ついに出た。
ここんとこ一番楽しみにしてたKing Gnuの2ndアルバム、『Sympa』。
例によって、自分なりの好きな部分や印象的な部分をあれこれ書いていく。今回は主に、楽曲に焦点を当てていきたい。クソ長いけど良かったら読んでくださいまし。
ストーリー
Vo/Gt.常田はインタビューで、こう語る。
俺の場合、ロックバンドのストーリーが、ヌーの群れが大きく成っていく様に似ていると思ったから、そういうコンセプトでKing Gnuを形作っていってる。
引用元:ぼくのりりっくのぼうよみ×常田大希(King Gnu)対談|稀代クリエイターの没落、破壊、アート論 (2/3) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー
当然、楽曲からファンになった僕だが、今ではKing Gnuの4人が作り上げるストーリーを楽しみ、驚き、共に喜びたいからこそ彼らを追いかけるように変わった。楽曲、ライブ、MV、ジャケット、スタンス。様々な形で表現されるアートに信念、または美学という、熱い魂を感じられるのが、このバンドの魅力だ。
流川楓的に言えば、「ありがてえ・・・贋物じゃねえ・・・」ってとこだ。
そのアートフォームで最も重要と言っても過言では無いのが、楽曲集である「アルバム」ということになる。ファーストである『Tokyo Rendez-Vous』で「Chaotic Tokyo」を表現しきったKing Gnu。そのドス黒くも美しい混沌都市の中で、ついに出した救難信号ーこそが、この『Sympa』という傑作のセカンドと解釈している。
"We need HELP!"という叫びから始まるこのアルバムだが、楽曲は決して弱々しくない。むしろ超獰猛で、聴き手を絶対に殺ってやるくらいのモン。
シンパ(同志)を募るという表現よろしく、俺達に付いてこいやと言わんばかりの楽曲と演奏で、これから先のもっとでかい、すげえストーリーを見せるための仲間集め段階がこの作品の目的に思える。だからこそ、必然的により多くのリスナーに届くポップで激しいアルバムにしたんだと勝手に推測してる。
ざっくりインプレッション
一聴して全員クソレベルアップしとるやんけ!!!
作詞力、歌唱力、演奏力全て一段階上がったと思うんだけど、特に今作はBa.新井のプレイングがいっっっち番印象に残った。つまりベースパート。エレキベース、ウッドベース、シンセベースを持ち替えながら、ゴリゴリの部分もあればバラード曲ですら真摯に丁寧に、でも主張し続けるその様に感動した。なんて言うか、随所に他のメンバーへの良い意味での対抗心を感じると言うか、俺負けねぇから!!ってのが嫌ほど伝わってくる。後ほど曲インプレで触れていければと思う。
そして作詞。ダサい言葉を一つも吐いてない、けど具体的でわかりやすい歌詞っていう奇跡的な調和。
こちらも後ほど触れていく。
それでは曲の方聴いていこう
Sympa I〜IV
所謂インタールード(間奏)。4曲がアルバムの随所に挿入されてる。モールス信号と"We need HELP!"が印象的な救難信号から始まり、最後に救われるまでのストーリーを表している。これが絶妙に起承転結を作っていて聴きやすい。このYOUTUBE全盛の単品でしか音楽が聞かれない時代に、あえてアルバムを作品全体として聴かすんや!と言う意志を感じる。
ちなみに10回以上アルバムをリピートするとむしろSympaが待ち遠しくなる。(寿司はガリが一番美味い的な)
ちなみにヴァイオリンが流れてるんだが、クレジットを見ると・・・これは常田兄なのか?常田氏が小澤征爾主催の楽団に在籍してチェリストだったことは知ってたんだが、兄貴もヴァイオリニストとは音楽一家に恐れ入る。
02. Slumberland
アルバム冒頭の曲ってことで、一番伝えたいメッセージはこの曲なんやろなと・・・King Gnuが「愛」と「人生」について歌っていく宣誓であるよ、素敵。
03. Flash!!!
この曲も過去に書いたので、こちらをどうぞ。
アルバム1番のキラーチューンは間違いなくこの曲。改めて聴くとBa. 新井の凄みに気づく。ゴリゴリなようで、実は他パートに比べてゆったりしたリズムで弾いてる。そして1:35からのサビ部分のハメ方がエグすぎる。頭おかしいよ・・・(褒めてます)
そして何回聴いてもこのラインは最高だ。
誰もが矛盾抱えてんだ
翻弄され踊り踊らされ
それでも何度でも立ち上がれ
いつだって主役はお前だろ 輝けるんだ
04. Sorrows
ソロウズ・・・
ローーーック!!!
前作で言う「あなたは蜃気楼」ポジのロックチューン。この曲に関してはVo/Key.井口に焦点を当てたい。
歌うパペットマペットこと井口氏、今回歌唱力上がりすぎでは?この曲なんか三浦大知が歌ってんのかと思うんだが、そう聞こえた人おらんですか?特に2:20の「手放したっていいんだ」っていうフレーズ。
今回嬉しかったのが、井口ボーカル曲でBPM速い曲が出てきたってこと。サビだけ歌うことが多かった彼だが、速い曲のAメロこんな音色で歌うのね・・・これはぜひライブで聴きたい曲。
この曲で個人的に刺さったパンチラインは
流離え友よ 生まれては死ぬだけの輪廻の中を
終わりのない旅路を 進め夜が明けるまで 奥歯を食いしばって
です。深い悲しみに苛まれた時、きっとこの曲が俺たちを奮い立たせてくれる。
06. Hitman
この曲好きすぎる。邦題、「殺し屋」。でも直接的に殺し屋のストーリーを描いた詩ではなさそうで、あくまで「あなたの心の奥底を狙って弾を打」つことの表現か?
今回のアルバムで最もスケールの大きい曲で、展開も非常にドラマティック。特に4:20からのファルセットコーラスワークによるドライブ感とギターソロね。聴くたびに昇天するんだが?ブライアンメイかよ!常田氏、ライブでのギターソロは必ず変えてくるので、「Vinyl」のソロ同様、アレンジを楽しめる一曲。
この曲だけは前アルバムに入ってても違和感ない。そんくらいTOKYOで彷徨いながら、SUNSHINEとSKYHIGHを追い求めてる。
この曲の歌詞で一番やられたのは東京航海を「トーキョークルージング」、東京迷路を「トーキョークロッシング」と読ませ、且つ韻を踏んでるところ。よく考えつくわ。脱帽。常田はん、今作で確実に作詞家として一皮向けたと思うわ。
07. Don't Stop the Clocks
はい出た、出ましたよーズルイやつ!!
アコースティック✖️井口ボーカル✖️ストリングス。混ぜるなキケン、耳が幸せと言うやつですな。ほんと井口氏のファルセット心地いい。
この曲はライブとの対比が印象的。俺の記憶が確かなら最後らへんで常田ボーカルも入っていたし、個人的には入れて欲しかったんだが、要らないと判断したんだろうか。今アルバムでは二人のハモりがほぼ無いので少し寂しい。というかハモりどころか2人が歌う曲もそんなに無い、意図的に減らしてる?
ライブとの対比で言うとストリングスの豊かさね、ライブでは無かった音が入ることがこんなにも彩りを生むってすごい、この辺りのクラシックの素養ってのはこのバンドの強み。
それと、表現として「時間を止めて」って表現はよく聞くけどその逆はあまり聞かないなあ。
後はこの曲の役回りがIt’s a small worldとセットもんっていうのははっきり意図されてるのは間違いない。おそらく前奏的な役割を持つ曲。彼らの曲には、今は全部忘れて踊ろ?って曲多い気がする。Dance Anyway的な。
そして「踊ればいい~♪」からのIt’s a small world!
08. It’s a small world
初めての人はこちらをどうぞ↓
この曲はビート打ち込みに新井氏のウッドベースが溶け合ったなんとも不思議な曲。軽いんだけど頭は振れて重厚感がある。不思議な世界に紛れ込ませてくれる曲。
そしてキングヌーの道化師こと井口氏の怪演が特徴。この曲聴いてると目を閉じてても彼が踊っておる。最近思うんだけど、ピエロになれる男ってマジでカッケーってなりません?でも、ギャップで歌は甘い美声ってガチ最強では?
バンドメンバーがそれぞれの強みと立ち位置を理解し、それを実行できるってチームとして強いんだなとすげー思う訳ですよ。
一番好きなフレーズは
君の世界に僕も生きられるならそれは素敵な事でしょう?
大人になんてなりそびれたままでいいの
ピーターパンシンドローム日本代表の自分としては深く心に刺さる。
10. Prayer X
こちらも長々と書いてるのでこちらをどうぞ。
MVが作られてる曲の中で一番好き。(MVが好きとは言ってない)
というか2018年リリースの曲で一番好き。(MVが好きとは言ってない)
11. Bedtown
ベッターン!
そしてこの曲もライブによって叩き上げられた名刀感がある。前にライブで聴いた時よりもBPMをだいぶ上げてる。こんなにリズム隊も荒ぶって無かったし、細かいとこで言うと、サビの音程も変えてる。「このままふ↑た↑り↑で」だったのが、「ふ↑た↓り↑」でに変わってる。自分はライブではかなり予習して行って、どんなアレンジを加えてくれるのか楽しみにしてるタイプなので、新曲を演られると結構戸惑っちゃう。でも、こんだけ進化してくれるんなら逆の楽しみ方ができるなと思わせてくれた曲。
ブラック畑出身のBa.新井とDr.勢喜の真骨頂でもあって、「俺らのHOME感」というか黒いニュアンスが良く出てる。ある意味アルバム中一番勢いがある曲。ベッターン!!
あと、なんでこの曲がBedtownってタイトルか知ってる人いたらおせーてください。
12. The hole
このアルバムの白眉。流石に一番好き。
まさかPrayer Xより美しく、ドラマティックな曲が聴けるとは思わなかった。
この「The hole」常田氏が日本のJ-POPの名曲を聴き漁って作った曲だとか。そう言われると構成とかピアノ・ストリングスの使い方がミスチル(コバタケ)っぽい気がするな。それかDEEP RIVER期の宇多田ヒカル。(カバーしてくれ、絶対良い)
あと3:25以降の展開が最高なんだけど、ここは勢喜氏の進化ポイントで、手数で攻めるでなく、「トン、トターン」で、キープして叩いてるのが、珍しい。首を振らせるだけじゃないドラマティックさが生まれてる。ゆっくりしたBPMなんだけど、そこが良い。
あと、ずーっと渋く鳴ってるシンセベースね!売れてるバンドの多くがルート弾きしかしないってのにこんな随所で破壊的ベースを鳴らしてるのがおよそ正気では無い。多分ウチのおばあちゃんが聴いたらヘッドホン壊れてると勘違いするぜ!?
この辺りの新井氏の創意工夫に今作ではかなーりやられました。
そして当然というかパンチラインは
そっと包み込むように 僕が傷口になるよ
この世にまた新しい表現が生まれましたな、素敵すぎる。
ここの比喩もミスチルっぽいなと、両方のファンが思います、ハイ。
いかがだったろうか
まだまだ、ヌーの旅はRPGで言うところの、仲間集めパート。ドラクエ5で言うとまだ幼年期パートが終わったとこで、やっとこれからワラワラ色んな仲間を集められる段階に過ぎない。つまり、これからが一番面白くなるってこと!
世界でロックの地位が低下してやまない、この状況。ビルボードを聞けばトラップビートばっかりや。バンドミュージックなんて全然流行ってない。
それでも!日本が世界で一番ロックな国と思われるかは、King Gnuにかかってるかもしれない、というのは期待しすぎでしょうか。
👑🐃 #KingGnu
— 常田大希 - Daiki Tsuneta (@DaikiTsuneta) 2019年1月16日
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新しい曲を作るたびに, この1曲で自分の人生を変えようと, メンバーの人生を変えようと, 聴いた誰かの人生を変えようと, 毎曲毎曲作って来ました.
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インディーだろうがメジャーだろうが真摯に作っていくだけです.
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2ndアルバム ”Sympa” 宜しく頼みます.https://t.co/IqfA4oSG0K pic.twitter.com/ZfD7whGVnC
このアティチュードこそが、このバンドを心底信じちゃう、夢を見ちゃう理由。
頑張れキングヌー。
クソ長い文章を読んでくれてありがとう。それでは今日はこの辺でアデュー。