僕はレベル40

心が動いたことをかいていく

King Gnuの奏でる新しい叙情詩 "Prayer X"  感想と考察

 

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目次:

 

Spotifyで音楽を聴きまくってる。

神サービスすぎて震える。課金したくて課金したくて震える(しろよ

 

そんな神サービスにて洋邦問わず新譜をずっと音楽聴いてる訳だがこのPrayer Xは2018年にリリースされた楽曲の中でも、とび抜けて美しく、そして切ない。

 

そんな楽曲のMVが公開されたので、感想と考察を述べていきたい。

 


King Gnu - Prayer X

楽曲について 

タイトルは"Prayer X"。容疑者X的な意味で訳すると「祈る人 X」とか「ある、祈る人」とかそんな感じか。

 

King Gnuとしては初のアニメタイアップ曲。かの名作、BANANA FISHのために書下ろした楽曲だそうだ。

 

この曲、立ち上がりからエッジボイスの効いた井口ソロ+ストリングス+アコギとかいうファン鼻血ブー太郎間違いなしの出血大サービス。

露骨に殺しにきてる。女子ファンのヘモグロビンがヤバイ。

 

系統としてはSrv. Vinci時代のPPLHeroineに近いけどだいぶ歌謡曲に仕上げてきた感がある。それはストリングスの効果か、ボーカルの重ね撮りのせいか、はたまたメロディラインのせいかとても叙情的に仕上げている。

とりあえずストリングスとコーラスワークで美麗にしたれとかじゃあない。

 

この前行ったライブでは確かサビ以外はメイン常田Voで歌っていた。

そん時のオルタナっぽい印象から、こうもアレンジで大衆性を獲得するとはなんとも編曲の面白さを痛感する。

 

あと、やっぱり僕はこのDr. 勢喜&Ba. 新井のリズム隊コンビが好きだ。サビの美メロの裏に凶悪なほど首振れるビート。なんか泣きながら無理やり笑わせられてるような、変な感覚にさせられる。

 

曲の長さは3分ちょい。

Flashに続いてこの曲もめちゃ短く感じる。なんなの?カラータイマー持ってるの?縛ってるの?って思っちゃう。できるだけコンパクトに作るっていうモードなんやろね、きっと。

 

色々言ったけど、つい口ずさんじゃうサビのメロディが一番すげーと思う。

気づいたら「あふれだ〜した♪」って歌っちゃうし。

 

もう2億再生が見え始めた"lemon"に勝るとも劣らないウケる要素を持ち合わせてると思うんだが・・・

 

歌詞について

 

 

今回重要なのは書き下ろし曲としてBANANA FISHを読み込んで作られた作品だということだ。

この漫画原作、既に30年前の刊行だが、孤独・苦境に向き合ってどう生きていくかという普遍的なテーマを描いているので、今でも全然読める。

(Bバージンや幽白に代表される90年代前半臭が古さを感じるけどまぁ味の範囲。)

 

BANANA FISH読んだ人がこの曲聴けば99パーセントの人はアッシュの生き様と重ね合わせる。

 

溢れ出した涙のように 一時の煌めく命ならば 出会いと別れを 繰り返す日々の中で 一体全体何を信じればいい? 

 

この人生に 意味があるのなら 教えてよ 脆く、儚い日々の中で 

 

ぶっちゃけ抽出なんてしなくても、歌のどこを切り取っても英ちゃんと出会う前の辛い過去を背負うアッシュそのまんま

この歌でアッシュのPV作れる。想像するだけで涙が出そうだわ。

 

アッシュに限らず、このBANANA FISHでは大人も含めキャラクター達がよく泣く。

アッシュはもちろん英ちゃんも伊部さんも、どのキャラもそれぞれの抱える葛藤をなんとかしようともがき苦しみながらも戦っている事を思うと、どのキャラに重ね合わせてもこのPrayer Xという曲は最高に響く歌として設計されている。

それだけ普遍的なテーマを歌った、懐の広い曲になってるという事。

 

もしこの曲が好きなのに、この作品を読んでない、またはアニメも見ていないという人がいたら必ずチェックすべし。(せめて最初の5巻くらいまで。)さらに倍好きになるからさ。

 

MV考察

もう一度貼る。


King Gnu - Prayer X

さてさて、問題の恐怖MVに関してだ。

 

まず誰もが思うこと・・・

 

超怖え。

ってか顔のもじゃもじゃマジキメェ。

 

MVにはこんな意図があるよう。

ミュージックビデオでは、アニメーション作家の山田遼志と、King Gnuのクリエイティブワークを手がけるPERIMETRONのOSRINによる初タッグが実現した。“強制された栄光”をテーマに、一人の男が周囲の人々に翻弄されながらも栄光をつかみ、やがて破滅に向かっていく姿を描いた作品となっている。

引用:King Gnu、“強制された栄光”をテーマに祈りを描く「Prayer X」MV公開 | BARKS

 

構成要素としては、

・視点が定まらない、精神をやってしまったピアニスト

・主人公を操ろうとする黒服達

・主人公を礼賛する大量の信者達

・心模様を表す真っ暗な空

 

といったところか。

絶えず揺れる画面が不安を煽る、精神病の症状ってのはこんな感じなのか?

激しく精神が動揺した時のあの嫌ーな感じがに似てるのかわからんが、とにかく嫌悪感を覚える。(そう作られてる

 

衝撃のラストの銃自殺シーンはサリンジャーの”A Perfect Day for Bananafish”の主人公シーモアをモチーフにしてるのは間違いない。苦悩の果てに精神をやられてる感じも、ピアニストである点も一致する。

んで、「強制された栄光」をテーマにしているところはパパディノに、「お膳立てされた栄光」を演出されるアッシュとも重っている。そしてラストのあのシーンとも被る。

 

アメリカ小説では「生(身体性)を実感するために自から命を断つ」事は珍しくないが、このMVでは才能ある主人公が周囲に踊らされ、真の自由とは程遠い状況にあることはすぐにわかる。そしてついには信者にまで裏切られ、ナイフで刺されてしまう。

 

僕の目には刺された主人公が最期の瞬間だけは生きている事の実感、そして自由という名の尊厳を取り戻すために自からの死に引金を引いたように映った。

 

情報化、グローバル化、資本主義、リアルタイム化、そんな社会で生きる僕らにとっても「あぁ生きてる」って実感を得るってほんとはかなり難しい事なのかもしれないね。

 

あ、だからホンモノを求めてLIVEに行きたくなるのか!?

 

いかがだったろうか

また良い曲作ってくれやがってと思ったんだが、このMVただのストーリーテリングを超えて、今の音楽業界の状況をメタってね?とちょっと思ったり。

 

つまり、主人公=アーティスト、黒服=プロデューサー、ファン=信者達みたいな状況を風刺してんじゃないないのってこと。

 

だからこれはKing Gnuの、もっと言えばPERIMETRONというクリエイター集団の自分達はこうならねーぜっていう逆説的な決意表明にも取れる。

 

正直ここまでヌーの皆さんにはぐうの音も出ないくらいにやられちゃってるので、King Gnuすげーすげーとしか言えてないし、累計1万5千字以上彼らについて書いてる僕なんて完全にこのMVのひれ伏して神にお祈りしてるまさにPrayer X状態だ。

 

 

彼らの良いもん作ったる!というクリエイター魂をビシビシ感じるからこそ、その熱量にやられちゃってるとこはあるけどもしも楽曲のクオリティ下がり続けたらそん時は文句の一つでも言えるファンでありたい。

 

読んでくれてありがと。今日はこの辺でアディオス^o^

2019.6月追記:

全く気づかなかった・・・気づいた人の観察力に脱帽!僕なんて最後らへん直視してなかったのに

 

BANANA FISH バナナフィッシュ 全巻セット (小学館文庫)

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Prayer X

Prayer X

 
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