僕はレベル40

心が動いたことをかいていく

『花』MVを通して考える被写体としての藤井風、その死生観

このあおりショットでご飯10杯いける 

 

息を吞むどころじゃねぇ。息、がぶ吞みしすぎて3分呼吸止まってた。

風はとんでもないものを盗んでいきました。僕たちの心です。

どーも、最近配信が楽しくて文章にする前に大体満足しちゃってます、ことJ太郎です。よろしく。

 

MV。

なんてココロオドル響きなんだろうか。

Mega Volt…いや違う。

Market Value? そんなん最高のValueに決まってるわ!

そうですよ、Music Videoに決まってるんですよそんなもんは!!

藤井風 『花』MVが最高すぎたし、自分もようやく少し語れるレベルにまで現世に戻ってきたので、感想を書き殴りたい。

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『花』MV

2023年10月13日の楽曲リリースから1か月ちょいで放たれた『花』MV

リスナーが脳内でそれぞれの内なる花を咲きほこらせた頃、ちょうど勢いに薪をくべるようなタイミングでのMV投下。

いやー危ない危ない。もし同時だったら火ぃ強すぎて僕のHANA消し炭になるとこだったわ。

ひと昔前は初速でミリオン達成!!ってのが目指すべき売り方だったのが、ストリーミング時代においては「いかに長く聴き続けられるか」が重要な尺度となっている。

もはや音楽はコップ1杯の水より安い。全て定額でアクセスできてしまえる横並びの楽曲達の中、どうやって「多くの・影響力が強いプレイリストに入るか」あるいは「ラジオ局でかけ続けてもらえるのか」。そうやってアーティストの”Visibility”*1を持続できるかが問われる昨今の音楽業界。

『花』という時代を超えて愛される楽曲を作った当の風氏はもちろんのこと、知恵を絞って決めたプランを実行したチーム風にも拍手を送りたい。

被写体としての藤井風

何度でも言う。藤井風MVがズルいのは藤井風を起用できるってこと。流石にズルいは語弊があるが、これは何も彼がGood Looking Guyであることとかそういうレベルの話やない。

かっこいい、美しい、可愛い、見ていてとろけちゃうレベルのルックと双翼の「高いアーティシズム」、そして「歌うテーマ」こそ彼の真価だと思っている。目線、所作、体のキレ。彼の哲学を視覚的に表現するための身体性こそが今までのMV監督たち、とりわけ今作を監督したMESS監督が最も強調している点だと感じた。

MESS監督

Fujii Kaze instagramより
Beauty & the Beast感が凄い。どっちもかっけー!

MESSY、失礼ながら相当大御所やと思ってたら違った。年下やんけ!?

髭の密度が凄すぎる。何食べたらこんなに生えるワケ??このレベルまでいってこそオフィシャルなHIGEダンディズムなんではなかろうか。

で、この機会にアクセスできるMESS監督作品とインタビューは全部見た。

こちらから一部観られるのでぜひ。

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やはり「色・光の使い方」は特徴的でかなりギラッギラなものも多い。

こちら、今のHIPHOP戦隊を組むならこの四人になるよね、というゴージャスな面子にふさわしいThis is flex!なMV。目が痛いです。

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MESS監督自身が元々HIPHOP畑出身であり、LEXやJP THE WAVYといった気鋭のラッパーのMVを撮影していた経緯もあり、今にして思えば藤井風作品で最もHIPHOPな『Workin’ Hard』を担当したのは偶然ではない。

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あと知らなかったんだけどimaseの『NIGHT DANCER』もMESS作品なのね。既に1億5000万再生とかいう意味わからない再生数をたたき出してるのでぜひ。夜に駆け出したくなるMV。


被写体としての藤井風、その死生観

で、本題。

そうです、『花』MVが何を表現したかったのか。そして被写体が藤井風でなければならない理由。

リリース前は『ガーデン』的なほっこりMVかなぁと妄想していたら大間違い。『花』MVにおいては藤井風というアーティストがもつ「死生観」が色濃く表れた作品になっている。のっけから枯れた木が映り、棺桶引きずるMVもそうないよね。

MV冒頭。知ってる?大事な事って最初に言うんだよ

楽曲の最初の歌詞は「枯れてゆく」だしこの対応を意図したのはほぼ間違いない。当たり前のようで意識していないが、僕らは生まれた瞬間から「生きている」と同時に「枯れてゆく」のだ。「死んでゆく」と言い換えてもいい。

MV字幕にも"It’s dying"とあるのも重要なポイントで"dying"と"living"は反対のようで同時の出来事とも言える。

好きなアーティストの死に様を見せられるのだから相当ショッキングな絵面なのは間違いない。しかし、藤井風にとって死は生と等価である。だからそんなに悲しまなくてもいい。これは決して死を軽視しているということではないし、もっと複合的な意味合いをはらんでいる。「物理的な死」の他に、昨日の自分にバイバイして新しい自分に生まれ変わる、そうして理想的な自分に近づいてゆくという脱皮的な意味もあると解釈している。

初めてMV観た際のインスピレーションで「死」で連想するワードが「墓」だったこともあり、「何度も何度も墓まで行って、何度も何度もその手合わして」高いとこまで行こうとする姿勢そのものが「転生」を意味しているのかな?とか頭グルグルしてたり。初聴時まったく意味がわからなかった『やば。』と繋がってまた解釈が広がった。

軽やかな風に乗って

『花』MVを通して生、死という生物の根幹に関わるテーマを扱っているにも関わらず軽やかで前向きなエネルギーに溢れているのは特筆すべき点だ。シリアスにしようと思えばいくらでもそう演出できてしまう。冒頭に人をさめざめと泣かせたりとかね。でもMESS監督はそうしなかった。テーマを深く理解しチームをコントロールした監督と、藤井風の表現力を最大限にまで高めた衣装・ヘアメイク・演出セットといったチーム風全体の功績の大きさは疑いようがない。まぁ本人の自然体で正に「風」のような人間性が軽やかさの根っこな気もするけどね。

必要以上に死を恐れない、あるがままのその姿勢が本MVの語るべきテーマに説得力を与えている。これも被写体が藤井風でなければならない理由の一つ。

遺影で楽しくなる経験は生まれて初めて!表情の変化が好き

いかがだったろうか

僕らは歳を取るし今この瞬間にも枯れてゆく。でもたった一つだけ枯れない花があるとすれば、それは僕らの「内なる花=the flower inside of me」。身体はしわしわに萎れようとも心だけは凛としていたいし、高みに上り詰めようとする藤井風の黄金の精神に倣って生きていきたいもんだね。

MVにおける被写体としてのビジュが最強過ぎることに異論はない。

それ以上に重要なのはふとした仕草や目線の動かし方、キレのある踊りといった、楽曲のテーマを表現できるかどうか。僕が芯から藤井風をアーティストだと思う理由はここにある。この表現力を携えた最強の被写体を生かすも殺すもディレクション次第。きっと風氏を撮るMV監督は楽しいけど大変だ。

あと、自分の思考がまだまとまっていないので深堀しなかったが、MVにおける黒風様は「死神」なのかな、とも思った。ゴスで儚げなルックに「棺桶を引く=死を導く」であるとか遺影の中から笑いかけてくる、ハリーポッターも真っ青な演出は、どうしても死が呼びかけてくる様を想起させるのよね。MVにおける対比の意味はまだ考え中だけどいつかまとまったらどこかでお話したい。

今回上がり過ぎたハードル。いつもながら超えれるんかコレ!?とも思うし簡単に超えちゃいそうな気もするね。

 

それでは、お元気で

 

花 (EP)

花 (EP)

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*1:ブランドマネジメントの一つの指標。今回の意味は意図せずとも藤井風の花にたどり着く度合い、のような意味。

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