P様ことPUNPEEが王様・KREVAを連れてほんっとに上質で贅沢な楽曲をドロップ。
色々と語っていきたい。
楽曲について
PUNPEEがインスタライブで「絶対にこの方は避けては通れない」と語るほど、強いリスペクトを表明する日本語ラップ界のK-ing、KREVA。クレ様もコラボしたいのはPUNPEEとKOHHと明言してたし、もうこれは遅かれ早かれ来る運命だったってことですな。
そりゃあ相思相愛で気合も入りますわってな具合に実現したこのコラボレーション。
そんな気概に相応しい楽曲、この一言に尽きる・・・
「待ってました!」
サンプリング
PUNPEEもKREVAも「サンプリング」というHIPHOPの重要な作曲手法 によってトラックを作り、そこにラップを乗せることで曲を完成させ、名曲を生み出してきた二人だ。
音楽におけるサンプリング(英: sampling)は、過去の曲や音源の一部を引用し、再構築して新たな楽曲を製作する音楽製作法・表現技法のこと。または楽器音や自然界の音をサンプラーで録音し、楽曲の中に組み入れることである。
Wikipediaのサンプリングより引用
ざっくり説明すると曲の美味しい部分をループ(繰り返)して、そこにHIPHOPのドラムビートを打つ事により曲を再構築するということ。
そしてそれを可能にするマシンこそが、「サンプラー」の「MPC」という機材だ。
ちなみに「サンプラー」は製品名、「MPC」は商品名な。(「携帯電話」の「iPhone」みたいなもん)
どんな具合かはこちらの動画は非常に分かりやすいのでオススメ。
ちょっとタルい元曲がすごく洗練された印象になってヒップホップの楽曲に再構築されたのがわかると思う。
そして主役の二人の分かりやすい楽曲としては加山雄三の例の名曲をサンプリングした「お嫁においで 2015」とかモーツァルトを大胆に使った「国民的行事」なんかがある。
(サムネ鬼ダサイな)
前置きが長くなったが、今回の『夢追い人』は"Pharoah Sanders" の"Farah"をサンプリングしている。ド頭から熱いサックスが飛び込んでくる。スローな曲だけどすごい熱量。
この曲は今のローファイヒップホップ潮流の祖とも言える、故Nujabesが愛した曲。そして那覇のラッパーRITTOが元々サンプリングしていた曲でもある。
渋い、熱い、デカイ!(語彙力)って感じやな。
『夢追い人』はこの曲よりもう少しサックスの鳴りを控えめにして、他の音やシャウトを加えている。PUNPEEもこの曲の存在を知りつつも、同じネタを使ってるだけにきっと差別化を試みたに違いない。
サンプリングはパクリと再構築の紙一重で成り立ってる部分があって、権利関係が特に難しい。クレ様の昔のインタビューで、著作権許諾の問題でサンプリングではなくシンセベースで曲を作るという話があった。特に2010年以降は"KILA KILA"なんかに代表されるネクストフェーズに入った経緯もある。
瞬間speechless至上主義の僕としては寂しくもあったが、2020年に垂涎のコラボで過去のクラシック(名曲という意味ね)をサンプリングしたトラックにPUNPEEとKREVAのラップが乗る。この意味たるや。トラップの楽曲が今のメインストリートっていうのはわかってるし、良さもアガル事もわかった上でやっぱりこの上質で贅沢な時間は代えがたいですよこれは。
パンチライン多すぎ問題
パンチラインとはその名の通り、喰らっちゃう、やられちゃうほど印象的なキーフレーズの事。
PUNPEE
まずはP様。公式に出てないので、聴きとれた分で語る。
いつもの抜きや喉にひっかけるフローでラップしつつ、タイトルの夢追人を回収。
いまだ君は夢中に夢の中 いま僕は醒めない夢の中
うわの空 ほらいつも下書きは無いまま 夢描いてた描かれたくてさ
そして何しろこのフレーズ。
悪いが太鼓持ちに叩かすドラムは無い
信じたもの崩れ去って 過去を責めてんじゃなくて今を攻める
得も言われぬ気持ちはエモいじゃない このシーケンス止まらない
ほんっとに最高すぎる。
「太鼓持ちに叩かすドラムは無い」 、「過去を責めてんじゃなくて今を攻める」
そして今回の最強の一節、「得も言われぬ気持ちはエモいじゃない」。
もう一回言います。
「得も言われぬ気持ちはエモいじゃない」
これをパンチラインと言わずしてなんという!
当然eoiで踏みつつ、曖昧で便利に使われがちな感動に使われる「エモい」をちょっと批判するあたり、至高です。これこそが僕の好きなヒップホップ。
そしてフック(ヒップホップのサビ)!
最近の彼のフックは以前にも増してそのメロディセンスに磨きがかかってる。この曲のはもうPUNPEEジルシと言ってもいいくらい気持ちいい。
サビの着地の「
KREVA
そして何より瞬間Speechlessオマージュの「ウォーウーウォー 」の後、王様登場。
リリース最初はfeat KREVAの文字は公開されてなくって、見た人だけがわかる仕組みになるというニクイ演出。見た人みんなこの顔になる、よーできたMV↓
夢に夢見てる 常に上見てる いけるに千点賭ける 現時点2020年代 いつまでも挑戦してる自分でいたい
「千点掛ける現時点2020年代」の気持ちよさは異常。enで踏みまくる。
ここも痺れるライン。四半世紀と未完成品で全踏みしつつ、意味もきちんと通す。
MPC買ってから四半世紀 でもマインドは未だに未完成品
今だどっからか聞こえるだっさいドラム そういうやつらの退路をばっさりと断つ
このラインはPUNPEEの太鼓持ちに叩かす「太鼓持ちに叩かすドラムは無い」と対応してる。「断つ」という表現を「切る」にしなかったのはもちろん「ドラム」と「と断つ」で踏むため。地味だけど、「名詞」と「助詞+動詞」で踏むのは上級ですぜ。
Shut Shut'em down ベラベラ喋るな そんな時間があったらまだやれるはず こっちはとっくに到達Lv.908
いかがだったろうか
好きすぎて長くなったが、本当はMVの小ネタとかも色々語るべき部分があるので、ぜひ探してみてほしい。キックとクレ様のネタに溢れてる。
「ヴァイタライザー」のジャケットや「キャラメルポップコーン」に「ISSAI GASSAI」と書かれてたり、最後に出てくる時計が9時08分だったり。これは愛だよ。素敵。
この二人の最強で最高なコラボ曲はPUNPEEのNEW EP、"The Sofakingdom"に収録されているので流れでもぜひチェックしてみてほしい。
それではアデュー。