Documentary film
12月2日(水)リリースの新アルバム"SOUNDTRACKS"の発売を目前に、ミスチルがラストスパートをかけている。
ついこの間MVを公開した『Brand new planet』からひと月立たずしての新曲、『Documentary film』のMVをまず観て欲しい。
King GnuやTempalay等のMVを手掛ける、信頼と実績のPERIMETRON印。いやー、Mr.Children×PERIMETRONのコラボを見れる日が来るとはね。良いこともあるもんだ。
OSRIN監督がディレクションを務めた今作は『Brand new planet』のMVとは対照的にこの曲を主題にしたショートムービー演出になってる。ミスチルのMVでは4人でバンドサウンドを奏でる、所謂「本人演奏型MV」がほとんどで、「ショートムービー型MV」の数は少ない。最近では『himawari』、遡ると『くるみ』とか『君が好き』とか、割とバラード曲に多い演出。むしろライブの開演前・アルバム曲中・転換にアニメや映像を入れる事によって、ライブ全体に意味を持たせることの方が多い。
まぁ何にせよ、「今奏でるべき音に伝えるべきメッセージを特別な映像に込める」っていうスタンスは一貫してる。
さて、内容
すごくざっくりと話をまとめると、
「全てを覚えてしまい、記憶の海に溺れる少女を、記憶が一日しか持続せず、日記を見る事によって自我を保つ少年。毎日を日記に記し、正にDocumentary filmのように綴る事で悲しい過去の記憶よりも楽しい記憶を増やす事で少女を救う」、そんなお話。
クレジットから、少女の名前は"YO"、少年の名前は"GIN"である事がわかる。
記憶が持続しない「前向性健忘」という事で思い出すのは、ダークナイトシリーズでお馴染みのクリストファー・ノーラン監督の初期出世作、"Memento"だ。Mr. Childrenとしても『花─Memento-Mori─』をリリースしている事からその繋がりから着想を得ているのかもしれないね。
MVは必要な情報以外全て削ぎ落とされていて、この病気が生まれつきなのか、家族はいるのか、何食って生きてんのか、そのQのジャケットっぽいヘルメットは何なのか?部屋お洒落過ぎ!!とかそんな情報の説明は一切ない。わかるのは、YOが昔犬と暮らしていた事や二人で「ある大樹」を探しに行こうとしている、くらい。
特に好きな場面は2つ。GINが綴るメモ帳に「悲しいことに追われないのはラッキーかもし(れ)ないよ」と、自分の現状をポジティブに見つめ、曲と呼応してるところと、ラスト。YOがGINの生きた証とも言えるこのメモ帳に『Documentary film』と題されているのを見た後の救われた表情。不安定な少年だからこそ、この悲しみに囚われた少女救い出す事ができるという希望が確信に変わる瞬間を満ちた切り取った映像。ここも歌詞としっかり連動している。好き!
誰の目にも触れないドキュメンタリーフィルムを
今日も独り回し続ける 君の笑顔を繋ぎながら
きっと隠しきれない僕の心を映すだろう
君が笑うと 愛おしくて 泣きそうな僕を
曲について
サビが弱い
※2020年12月22日追記。
アルバム『SOUNDTRACKS』を30周くらい聴きこんだ結論として、このシンプルな構成とサビはあえてのものだと理解いたしやした。
と、いうのもアルバムの05. 『losstime』からの流れで聴くと驚くほどすんなり曲が入ってくるどころか、このメロディでないと逆に違和感が出る事に気づいたのでした・・・つまりアルバムを一作品としてみた時の正に「木の幹」とも言えるのがこの曲なんだなと。作品の流れと完成度で物を語るべきでした。
今では01. 『DANCING SHOES』と双璧で好きなのがこの『Documentary film』。全てはミスチルというお釈迦様の掌の上でしたとさ。
正直に言おう。既存曲に比べてサビのパンチが弱い。Signやしるし、Tomorrow Never Knowsのドラマティックさからしたら、かなり印象薄いというのが初聴き時の印象だ。
曲の構成がAメロ1→Aメロ2→サビ1→Aメロ3→Aメロ4→サビ2→間奏→ラスサビというシンプルなメロディ構成で転調もしない。途中リズム隊が抜け、鍵盤と桜井さんのボーカルのみになる展開なんかで変化を付けてるんだけど、もうちょっとメリハリ利かせて欲しい。ストリングスもガッツリ鳴ってるし、間違いなくミスチルサウンドではあるものの、あんまり驚きがなかった。
ただ、薄味なせいもありMVの邪魔をしないというか、ある意味"SOUNDTRACK"的に映像に集中できたので、これもあり?と思ったりもする。1ヶ月経てばスルメになってるかもしれないので、期待してる。
歌詞
歌詞は僕の聴き方もあるんだろうけど、どうしても世相を反映させたフレーズが散りばめられている。
ある時は悲しみが多くのものを奪い去っても
次のシーンを笑って迎えるための演出だって思えばいい
「マイナスからプラスへ」、「高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんだ」というミスチル節とも言えるポジティブなメッセージなんだけどそういう曲は今世の中に溢れているし、『Brand new planet』がそっちに振り切っていたんだから逆に純度100%の恋愛曲聴きたいなぁというのが素直な気持ち。『抱きしめたい』とか『365日』を欲しています。僕は。
色々言ったけど、いつも通りアルバム買って歌詞カード眺めながらあれこれ思いを馳せていきたい。
超楽しみにしてる。