笛の音とらっせーらが鳴りやまない。仕事をしててもご飯食べててもランニングしても一生頭の中であの旋律が流れている。
みんなもそう・・・よね?
え?何のことかって?
もちろん藤井風の『まつり』ですよ。
2nd アルバムである『Love All Serve All』の発売の「祭り」を目前に控えたタイミングでのMV&配信投下。
藤井風の新章を彩るこの『まつり』について色々と語っていきたい。
最上の雅と裏切りの音楽
まさか「こう」くるとはな。
そう、ピアノのイントロからの「和テイスト」でせめてくるとは。
いやね、贅沢な話で、『旅路』も『きらり』も『燃えよ』も全部好きなんですが、風ピアノにも飢えてたんですよ。
それがまずイントロからズドン。僕がどれだけ「キターーーー!」と思ったかはこの拙い語彙力では言い表せない。
と思いきや、あの笛の旋律が高らかに鳴り響く。
・・・雅。
辞書的な意味では「洗練され、優美なさま」という事だが、この宮廷風の上品な楽器使いといいMVのきらびやかな様を見るとこれを「雅」と表現せずに何というのだと・・・意味知らない外国人も「Oh, this is “Miyabi”・・・」って呟いちゃうレベル。
かと思えば、ガチガチの「Trapビート」。
以前にも再三書いている、現代音楽のトレンドであり、「チチチチチ」とハイハットが連続で鳴るこのビートの事で、『キリがないから』や『へでもねーよ』に使われているリズムの事なんだが、雅楽風の笛が鳴り響く下にはずっとこのTrapビートが鳴っている。
僕ね、前から藤井風の楽曲は「裏切りの音楽」だと思っていて、僕らの予想を裏切る音作りを毎回してくる。
ここで言う裏切りは二つの意味があると思っていて、
まず、笛の音×Trapという耳馴染みの無い音を今日本で一番注目されている藤井風が奏でるという意味。
例えば『優しさ』の終盤大サビで鳴り響くあの激しいビート。いやいやいや、普通にピアノのバラードでも成立するでしょ!?と素人は思うが風&Yaffleは違う。裏切る。
いや、「奇抜な組み合わせ」はほんとに一歩間違うと目も当てられないレベルでコケるからね。この組み合わせか!という裏切りが一点目。
そしてもう一つは毎回曲のテイストを変えてくるという点。『旅路』において、もろにブラックミュージックの煙たい音色で攻めたと思ったら『きらり』では四つ打ちビートで真っ直ぐきたり。また裏切る。
決して一辺倒にならず、毎回驚かせてくれるこのサウンドプロデュース力・・・恐るべし。チーム藤井風。
あと歌詞も相当裏切ってくるんだけど、まずはサウンド面の裏切りでそんなとこ。
あと、このイントロでご飯10杯いけるのでもう少し語る。
イントロ、ヘッドホンでよーく耳を凝らして聴いてほしい、「ハッ」というLowな風ボイスで「祭囃子」が聴こえる。
つまり「風ピアノ+笛の音+Trapビート+風ボイス」という主に4つの要素で構成されている事がわかるが、このイントロこそが曲全体の上品さやビート感を最も表していると言っても過言ではない。うん、きっとそうだ。
ここに至るまでにどれだけのアイデアが出され、ボツになり、完成したのかという過程は想像する事すらできない。
歌と詞
最上の雅サウンドに乗る歌と詞。
相変わらずという表現が正しいかはわからんが、とにかく耳に残る。そして胸に刺さる。
まず、自分的に刺さったメッセージはド頭。
愛しか感じたくもない もう何の分け隔てもない
まとめてかかってきなさい 今なら全て受け止めるから
過去に『きらり』でついに能動的な愛を歌った事に衝撃を受けたが、もう完全に愛の人になっている。
『Love All Serve All』というタイトルが表すとおり、根底に愛が流れており、この曲もその愛を象徴するメッセージを掲げている。
「感じたくもない」というワンフレーズだけで、風氏の強い思いが感じ取れる。
で、一体何がほしいわけ
誰に勝ちたいわけ
え?先週この曲作ったんですか?ってレベルで世界情勢をもを反映した歌詞で疑問を投げかけている。
ほんと、自分の欲とか虚栄心みたいなものが全部裸にされる気分だよ、こっちは。
花祭り 夏祭り
秋祭り 冬休み
と全ての歌詞を春夏秋冬でまとめるのではなく、「花」=”The flowers bloom!”=春と婉曲して季節を表すのがお洒落。あえて、冬休みとして言葉はハズシつつも押韻はしっかり押さえるあたり素敵。
僕が激しく泣いたせいで
君が派手に笑ったせいで
の箇所でサウンドがディストーションギターで歪み、一気に曲が展開するところもまた裏切りポイント。ここでガッと曲がドライブする。
そしてここが極めつけの個人的泣きポイント
祭り 祭り 毎日愛しき何かの 祭り 祭り
あれもこれもが有り難し
苦しむことは何もない
肩落とすこた一切ない ない ない
何?この許された感・・・?
僕結構ネガティブなもんで、人の反応が気になったり、すぐに人と比べちゃうんですけどもう全てが受け入れられた感。
何でもない今日この日こそが尊いんだというメッセージ。俵万智のサラダ記念日じゃないが、今日もあなたにとって、誰かにとっての「祭り」なのね。
『帰ろう』を初めて聴いた時のようにスッと、でも落ち着くのではなくとにかく「踊」っちゃいなというもう一段上がった楽曲としてのデザイン。
この流れがあってこそ、一見意味を持たない「らっせーら」や「しゃ」のようなワードチョイスこそが、逆説的に意味の深さを増しているようにも思える。
そしてこの素晴らしい歌詞を届ける温かい声ね。
歌詞の内容が内容なだけにかなり抒情的に歌い上げているが、個人的に刺さった歌唱はほんの短い歌詞「ない」である。
今回、特に「フェイク」という歌唱法を全開で使用しており、
「肩落とすこた一切ない ない ない」の「ない」の音階が上下に動き、「一切ない」というメッセージを強調しているようにも思う。
こういう細かい表現の積み重ねがめっちゃ許された感の出どころなのかもしれな。楽器、歌、メロディの緻密な織り重ねがこの強い感動を生んでいる。
いかがだったろうか
感動し過ぎて、手が勝手にキーボード叩いてたわ。
こんな辺境のマニアックブログを読んでいるあなたは既に最新作『Love All Serve All』を購入済みとは思うが、僕も同じく心の底から楽しみにしている。
しばらく「風しか感じたくもない」状態になると思うので、堪能した後にアルバムについて色々書いていきたい。
それではアデュー。