あけましておめでとうございます。
2024年の紅白歌合戦は本当に良かった。
毎年用意されるサプライズ出演の中でも特大ビッグヒットとなったB'zの出演も、米津玄師&伊藤沙莉の可愛いピースサインも、後期高齢者とか舐めたカテゴライズしてんじゃねぇとばかりに熱すぎるTHE ALFEEの最強3声ハーモニーも、 蒼い炎のような静けさと情熱を感じさせてくれたVaundyも、マイク位置オイィィィ凄すぎるぅぅぅと感動した玉置御大の声量と毛量とかどれもどれも最高に楽しませてもらった。多分今、道ゆく人にウルトラソウッ!?ってマイク向けたら全員ハァァァァイ!!すると思う。
でもやっぱり一番僕の心を動かしたのはそうです藤井風の『満ちてゆく』です。
誇張なく2024年一番聴いて、一番口ずさんだ楽曲で一年を締めくくる事ができた感動と、色々あった昨年を満ち満ちの満ち状態にしてくれた。
そんな藤井風がお茶の間に届けた渾身のパフォーマンスについて語っていきたいと思う。
紅白と藤井風
2021年のサプライズワープ演出、からのMISIAとの神々の歌唱『Higher Love』、2022年世界で飛躍した『死ぬのがいいわ』に続き3回目の出演。この3回は全てNHK MUSICスペシャルと同期しており、デビュー数年の若い歌手がこんなにもNスペという形で特番を組まれることからも、いかにNHKから愛されているかがわかる。まぁそりゃあこの時代に藤井風を追わないってそれメディアの役割果たしてるんですかねって感じですけどmore。
僕が今回最も注目していたのは普段のライブでは観ることができない紅白×藤井風ならではの演出・パフォーマンスだ。他アーティストとのコラボもいいなぁでも風さんのみの歌唱も勿論聴きたいよねぇ、ってかもはや会場全体で「まつり♪まつり♪」ええやん!とか妄想していたんだが、答えは「今までの藤井風文脈をきっちり踏まえた演出・魅せ方」であった。あれです、前提知識なくともめっちゃ美味しいけど知れば知るほどに美味しさが増すやつです。知らぬが花とかむしろ知らねぇ。知っときゃ花だよこれは。
※NHKの映像はこちらから
演出の妙
今回特筆すべきはやはり演出の妙だ。ピアノによる超絶技巧をあえて封印し、音楽的にというよりもはストーリーに比重を置いた手法をとっている。
この演出指揮は現在の主要な藤井風ライブ演出をほぼ手がけている山田健人 a.k.aダッチ監督が指揮したことが明らかになっている。
NHK紅白歌合戦 藤井風「満ちてゆく」演出しました。
— 山田 健人 せ (@dutch_tokyo) January 1, 2025
ニューヨークの朝(さむっ)(ねみっ)から生中継、フォーカスも絞りもズームもワイヤレスで一発勝負、数秒ずれたらこない朝の光、最高のチームワークです。NHKさんとNYクルーの寛大なお心遣いに感謝です。https://t.co/IsZwiHVOnC pic.twitter.com/63aByLoFtS
ストーリーラインを一部解説すると、
1. 『満ちてゆく』のMVをベースにストーリーが展開
→藤井風が部屋で机に向かっているシーンからMVを想起させる。所謂セルフサンプリング*1の手法をとっている。
→MVの撮影地と今回のライブ中継地はNYで一致。メジャーデビュー前に武者修行した場所でもあり、最終的なゴール地点*2とも言える、エンターテイメントの世界中心地。2024年にUSツアーで訪れた地でもあり、最も敬愛するアーティスト・MJを輩出した地でもある。
→MVで子役として出演したAKIRA君が紅白にもキーキャラクターとして出演している。
MVにおいても象徴的なアイテムの一つである「マフラー」を彼に託す。そして最後に「ある花」を手向ける重要な役割を演じている。
2. 『満ちてゆく』の歌詞と連動する展開
この楽曲のコアメッセージ、それは「手を放す、軽くなる、満ちてゆく」である。それはライブMCでも繰り返し発する揺るぎない藤井風の信念とイコールでもある。
何度だって説明するが、藤井風という人はとにかく捨てる人。それは物を大切にしないとかではなく、物事に執着をしないということだ。過去の栄光や功績どころか、最も大切な思い出すらをも捨てて次のステージに進んでゆく。今回の演出においても冒頭から愛おしそうに眺めるアルバムをかばんに詰め、そして「手を放す」。
そして差し色として視覚的にも、MVの文脈的にも重要な「マフラー」をAKIRA君に差し出す箇所においては「何もないけれど全て差し出すよ」という歌詞と連動している。
そして愛の抱擁を交わし「手を放す、軽くなる、満ちてゆく」と歌い、二人は道を分つ。ここでも執着をしない。どうしたらこんな風に生きれるんだろうね、ほんと。
そして個人的に最も感動したのがここ。
「開け放つ胸の光 闇を照らし道を示す」の歌詞部分で本当に自然の太陽光が藤井風に差し込んでくるシーン。いいですか皆さん。これは遠く離れたNYで紅白とのライブ中継、ワンカット撮影中の映像なのです。1秒が成否を分ける世界で、丁度歌詞部分と的中させて光を捉えるなんて人間業ではないですよ、ガチで。
からの、「朝陽を反射するマンハッタンをバックに歌う藤井風」とかいう世界が撮りたい風No.1の映像ですよ。
ロケハン含め、ここまでどれだけの下準備を重ねたのか、その計算しつくされた演出努力に涙が出ますよもう。ダッチマジダッチ。
そしてきちんと開け放たれた光にしっかり照らされる藤井風の「持っている」としか言えない説明不可能奇妙奇天烈摩訶不思議な力。もう溜め息しか出ねえ。
3. 今までの藤井風文脈を踏まえた演出
紅白、今年で第75回だったらしいのですが歌唱後に死んでしまうアーティストは歴史上今までいないんですよね、それも2022年に続いて2回も。全国のお茶の間のお子ちゃま達の不安を取り除くためにしっかり解説しておきたいんだけど、そもそもこの『満ちてゆく』に関しては歌う哲学者藤井風の「死生観」を歌った楽曲でもあり、死をネガティブに捉えすぎないというのは彼の根本のテーマでもある。最後の最後にお空に帰るその刹那、悲しい気持ちになるのではなく、全て忘れ、手を放して帰ってゆく事を一貫して歌っているが故の演出であることを理解する必要がある。
そして8月に開催された日産スタジアムでの"Feelin' Good"でも『満ちてゆく』歌唱後に深い眠りにつくというファンからしたらショッキングでもあった演出を踏襲している。
見える、見えるぞ・・・墓が!!
加えて今回は「花」も手向けられている。
2023年にリリースされた『花』において「内なる花を咲かせる」ことを歌った彼に、死してようやくその花が咲いた。有識者によるとあの花は「ラナンキュラス」だそうで、「晴れやかな魅力」という花言葉を持ち、厳しく長い冬から暖かな春への移り変わりをイメージさせる花でもあるとのこと。*3
僕は藤井風と花で5万字の論文を書くことができますが、誰も読まんのでこれくらいにしておく。
最後にまとめると
1. 『満ちてゆく』のMVをベースにストーリーが展開
2. 『満ちてゆく』の歌詞と連動する展開
3. 今までの藤井風文脈を踏まえた演出
が丁寧に積み上げられており、ここに臨場感溢れるワンカット映像を成立させるための撮影技法とチームワークが結集。藤井風という憑依型役者による劇をこれ以上ないほど捉えている。個人的にはストリートミュージシャンに扮したバンドメンバーズも相当ツボ、特にDURAN兄は最高。
長々と説明してきたけど、まるで短編映画を観劇したかの如き感動すら覚える5分間を撮ったダッチ監督そしてスタッフ達、そしてその人生を紡いで魅せた藤井風に大きな大きな拍手を送りたい。
いかがだったろうか
本当は語りたい事は山ほどある。原曲のピアノによる弾き語り形式ではなく、2024年に更なる藤井風旋風を世界で巻き起こすきっかけ、"tiny desk concerts JAPAN"と同じDURANギターに合わせてスタートしたこと。しかも普段サポートギタリストとして参加しているB'zからの連携だったこと。バンドメンバーズがついに明かされ嬉しさもありつつヤフさんの頸椎がひたすら心配だったこと。やっぱり大サビで「全て差し出すよ今日」と歌い、あいも変わらず全てを差し出してくれたこと、ただただ人の幸せを願っていること。こう書いてるだけで目頭が熱くなるのを感じる。
激動の2024年をこのような最高の形で締め括ってくれて改めて感謝しかない。2025年は何が見れるのか楽しみすぎるね。今藤井風を追うことは間違いなく後世への自慢になるのでもう絶対に目を離さない方がよろし。特にこんなに長い文章を読んだみなさんなら尚更、ね。
それでは、お元気で。
(画像は全てYOUTUBEから引用しております。NHKに大感謝!)
宣伝1:過去の紅白について書いたやつ
宣伝2:ずっと語ってきたようなことを直接語りまくるトークライブイベントを福岡・大阪・東京で開催します。かじぇを2025もいっぱい愛でてゆきませう^o^
*1:自分の過去作品を引用して新たな展開を作り出すこと
*2:NYで求められる人材になることが藤井風の目指すところ
*3:https://www.hibiyakadan.com/lifestyle/z_0112/#:~:text=%E3%83%A9%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%82%B9%E5%85%A8%E4%BD%93%E3%81%AE%E8%8A%B1%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%AF%E3%80%81%E3%80%8C%E6%99%B4%E3%82%8C%E3%82%84%E3%81%8B%E3%81%AA%E9%AD%85%E5%8A%9B%E3%80%8D,%E3%80%8C%E8%8F%AF%E3%82%84%E3%81%8B%E3%81%AA%E9%AD%85%E5%8A%9B%E3%80%8D%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82