられたのは上2つ。まずこの『まつり』という曲自体が今の藤井風を体現していると思っていて、そのスタンスを明確に表したのがこの歌詞。

ひたすらにフラット。僕らは既に持ってるし満ち足りている、後は自分の捉え方次第であると言われているようで、自分の中に生まれたネガティブは基本この歌詞に相殺される。

燃えよ

Pick upフレーズ 3

クールなフリ もうええよ 強がりも もうええよ

汗かいてもええよ 恥かいてもええよ

藤井風の150キロのど真ん中ストレート曲。本人的にも"Childish"かもしれないと表現するほどまっすぐな歌詞。聴いてて玉置浩二のある名曲を思い出した。

こんな僕でも やれることがある 頑張って

ダメで 悩んで 汗流して できなくって

~中略~

何もないけど 君のために 野に咲く花のように

玉置浩二/MR.LONELY

無論ニュアンスは異なるが、真っ直ぐ自分を肯定してくれる感覚は近いと感じてる。

やっぱね、クールぶったり斜めに物を見たり、無駄にイキったりする事ってあると思うんすよ。何頑張っちゃってんの?みたいな冷めた目とか。でもね、「もうええ」んすよ、そんなしけたアティチュードは。一生懸命やって汗かいて恥もかいて前に進んだ先にきっと答えがあると背中を押してくれる曲が今求められている。

藤井風の過去曲『もうええわ』をもじって韻踏んでたりして実は結構テクいことやってる曲でもある。

旅路

Pick upフレーズ 4 

お元気ですか 僕たちはいつになれど少年です

このフレーズ、実は超非凡と思ってる。だってさ、脈絡なく「お元気ですか」って歌詞にいれます?え?風って陽水なの?風&太陽&水?アーティスト界の三元素、藤井風をよろしく。

このフレーズ一つだけで大切なメッセージを誰かに届けている手紙的なニュアンスが足される。それを踏まえて冒頭から歌詞全体を読むと違った情景が浮かび上がる。これは凄い事ですよ。震える。

Pick upフレーズ 5

あーあ 僕らはまだ先の長い旅の中で 何かを愛したり

忘れたり 色々あるけど

極めつけはこちら。「色々あるけど」。ここも再三言及してるんでまたかよって人もいると思うが、放り投げた表現に聴こえるのに、そうだよなぁと妙に納得するのほんと凄い。ほんと色々あるよね、人生って旅路は。

damn

Pick upフレーズ 6

愛してくこの先ずっと 守ってく明日もずっと

i love me, and i will keep him in a safest fairest happiest place baby

この曲、実はLASAで一番ストーリーに起伏があると思ってる。とにかく内省的で、過去の自分の楽曲をセルフオマージュまでするSelf-reflectな楽曲が最後には強い決意表明に変わる。

注目して欲しいのが英語詞。

ここで「藤井風楽曲に英語詞が出てきたらそこは一番言いたい事説」を提唱したい。

『特にない』とかもそうだったが、英語に対して強い思い入れがある事は周知の事実として、すごく本心むき出しにしちゃってる感がある。ここも内なる自分を安全で公平で幸せにしておくっていう大切なメッセージを発している。よく考えたらLASA通して、現代の潮流でもある「Well-beingな状態」でいる事を歌ってるしな。

あと、"i"も含めて全て小文字にしてるのもおしゃれ。確かJ-WAVEのラジオだったかで「小文字がクールという流行りに乗っている」と話していた気がするが、あえて内なる自分=iと意図的に表現してるんじゃないかと深読みしたい。

やば。

Pick upフレーズ 7

何度も何度も墓まで行って

何度も何度もその手合わして

やば、やば、やば、やば。

はい、クレイジー出ました。もちろん、”It’s so crazy”=「やば」って意味だ。

あろうことかサビで「」というワードをチョイスし、その後「やば。」というカジュアルなワードと組み合わせるという異形の発想。

HAKAじゃないよ、墓ですよ?

オールブラックスのHAKA

そんな歌「私のお墓の前で泣かないでください」しか知りませんよ。え?もしかして「千の風になって」ってそういう・・・?

しかも地味~に「墓」と「やば」の"aa"で韻踏んでグルーヴを担保している。たぶん日本、いや世界初めてこの二語で韻を踏んだ人間だと思う。

風歌詞を面白いと思う理由の一つに、「言葉と言葉の飛距離」が離れている事がある。『罪の香り』なんかもそう。「おっと 罪の香り」とかさ、もう絶対組み合わせないしフレッシュすぎるでしょ。

それでは、

Pick upフレーズ  8

あたたかな日差しに ひれ伏すとき

あなたは揺らめく わたしを導いた

なにもない荒野は このわたしは

ありあまるほどの 果実に口づけた

「叙景詩」とでも言うんだろうか。映画の主題歌のように壮大なスケールをもつこの楽曲の歌詞はひたすらに情景描写が美しい。

なぜこの表現に震えたかというと、歌と歌詞のリンクが自分の中で最高到達点に達したからだ。細かすぎて伝わらない系のマニアック視点で申し訳ないが第一声の「あたたかな」のあたたかさは完全にK点超え。息の量、伸ばし方、ピッチのどれをとってもこれ以上ない歌唱とのリンクにまずやられてしまった。This is 表現力。

あと、「導いた」、「荒野」、「果実」のように何となく旧約聖書を連想させるワードを散りばめ、神聖な雰囲気を醸し出している点も曲のスケールの大きさに一役買っている気がする。ちなみに、自分的MVを作ってほしいランキング第1位。ほんと誰か監督頼む。そしてその主演は藤井風本人であってほしい。

きらり

Pick upフレーズ 9 

どこにいたの 探してたよ 連れてって 連れてって

何もかも 捨ててくよ どこまでも どこまでも

『きらり』、もう何回聴いたかわからないんだけど、改めて考えて聴きなおすと何とも不思議な歌だよ、ほんと。このフレーズは実際にライブで聴いた時に震えるほど感動したから入れた、というごく個人的な理由でピックアップ。ここでもやはり「捨ててくよ」という基本姿勢はぶれていない。サビで捨てる人、他にいます?

Pick upフレーズ 10

あれもこれも魅力的でも私は君がいい

「あれもこれも魅力的でも」っていうフレーズも自分に刺さりすぎた。目移りしちゃうタイプだし、一つに絞るなんて無理!むしろ色々興味があるのが自分の強みと思ってたんだけど、相当影響受けてる。余談だが「私は風がいい」って人が増えすぎてチケットとれなさ過ぎるのだけが困りもの。うーん、複雑。

ガーデン

Pick upフレーズ 11

だから冬よおいで 私を抱きしめて

その手の温もりで 生きさせて 溶けるまで

さてガーデン。LASAで一番好きな曲なので、もう絶対に絞るの無理ぃぃって感じだが、あえて選ぶ。まずこのフレーズ。もうなんて素敵な表現だろうとため息でますよ、風。

凍える冬だからこそ感じられる温もり。抱きしめられた幸福感、そして生の実感…書きながら冬嫌いが治りました。

Pick upフレーズ 12

人は出会い別れ 失くしてはまた手に入れ

それでも守り続けたくて 私のガーデン 果てるまで

そして最後のフレーズはやはりここ。結局言うことの本質は一切変わってない。

別れと出会い。喪失と獲得、そして死と生。この輪廻の果てに何があるかはわからないけれど、それでも守り続ける、生き続ける覚悟…書きながら胸の奥が熱く震えている。ここまで原稿用紙10枚分くらいグダグダ述べてきたけどこの感動を言葉にできない。

 

いかがだったろうか

『きみに読む物語』(原題: The Notebook)の原作者で知られるニコラス・スパークスが素敵な言葉を残している。

Our love is like the wind. I can't see it, but I can feel it.

(僕たちの愛は風のようなもの 目には見えないけれど感じるんだ)

A Walk to Remember(1999)/Nicholas Charles Sparks

藤井風が2022年に放った特大のLOVEは目には見えなくともしっかりと心に刻まれた。一方でみんなはどうSERVEするの?という問いかけを貰っている気もする。

 

長くなったが、まだまだ味わい尽くせない藤井風の歌詞世界をこれからも楽しんでいきたい。

それではこの辺でアディオス。

 

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