いやいやいや、10代20代のファンも多いからぁ!というツッコミはちょっと置いといてだな。
既に多感な時期を終え、ある程度好きなものが固まった30代以上のリスナーに新しい音楽を聴かせる、沼らせるって実は結構凄い事だと思うんですよね。
藤井風というアーティストのライブに実際足を運べばメインのファンはミドル層だったように感じるし、やはり何か理由があるんじゃないだろうか。
そんな訳で自分も含め、彼の音楽がなんでこんなにも多くのOver 30に刺さり、風沼にハマらせるのかを考えてみた。
音楽性
1.歌謡曲のテイスト
30代↑のハートをガッチリ掴もうと思ったらそらもうやっぱメロディーよ。
藤井風は洋邦問わず「ごった煮」的に色々カバーしてて、『木綿のハンカチーフ』、『ひこうき雲』といった大名曲もカバー動画として投稿している。
加えて、『フライディ・チャイナタウン』や『Plastic Love』といったシティポップもカバーしており、70年代~80年代のある種黄金期ともいえる時代の音楽性をたっぷりと取り込んだ音楽的な引き出しの多さが伺える。
で、それら昭和POPエッセンスの結晶として「ネオ歌謡曲」とでも名付けたい名曲『罪の香り』が生まれたと思ってる。
サウンド面でも歌詞面でも歌謡曲がふんだんに盛り込まれていて、初めてイントロからサビまで聴いた時は笑いが出たもんだ。This is 温故知新スタイル!
加えて風声は流行りの声よりもだいぶ低音な事もあり、歌謡曲には「音」として抜群にマッチする。
この往年のグッドメロディと歌謡曲のテイストこそがミドルを虜にする一つの重要な要素である事は間違い無い。
2.ブラックミュージックのノリ
そして外せないのがブラックミュージックのノリ。つまりグルーヴ。
藤井風が最も敬愛するアーティストはご存知Michael Jackson。マイコーをはじめ、Stevie WonderやGrover Washington Jr.といった超大物アーティストの珠玉の楽曲達を聴いて育ったのも納得のグルーヴがそこかしこに感じられる。『Rock With You』をチョイスするあたり、完全にわかってる。最高。
特にピアノ演奏においても歌唱においても「拍」の感覚が段違い。意識してるのか天然かわからないが、「そのズレ方最高ぅぅぅ!」とマニアを唸らせるシンコペが聴ける。
自分的にその極地に感じられたのは"NAN-NAN SHOW 2020"の『何なんw』だったし、実際に生でも見れた『Just the Two of Us』だったりする。
このグルーヴも黄金期70年代、80年代を通ってきたリスナーにとってはたまらなく魅力的に感じるし、もはや抵抗不能とでも言うべきかもしれない。
3.ピアノ弾き語り
藤井風の演奏を聴くと改めて楽器の王様はピアノなんやなと再認識させられてしまう。
『優しさ』に殺られてファンになった層は多いと思うがあのコードセンスといい、自由自在に弾く様といい、弾き語りの情熱的な歌唱といい楽しそうな表情といい×∞、いまだに紅白の演奏見てるけど、マジでピアノの化身なんじゃないかくらいに思えてしまう。
打ち込みで作曲編曲を完結させる手法が全盛の中で、ここまでオールドファッションな作曲をするアーティストも珍しくなってきたしね。
ピアノ曲というある種「王道」な作曲・演奏スタイルがミドル層のファンにどストライクだったのかなと。安心感あるというか。
まぁピアノを弾く姿がここまで絵になる男はそういないという点もあるかも。
まとめると
・歌謡曲のテイスト
・ブラックミュージックのノリ
・ピアノ弾き語り
これら3つが有機的に作用する事により出来上がる極上のサウンドがアダルトリスナーを唸らせていると考えてる。
歌詞
藤井風の楽曲に所謂キラキラ青春恋愛ソングは無い。
自分が中高生だった頃を思い出すともっとロックでわかりやすくて直接的な表現が好きだった。
「ずっと一緒に」だの「君と出会えたのは偶然じゃない」だのそういうマジックに酔っていて完全に頭ん中お花畑だった。別にその過去を否定もしないし、そんな歌も必要だ。
だがしかし!愛すべき自分の1ページではあるけれど、さっすがに30代になるとキラキラ眩しいだけの歌詞だけでは響かなくなってきた。
一方風歌詞は普遍的且つ地球規模。
あの日のことは 忘れるね
みんなだって 迷っていた
この宇宙が 教室なら
隣同士 学びは続く
旅路
切れど切れど纏わりつく泥の渦に生きてる
この体は先も見えぬ熱を持て余してる
野ざらしにされた場所でただ漂う獣に
心奪われたことなど一度たりと無いのに
青春病
オイオイオイ、悟り開いた禅僧かよ。
今まで何度も書いてきたし、これからも書くけど、「愛してる」とか「せつない」とかそういう単語をそのまま歌詞に入れるのではなく、その感情丸ごとオリジナルの表現で言い表してこそ、アーティストだと思うし、そこに何度だってやられてしまう。
この色々に解釈し得る深い歌詞も30 age overを掴む一つの要素なのは間違いない。
ヴィジュアル
キーワードは「昭和」と「可愛さ」。
誰が見ても普遍的に男前。男から見ても間違い無く「かっけぇ・・・」となる藤井風のヴィジュアル。
そして誤解を恐れずに言えば、彼の男前さはかなり昭和の香り(かほり)がする。
(僕の父親が好きな昭和スター)
日本含むアジアの若年層トレンドとしては切れ長の目とマッシュ系のK-POPスタイルであって、ロングヘア―でくっきりした目鼻立ちのアーティストはあまり例が無い。
一周して逆に新しいまである。
そんな温故知新スタイルが昭和生まれの抗えない美的感覚を刺激し、直撃している可能性がある。
だけどファッションは今っぽくゆるめで笑顔や言動含め「可愛い」というギャップにやられたover30は多いと思う。
余談だが、彼のヴィジュアルが次のトレンドを作り出す事は多分無い。言うまでも無いが、パンピーが風スタイルを真似ると相当に厳しい事になるからだ。
藤井風容姿端麗杉唯一無二也。南無。
いかがだったろうか
他にも色んな要素があるけど、何度か出てきたワード「温故知新」こそが藤井風が僕ら30代以上を虜にするデカイ要因だと思われまする。
古い楽曲への尊敬(RESPECT)を忘れず、エッセンスを消化し、新しくアウトプットする。だからこそ、アヴァンギャルド過ぎないし、わかりやすく我々に「浸透」していくんじゃないだろうか。実際、何度「あぁぁぁ、そのツボ突いちゃいますぅ!?」と思わされたかわからない。
そんな訳で、色々と言語化してみたけど最大級のプレゼント『LOVE ALL SERVE ALL』が僕たちを待っている。
え、まだ買ってない!?
「買うつもり」・・・
そんな言葉は
使う必要がねーんだ
なぜなら
オレやオレたちの仲間は
その言葉を頭の中に
思い浮かべた時には!
実際にブツを買っちまって
もうすでに
終わってるからだッ!
「買った」なら使ってもいいッ!*1
あぁ楽しみ。きっと我々の想像もつかない領域に達しているんだろうな。
それではアディオス。
*1:ジョジョの奇妙な冒険 5部から改編。僕が最高潮に推したい作品にのみ好んで使う改編です