僕はレベル40

心が動いたことをかいていく

藤井風の『LOVE ALL COVER ALL』について全力で語りたい

自分史上、最もリリース当初と現在で好きさ加減が違う大切なアルバムになってしまった。そう、藤井風の『LOVE ALL COVER ALL』、通称LACAの事である。

 

いやほんとに去年の僕の耳は節穴過ぎた。正確には優先順位がおかしかったというか。

藤井風の2ndフルアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』(LASA)の初回限定盤付属CDであった本作だが、正直オリジナルアルバムを聴き込み過ぎて見落としていた。魅力に全然気づけていなかった。ごめん、LACA。

ストリーミングで配信もされて、一般にも広く開放された。そんな訳で今日はこの珠玉のカバーアルバムについて存分に語ってゆきたい。

(こちら原曲と合わせたプレイリストです。)

前置き

正直に言います。このアルバム、切ないんです。うん、せつなすぎるんです。

僕はどっちかというとアゲ曲を好む節があるので、聴いて胸を締め付けられるような、アーティストの憂いにあてられてしまうような感覚があっていつもLASAを優先してた。

加えてせっかくのフルアルバム発売だしと、今まで世界に存在していなかった楽曲を聴きたい欲が勝ってしまっておりました。

その魅力に気づいたのはネトフリでの配信も控えたパナスタでのライブ後。藤井風が奏でる『それでは、』に殺られすぎて号泣した結果、涙腺を壊されてしまい彼が演奏するピアノを聴いただけで目頭が熱くなってしまう病に罹患。風ピアノが聴きたい発作緩和にLACAを聴きまくったというのがざっくり経緯だ。

 

リリース当時:いや、オリジナル聴きたいわ⇒車乗りながら聴く程度。

パナスタ後:か、風ピアノを聴かせてくれぇぇ⇒LACA聴き込み開始

現在:いや、このアルバムめちゃすごない?⇒LACAしか聴いていない

LOVE ALL COVER ALLの重要ポイント

相変わらず前置きが長いが本題に入る。

今回の記事作成にあたってはスペースシャワーTVの「V.I.P. -藤井 風- LOVE ALL “COVER” ALL SPECIAL」の本人インタビューを大いに参考にさせていただいた。VIP藤井風の文字圧が凄い。もし録画している人がいればぜひ見返して欲しい。この記事読まなくてもいいんじゃないかな?

やっと!2022年3月発売だったわしの2nd album ”LOVE ALL SERVE ALL” の初回盤についてたボーナスCD、その名も”LOVE ALL COVER ALL” が配信されました!レコーディングは2020-2021ぐらいにはもう終わってて、今聞くと若い感じがしてちょっと恥ずかしいけど、個人的な思い出がいっぱい詰まったピアノカバーアルバムになってるから気が向いたらチェックしてみて🎧

fujiikaze インスタグラム投稿コメントより

さて、僕がこのLACAにおいて特に重要だと思っているのは「コード進行の妙」「コーラスワーク」の2つだ。本人もインタビューでコード進行をどうアレンジして楽曲に厚みを持たせるか苦心した事を話している。

無論、コピーとカバーは全くの別物原曲をリスペクトしつつ、あくまでも藤井風がカバーする意味を持たせているのが重要なんだけどその大きなポイントがコード進行のアレンジだ。

そもそもコード進行って何なん?って人もいると思うが、こちら長めに引用する。

コードについて理解を深める上で、音楽というものを絵に例えてみるとわかりやすいでしょう。音楽にはリズム、メロディー、ハーモニーの三要素が存在すると言われます。これを絵に例えてみますと、リズムはキャンバス、メロディーは輪郭、ハーモニーは色みたいなものでしょうか。

キャンバスがなければ絵が描けないように、音楽にとってリズムは絶対に欠かせない要素であり、音楽を支える土台であると言えます。メロディーはキャンバスの上に鉛筆で描いた輪郭のようなものをイメージして下さい。一応、輪郭さえあれば絵としては成立しますが、やはり味気ないですよね? それと同じでメロディーだけの音楽というのは物足りないものです。そこで輪郭に色を着けるものがハーモニーであり、具体的にはコードであると思って下さい。輪郭に色を着けることによって絵が生き生きとした表現力を持ってくるのと同じように、メロディーをコードで彩ることによって音楽にも表情が生まれてきます。

引用元:https://mahoroba.logical-arts.jp/archives/2994

 

わかりやすっ!!

つまり、原曲を研究し、書かれた輪郭の上にコードによって色使いをアレンジして違う表情を持たせることこそが彼がこのアルバムで行っていることと言い換えられる。

例えば原曲の和音に音を足して厚みを持たせる等、細かいところで風味がイン。実際の映像ではこんなに違って聴こえるとは…って驚くくらい違うのよね。

岡山生まれYOUTUBE育ちとして長年培ってきたアレンジャーとして、人にどう聴かせるのかという彼の根本に立ち返る作業を繰り返している。その足跡を堪能できるのがこのアルバムってこと。

そして「コーラスワーク」。楽曲を構成する音がピアノと声のみ。リスナーに飽きさせないようにするため、様々な声を重ねる事やアカペラでの語り入れてみたりともうほんとに細かいKUFUこと工夫が随所に凝らされている。この辺りは楽曲プチレビューにて触れていく。

楽曲について

スペースシャワーTVで超有能特集からの情報を交えつつ私見も加えてプチレビューを色々書いていく。

01. Sunny / Bobby Hebb

1966年リリースでBMIがこの曲を「世紀の100曲」中、25位に選出する程にスタンダードなナンバー。僕は60年代は疎くってサム・クックくらいしか聴き込んだアーティストがいないんだけど、『Sunny』は有名なので知ってはいた。

LACAとして全体的に新しい楽曲が多い中で、あえて名曲をチョイスする覚悟を出だしの"Sunny〜"から感じる。藤井風の一声目オタクの僕も大満足です、ハイ。

タイトルよりも物悲しくすら聴こえるのは"Yesterday my life was filled with rain"という歌詞があるように雨模様の心が晴れ渡ってゆくまでの過程を歌にしているからなのかな?更にコードにナインスの音を加えてさらに切なさが増してる。

スペシャより

・お父ちゃんの昔の洋楽ポップス集のCDで知った。家族のルーツで父、兄、ワシも好き

・前回も世代じゃない曲を入れたが、スタンダードもカバーしたい思いがあった

・キーを低めにしコードもおしゃれにして、ナインスの音を加え厚みを増そうとした

02. No Tears Left To Cry / Ariana Grande

一曲目の『Sunny』からおおよそ50年後にリリースされた原曲。「涙は枯れ果てた」という意味を持つこの『No Tears Left To Cry』。これもまた辛い出来事からの立ち直りをテーマにした楽曲だけど、その50年での言葉数や譜割のリズムの進化と飛距離に驚く。これはあえての対比配置なのかな?

初聴き時は『ガーデン』ぽい始まりやなとも思ってたんだけど、細かく聴くと重なるコーラスの音が一瞬上がってたりして細やかさにハッとさせられる。ライブで風弾き語りを聴く時にもいつも思うがドラムが無いのにこんだけビートを感じられるのが凄い。2:31みたいに一音だけクラップを入れてるとことかめちゃ好きなんだけど、小さな積み重ねがこのクオリティの所以なんだろうねぇ。

スペシャより

・POPの中にR&Bを感じさせるアリアナは凄い好きだしリアルタイムで聴いていた

・こんなんピアノでカバーするやつおらんやろう枠

・MVだけコーラスからはじまるものを再現した

03. Hot Stuff / Donna Summer

あまりに低音から始まるので「な、何が始まるんです…?」ってなった曲。世界はおろか日本においても何回擦られたんだよという有名曲ではあるけれどこんなにブルースで物悲しい『Hot Stuff』は初めて。藤井風って「こんなの初めてぇぇ!」を連打してくるアーティストよね。困る。

後半グルーヴしてゆくピアノにクラップが足され、歌唱もグッと熱くなっていくその連鎖を楽しむ曲。

 

スペシャより

・喫茶店(ミッチャム)でかかるのは日本の歌謡曲ばかりだがこの曲はかかっていた(おとんもおかんもいぇーって感じ)

・あえてディスコ感を残さずブルージーでけだるい枠

・大人なムードだが、後半は抑えきれないディスコ熱も出てる

04. Sorry / Justin Bieber

HEHCから含めて一番好きな曲。なんならこの曲だけで一本書きたい。

原曲のポップネスをこんなにも壮大で切ないピアノバラードに仕上げてくるとは…しかもただのバラードには終わらず後半は原曲の持つ伸びをアレンジで表現している。特にヒップホップヘッズとして最高なのは日本語ラップの金字塔of金字塔であるブッダの『人間発電所』をアウトロ部分でサンプリング*1しているところ。詳しい経緯を知っている方がいれば教えて欲しいんだけど、『人間発電所』を元ネタにして加藤ミリヤ氏が『夜空』としてリリース→ミリヤ好きの風さんがさらにサンプリングしたって感じなのかな。自分の好きがどこかでアーティストと繋がる感覚が愛おしいです。

僕にとってジャスティンといえばビーバーよりティンバーレイクなのでそこまで詳しくは無いのだが、『Love Yourself』は風ボイスと1億パーセントマッチすると思うし色々合ってると思うので次回作マジでお願いしたい。

スペシャより

・コード進行をガラっと変えたら面白くなる「コード変えてみたくなった枠」

・原曲はポップなのにしっとりR&B風コード進行にしたらおもろいかも

・セブンスコードでより強く謝った感を出した

05. Good As Hell / Lizzo

風&Lizzoについては過去に書いたので彼らの詳細はそちらにて。

この『Sorry』→『Good As Hell』→『Just the Two of Us』の流れズルない?HEHNの『何なんw』→『もうええわ』→『優しさ』の流れくらい好き。

とにかくこのカバーは後半声とピアノだけで構成されているとは思えない絢爛さ。ぜひ目を閉じていくつ音が重なってるか数えてみてほしい。これに「転調」も加わってアゲ方がえげつない。転調はブラックゴスペルでよく使われる手法だけど、曲のグルーヴそのままにキーが上がっていくのでとにかく盛り上がる。けど歌う方はキッツイんですよ。気合いです。

転調するとボーカリスト=風の気合も増す」。ここテストに出ます、覚えといてください。

スペシャより

・NYでフェスにLizzoが出た時に感動したすごいパワーを感じる曲

・原曲は転調しないけどライブで転調してブチ上がったのをやっちゃってる

・ライブ前のSEにしたのもアガルから

06. Just the Two of Us / Grover Washington, Jr.

間違えがちだけどGrover Washington, Jr.は「サックス奏者」で歌っているのはフィーチャリングされているBill Withersの方。世界史的にも日本史的にも多大なる影響を与えた問答無用のクラシック

風カバーは勿論最高なのだが自分としては神戸ライブで観たサックスカバーが忘れられていないんですよね。あまりの色気とそこはサックスなんかいぃぃかっけぇぇぇ!!で鼻血5Lポイントだったのを昨日の事のように思い出せてしまうので、あえて風サックスを聴いてみたかったのもまた本音。

個人的に絶頂に達するのは2:20の大サビ前のピアノの繋ぎ。僕には言語化する知識を持ち合わせていないんだけどここだけでご飯を無限におかわりできる。デビュー前の動画からの進化を聴き比べるのもまた美味しい。

 スペシャより

・昔からのファンのみなさんが自分と結びつけてくれる、結びつきが強い曲

・ずっずさんが風紹介のために使っていた動画。

・(所謂丸サ進行のため)流行りを意識させないよう厚みを加えるのにナインスの音を足した

07. Weak / SWV

全国一千万人の『やば。』好きの皆様お待たせしました。こちら彼の90's R&BのDNAにあたるグループ"SWV"。他にもきっと"TLC"とか "En Vogue"といった90年代を彩ったDIVA達の名曲を聴いて、研究して、彼独自の絵を描き続けた果てに『やば。』が生まれたんだと想像してる。あと墓とかの独特ワードチョイスもか。

曲としてはこの曲だけ完パケ感がある。このままリリースしても違和感無いように聴こえるのはコーラスワークの厚みでゴージャスに聴こえているような気がしている。風ボーカルに絡む高風と低風が最高なのでコーラスのみに耳を傾けてみて欲しい。あとThis is R&Bなテクいフェイクも!

スペシャより

・死ぬほど好きな曲で成人してから一番衝撃を受けた

・97年生まれの自分にとって90'sは手が届きそうで届かない

・なぜ胸キュンするのかを研究をしていた曲で自分のものにできていないほど奥深いコード進行で「サーティーンス」にこのメロディを乗せる…何なんでしょうね、このコード

08. Overprotected / Britney Spears

www.youtube.com

こちら、ブリトニーにはもっと有名な曲はあるけどお姉ちゃんの影響での選曲とのこと。自分にとってもモロに世代っていうか一家言あるというかね。お願いですからお姉様、僕とブリトークしてください。

彼女の曲ならMVが世界一可愛い『I'm Not a Girl Not Yet a Woman』かこの『Overprotected』が特に好きだったのでこの曲をチョイスするんや!ってかもっと他あるやろ!?と思いつつめちゃ嬉しかった。

カバーで特に好きなポイントとしてはオリジナルの冒頭をオマージュしてアカペラからの"Action!!"で景気良く始まるところと1:13"Things that I've been told~"の裏のピアノフレーズが超美味しい。細かすぎる?伝われ!!

スペシャより

・音楽的にかっこいいと思った

・この曲のタイトル通り、過保護にするなという気分になるときもある

09. Teenage Dream / Katy Perry

地味に自分のターゲットから外れてるのよね、ケイティ。『Firework』とかしか知らなくってこの曲も存じ上げず。そういう意味ではとてもありがたいLACAの活用ができてる。しかしあらためて原曲も風カバーも聴き込んだけど、なぜ今まで通らなかったのか理解に苦しむ。このアルバムに通底する切なさをギュギュっと凝縮してるようなコード感。風さんも語るように歌メロの下りに沿ってコードも下がるところはめちゃ美味しい。こんなにも聴こえが変わるのかと驚嘆するレベル。

I finally found you, my missing puzzle piece, I'm complete

(やっとあなたを見つけた 欠けてたパズルのピースでわたし完成したの)

歌詞も好き。風を見つけた僕の気分です。

 スペシャより

・この曲から青春セクションで、より青春のせつなさを強調したコード進行

・ブリッジで下っていく感じがせつない。ワシはメロディの下りに合わせてコードも下るアレンジにした

・地元の中学にケイティやレディ・ガガを輸入したときに卒業アルバムに好きな曲と書いてくれた思い出がある

10. Eh, Eh / Lady Gaga

あえて『Bad Romance』でも『Poker Face』でも『The Edge of Glory』ないチョイス。本人的にもっと有名な曲はあるが実は聴いていた枠らしいけど、そういう感覚あるよね。アルバムの中にある、密かにきらりと光る曲を見つけた快感。

突然別れを切り出す歌詞だが、コード進行から普通ではない感情を読み取っている」とインタビューで語っていたけど、すごく腑に落ちたというか。きっと彼の数々のオリジナル曲にも「真実はコードで語る」要素が散りばめられてるんだろうなと受けた影響を想像する。

ガガ&風は発するメッセージ的にも音楽的な影響も並々ならぬ関係があると思うのでいつかそんな記事を書く事を構想中。

 スペシャより

・一番衝撃を受けたアーティストの一人

・もっと有名な曲あるけど密かに聴いていた枠

11. Circles / Post Malone

「藤井風ってポスト・マローン聴くんだ…」っていう謎の感想が一番最初に出てきた曲。『Circles』が収録されているアルバム『Hollywood's Bleeding』は深海から自分を引っ張り上げてくれるようなド名盤なので単体よりもアルバムで聴くことをオススメしたい。オルタナティブでヒップホップで超ロック。

Let go, I got a feeling that it’s time to let go

(手放すんだ もう別れなきゃ)

歌詞は結構男の身勝手みたいな曲なんだけど藤井風が歌う事で別の文脈が生まれてきそうなのがカバーの面白いとこ。

曲としては後半の伸びやかなボーカルは藤井風が一番気持ち良く聴こえる音域だと思っていて、原曲自体に重なってか相当熱く歌い上げているのが好き。コーラスの低音もぞくぞくクルしもう何個要素重ねてくるん!?って感じです。

本人も語るようにラストにふさわしいスケールを持った楽曲で〆。ご馳走様でした。

スペシャより

・なぜかは説明できないけどラストに配置したい枠

・(ポスト・マローンは)声がかっこいいしずるい

・原曲に吸い寄せられ、声を強調させて歌い上げている

 

いかがだったろうか

前回はルーツを表現したかったけど、今回は感情を優先したし新しい曲が多めになっていて今の感情を忠実に表している エモーショナルな体験をしてくれたらうれしい

by 藤井風

Yaffleサウンドの周到な編曲が無い分、藤井風というアーティストのピアノ演奏そしてコーラスワークも含めた声を最大限感じられるアルバムだと思う。

 

次は、3月10日に差し迫ったNetflixでのパナスタライブ配信が楽しみでしょうがない。このお祭りを楽しむために配信なども企画中なのでお楽しみに!!

それでは、お元気で。

 

音声はこちらから!!

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*1:過去の曲や音源の一部を流用し、再構築して新たな楽曲を製作する音楽製作法・表現技法のこと。人間発電所もKing James Version - I'll Still Love You をサンプリングしてる

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