いや、ほんと凄い。いつも凄いしか言ってないけど今回もいっそう凄い。
普段はチャートよりも楽曲の質が大事だと思っている派なんですが、それこそ中身に数字が追い付いてきたというのが嬉しくって、色々と調べた。
今回Spotify月間リスナー1000万人達成について何がどう凄いのかを書いていく。
Spotify月間リスナーの定義
まずはここ。全て噛み砕いて説明していく。
そもそもSpotifyって何よ？
Spotify（スポティファイ）は、スウェーデンの企業スポティファイ・テクノロジーによって運営されている音楽ストリーミングサービス。2021年7月時点で、3億6500万人（うち有料会員1億6500万人）のユーザーを抱えており、音楽配信サービスとしては世界最大手である。
日本だとApple MusicやLINE MUSICの方がよく知られているかもしれないが、海外ではSpotifyがシェア１位。まぁたくさんある音楽ストリーミングサービスの中で最大手の一つであるってことがわかればそれでヨシ。シャッフルとは言え、無料プランでもフル再生できるが大きな特徴。
ちなみに自分は複数のストリーミングサービスを検討した結果、Spotifyを日本サービス開始後から使っている。使いやすさ、プレイリストの豊富さ、繋がりやすさが特に気に入っている。あと、こんな風に自分の聴いた曲を勝手に集計して振り返ってくれたりもする。好き。
月間リスナーって何よ？
本日の最重要箇所。まずは「Spotifyの月間リスナーの定義」を明確にしたい。
Spotifyのアーティスト用ページにこう記載がある。
月間リスナー： 28日間にあなたの音楽を再生したユニークリスナー
ここでいうユニークというのは「固有の」という意味なので、「28日間で藤井風の音楽を再生したリスナーの実人数」と言い換えられる。
例えば、今Spotifyユーザーではないあなたが新たにアカウントを取得して風楽曲を再生すれば、ユニークリスナー１人として＋で数えられる。しかし、そこからずっとエンドレスリピートしたとて、ユニークリスナーとしては1人のままである。
ちなみにリスナーが楽曲を30秒以上再生すると１再生としてカウントされる。*1これマメな。
Youtubeの再生回数と違ってファンダムによる押し上げではどうにもならないため、より広くリスナーを獲得しなければ上がらない数値という意味で価値が高く、ある意味単純な再生回数よりも重要な指標となり得る。
どう凄いのか
海外アーティストとの比較
まずは実際のランキング上位とリスナー数を見てみよう。
注：すべて達成した2022年11月27日時点での値
全データはこちらのサイトを参照した（Spotify - Top Artists by Monthly Listeners）
世界に名だたるアーティストがずらり。まぁ今月最も多くの人に聴かれたランキングって言って差し支えないと思う。
それにしてもテイラーちゃん半端ねぇ・・・8000万超えて。いや、「ちゃん」だなんて失礼過ぎた。テイラー様だなこりゃあ。
"Blinding Lights"の特大ヒットも記憶に新しいThe Weekndやポンポンポンのイントロでお馴染みのEd Sheeranらが上位に連なる。
個人的にはRihannaとEminemがランク上位ってのが凄すぎる、二人ともどんだけ第一線で活躍すんのよと。そしてアジアではBTSが49位と断トツの1位。
注意事項としては28日毎のランクなので例えばBruno Marsが新アルバムを出したらそりゃあ急上昇するでしょうし、『ボヘミアン・ラプソディ』のように映画が大ヒットした場合はQUEENが更に上位に来るでしょう。
世界で見渡しても最近のHIPHOPヘッズなら誰でも知るChance the Rapperや日本でも依然として人気の高いTWICE、中毒性のあるLALISAがヒットしたBlack PinkのLISAより上位。往年のアーティストであれば、Prince殿下やSting、Lionel Richieといった殿堂入りの類よりも多いリスナー獲得であることを考えるとその凄さがわかる。
では邦楽アーティストはどうなのか？
2500位まで見られたのざっと邦楽アーティストをさらってみた。()内は人数。
608位 藤井風 (10,010,822)
998位 米津玄師(6,976,387)
1170位 YOASOBI(6,163,754)
1487位 Ado(5,147,236)
1495位 Official髭男dism(5,119,165)
1548位 RADWIMPS(4,973,590)
1860位 Vaundy(4,280,900)
1951位 Mrs. GREEN APPLE(4,102,830)
2217位 LiSA(3,632,617)
2234位 Aimer(3,600,736)
出典：Spotify - Top Artists by Monthly Listeners
2022年11月27日午前12時時点でのデータベースより
うーん、すごE。アーティストが世界で何万人いるのか見当もつかない。前提として全員つよつよのつよである。個人的にはかつてコアファンだったRADがこの位置にいるのが意外だったがよく考えたら深海作品の影響だね。
とまぁランキングを眺めているだけで自分の好きな/知っているアーティストの名前がガンガン出てきてめちゃ楽しい。こんな楽しみがあったとは・・・！面白すぎて別の分析記事も書いているのでそちらもお楽しみに！
個人的に凄いと思う点
ここまでは事実ベースで語ってきたがここからは推察も入れて書いていく。
１．言語の壁を飛び越えた
日本語という非ネイティブには暗号にしか聞こえないであろう言語。言語史的に、文法も発生方法も西欧圏の言語とは違うのでよりガラパゴスなのは母語話者の我々が知っての通りだ。
そうなるとその楽曲を聴くかどうかは「音として気持ちいいか」のみである。その壁を飛び越えたのがまず凄い。
TikTokという15秒の魔法が広めた『死ぬのがいいわ』というバズをきっかけに過去の曲にたどり着いてゆく世界、という事を想像するだけで胸アツだが、カバー以外では日本語の楽曲しかリリースしていないんすよ、風さん。そもそも”Shinunoga E-wa”て！読み方すらわかるか怪しいもんだ。極東の意味わからん言語で歌う曲が受け入れられたのは風氏のメロディセンスや声、そしてYaffleプロデューサーの編曲のなせる業である。
話はずれるが、藤井風の歌を母語話者として最高に楽しめる僕はなんて幸せなんだと思うね。日本語の奥ゆかしさ、深い響きを存分に使った風曲・・・あらためて有り難し。
２．アニメタイアップが無い
もはやジャパニーズアニメは世界の一大コンテンツであり、人気アニメのタイアップ曲がチャートに大きな影響を与える事は言うまでもない。
しかし、藤井風というアーティストは現在までこのアニメタイアップが無くこの位置まで上ってきたというのが特筆すべきポイント。
今季のアニメで言うと「チェーンソーマン」主題歌の米津玄師の『KICK BACK』、ED曲担当Vaundyの『CHAINSAW BLOOD』の影響はとても大きいし、「One Piece」のウタとして世界に広まった『新世界』を歌うAdoや「機動戦士ガンダム 水星の魔女」の主題歌を歌うYOASOBIの『祝福』も無論チャートに影響している。
全員アニメと無関係の代表曲を有しており、元々のベースを更にアニメがブーストする形になっているというべきか。
「アニメのタイアップとして世界観を表現し成立させる」という事には特有の才能や愛が必要でその担当を風さんが好むのか、するべきか、できるのかといった疑問はいったん置いとくとして、アニメ主題歌：藤井風という奥の手を残しつつ月間リスナー1000万人を超えたというのは一つの快挙である事は間違いない。
３．世界中にリスナーがいる点
小さくて見えないと思うので拡大して読んで欲しいんだが、調べた限り邦楽アーティストの中で最も多くの地域でチャートインしているのが藤井風であった。
データ上、特に東南アジアにおいて圧倒的な人気を誇っている事がわかる。現段階においてはマレーシア（MY）やシンガポール（SG）では日本と同列の7位を取得している。
顔の濃さがより受け入れらやすい説・・・あるか？SNS上での特にアジア系女子達の黄色過ぎてもはや眩い声援を見るにヴィジュアルというのも重要な要素であるな。
上にも書いたが、この辺りの各国分析も同時並行でやっている。めっちゃ楽しい。
いかがだったろうか
坂本九御大が『上を向いて歩こう』で1963年に全米１位を獲得した。そこから60年の歳月が過ぎようとしている現代に打ち立てられた新たな金字塔を目の前に感動している。
僕らはとても幸せだ。自分の愛するアーティストが今！正に！世界に飛び立つ瞬間を目撃できているのだから。
もうここまで来たら何も怖くないですね。「この風のって進め先へ」。もうこれしかない。
それではまた次の記事をお楽しみに。
