僕はレベル40

心が動いたことをかいていく

全てはかわいく愛おしい。藤井風の『花』考察 with 『青春病』&『ガーデン』

 

2023年10月13日。また僕らの生活を彩る名曲が咲いた。

そうです、藤井風の新曲『』がめでたくリリースされました。

 

結論から言うとめっちゃめちゃ好きです。もう中毒性という言葉ではとても足んないくらいエンドレスリピート&リピート。僕のポップDNAがビンッビンに反応してやがる。逆らい難い好きな匂いすぎるっ!完全に団子より『花』。

もうこれ以上でも以下でもないんだけど今日も色んな角度から語っていきたい。

ドラマ観た??

言わずもがな、『花』を主題歌とした今期の木10ドラマ「いちばんすきな花」、ね。

本作は、4人の俳優が主演を務める「クアトロ主演」ドラマで、「男女の間に友情は成立するのか」をテーマに、違う人生を歩んできた4人の男女が紡ぎ出す「友情」と「恋愛」、そしてそこで生まれるそのどちらとも違う「感情」を描く

いちばんすきな花 - フジテレビ

クアトロ…僕クアトロフォルマッジくらいしか馴染みありゃせんけど、要するに四人全員が主演の群像劇であり、四者四様の生き方が交差するストーリーだよと。

 

多部未華子(ゆくえ)、松下洸平(椿)、今田美桜(夜々)、神尾楓珠(紅葉)という旬の俳優が演じるこの主人公達。自分、多部ちゃんとだったら友情が成立する気が1ミリもしません!!

1話の段階ではまだ導入も導入。まだ面白いかは判断しかねるが、クスっとくるやり取りや様々な伏線や設定が張り巡らされる仕掛けが巧妙やなぁと期待感を持った。

例えば夜々が渡したクーポン券がゴミ箱に捨てられていたのに気づいた描写があったが、これも椿の「二回目が苦手」という性格を描写した上での場面として繋がっているし、こういう場面の積み重ねが緻密な考察をに足る物語を作ると思うので、後から見返して「おぉぉ~っ!」となるドラマになりそう。

めっちゃ巧いと思うのはこの複数主演という形式が正に四者四様の「二人組になれなさ」を演じるので多くの視聴者が「これワイやんけ…」と自分事として感情移入できるドラマになっていること。一方で登場人物も多くなるし場面の切り替わりが散漫になりがちなので、この辺りどう舵を切るかも超楽しみ。

あと、自分がドラマを観る上で一番大事にしてるのってアイツらに会いたい!!アイツらの在る世界に浸っていたいと思うかどうかなんですよね。なのでこのクアトロケミストリーが起きまくることを期待してる。

 

そしてそしてぇ!!主題歌の活かし方ですよ、えぇ。

上述のように僕は特に「脚本」を重要視してるんだけど、同じくらい「演出」も大切と思ってる。特に主題歌をどう聴かせるかってのは古来から超重要じゃないですか。

そういう意味であたしゃシビれましたよ、その主題歌使いに。ドラマのオープニングでもエンディングではなく、シーンとして一番盛り上がる、主演四人がテーブルを囲む場面での主題歌使いはかなりアガったよね。

風さん本人も脚本を読んで作曲したとのことだが、ほんとドラマが先か主題歌が先かくらい密接に関わる楽曲になりそうなので、ここも来週以降のお楽しみやね。

新曲、『花』

と、つらつらと語ってきた「いちばんすきな花」のタイアップとして書き下ろされたというのが最大のポイントなのは間違いないが、藤井風のメッセージが変化していることはなく、むしろまっすぐに核心を突くものになっている

曲について                                                       

はい、また裏切られました。ヒップホップを前面に押し出した『Workin’ Hard』の次の一手がなんとド直球のポップスに仕上げてきた。てっきり世界を照準に入れたヒップホップ風モードと思っていたので、そのド直球が逆に新鮮。なんていうか、裏の裏が表的なね、そんな感じ。(伝われ

藤井風の妖しげな低音と鬼のリズム感、ラッパーとしてのフロウという強みを一旦置いて日常にじんわりと溶けていくような優しい声とメロディが印象的なこの楽曲なんだけど、なんだこれ一生聴いてられて困る。ほんとこのループから抜けられない。

で、サビ聴いてるだけでもわかったんだが、やはりプロデューサーには触れざるを得ない。そうなんすよ、大好きなYaffleさんプロデュースではない…寂しいけど…もはや風さんは世界と音楽を作っとるのね。色々と試行錯誤しながら己の可能性を広げてる。こだわってたのは僕の方、こだわらせるな罰当たりがってとこ、か。でも寂しいんすよ泣

で、今作はA・G・クック氏がプロデューサーとして関わっている。

A・G・クック(英語:A.G. Cook、本名:アレクサンダー・ガイ・クック Alexander Guy Cook、1990年8月23日 - )は、イギリス・ロンドンを拠点とする音楽プロデューサー、シンガーソングライター。

~中略~

クックはまた、2010年代に勃興した新興ジャンル「ハイパーポップ」の源流に前述の「バブルガムベース」があることから、ハイパーポップの始祖としても知られている

日本での知名度で言うならば宇多田ヒカル氏の『One Last Kiss』以降、共同Pを務めているってところか。ハイパーポップ自体は聴いたことがあったんだが、イマイチ乗れなかったので、その源流まで辿ろうと思ってなかったけど、よい機会なのでもっかい触れてみようかな。(彼の詳細はコチラから)

インスタによれば2022年春には交流がスタートしてたっぽいし、関係を温めながら機会を伺ってたのかもね。

Fujii Kaze instagramより(左端のジョン・レノンみ溢れる彼)

そして肝心の音像としては風さんが作曲したGood melodyをこれまたまっすぐシンプルに活かすアレンジ。イントロから印象的なベースはむしろポップスというよりかはボッサやラテンを感じるが、とにかくキャッチーさと風声の良さが引き立つ。ドラムを打ち込みじゃなく人力にしてるのも、温かみや往年の70'sな洋ポップ要素を感じる理由なのかも。

こちら、The Doobie BrothersのWhat A Fool Believesの藤井風カバー。BPMもほぼ同で、『花』に綺麗にDJで繋げられそうなくらい。このあたりの引き出しを使ってるのかな。

www.youtube.com

あと、これは教えてもらったんだけどTodd Rundgrenあたりにも影響を受けていそうな音作り。

そしてそして、今作の肝である藤井風の。今作の声は息多めのハーフボイスから入る。もはや宇宙的なナニカをまとってるんじゃないかぐらい癒されるし疲れが取れるね。もはや温泉です!聴く温泉。

とは言いつつも、実はこれまた様々なKUFUこと工夫が随所に凝らされている。楽曲の構造がシンプルだからこそ、細かい語尾のフェイクフレーズに変化をつけたり多重的なサビのコーラスワークも勿論そう。

みんな大好き「全ては一つ」の後の「Aye!」という声でフレーズに緩急をつけてるとことかね。これ、なくても曲は成立するんですけどね、絶対要るわ!!ってなるのよね。

あと、僕は「サビの1番はファルセットで抜くけどラスサビは地声で通すヤツ大好き倶楽部」の部長やっとりましてね。この楽曲もサビの音圧がグッと強くなって盛り上がって終わるのはそういうヴォーカルテクニックを駆使された結果な訳ですね。ハオ。

歌詞について

やば。また長すぎて流し読みされてまう!!その下フリックストップ!!スロウダウンベイベ。でも泣く泣く削りまくってこの分量ですからね。語るべき要素多すぎてマジ無理なんです、いつもながら。

前作『Workin’ Hard』もキラーフレーズばっかだったが、『花』は、さらにまっすぐピュア、それでいて心に残る詩に溢れてる。なにせ、1バース目ののっけから「枯れていく」だ。この地球上に枯れるで始まるドラマ主題歌があったろうか。否。

そしてサビは「しわしわに萎れた」だと…!?「咲き誇る」とかさー、そんなワードチョイスですよ普通は。このチョイスもこれも単語の持つ響きを重視しているに違いなくって、「しわしわ」、「こわ」き、「かわ」らぬといった「WA」の響きがサビで流れるのが最高に口気持ちいっていう理由もあるだろうし、一見ネガティブなワードと見せかけつつ、物事は移り変わるし儚いもの、だからこそ尊いという強い意志表明でもあると思う。ブリッジの「みんな儚い」し「みんな尊い」ってのは上っ面じゃないのよ。

あと、「誰を生きようかな」も相当に深い。自分が模倣すべき憧れの誰かを追いかけてるのか、あるいは「誰を生きようかな」と悩みつつも誰を模倣しようと自分自身であることには変わらないという意味合いなのか…この辺りは解釈次第!!

あと、「やむを得ず祈りを込めていく」という表現も新しいね。自分の言葉で解釈するとお祈りが必要な状況ってやむを得ない、自分の力だけではなんともならない状況だしね。そんな時だからこそ「神様力を頂戴」と祈るのかもしれない。奇しくも中東で激しい争いが起こる中、何もできない、やむを得ない状況と重ねてしまったりもする。


 

で、個人的にいちばんすきな歌詞は「全てがかわいく思えるさ」です。風さんがいつもライブで「かわいい…」と漏らしてるし、この単語の響きとか意味とか好きなんかなとも思う。「かわいい」を漢字にすると「可愛い」という「愛」が顔を出すのも関係するんかも?と思ってる。

だからCUTEという意味だけではなく「全てを愛せるさ」っていうダブルミーニングになってるっていうのも考えうる。あー妄想楽しっ!!

あと、コチラには英訳歌詞が掲載されているので、深いとこまで潜りたい人はぜひどうぞ。僕は潜り中です。

過去曲との関連性

あと、過去曲との関連性についても注目したい。

『花』の歌詞を解釈する中で強く思ったのがまず『青春病』だ。

永遠に変わらぬ輝き」は『青春病』における「永遠の光を見ないで」の光と一致している可能性がある。

楽曲のテーマとしても花が咲いている状態を人における「青春」と考えるとするならば、「いつかは粉になって散る」のも枯れてしまうことだって万物が避けられない事実。種の時もあればしおれる時もあるわよと。書きながらグッときて泣いてしまいそうな切なさなんだけど、だからこそその儚さを思い、理解し、この瞬間を大切に生きていくしかないよねという宣言にすら思える。

あと、『ガーデン』とも関係してると思うんだよなぁ。

花は咲いては枯れ あなたに心奪われ

それでも守り続けたくて 私のガーデン 果てるまで

藤井風/ ガーデン

花繋がりというのはもちろんあるんだが、咲いては枯れという輪廻の理についてサビで強調する点も一致している。そして大事なのは「ガーデン」って何やねんってとこ。

今のところの解釈としては「私のガーデン」というのは自分という人間そのもの、あるいは命のことであり、その人生というお庭に「内なる花」を咲かせよう=ハイヤーセルフと出会い心を満たそうって意味だと思うんだけどね。

藤井風はこの朽ちることのない黄金の精神とでも呼ぶべきハイヤーセルフに一歩ずつでも近づいていってる、迷いながら、惑いながら。きっと。

いかがだったろうか

新曲のこと書いてる時が一番楽しいかも。ライブレポートも超良い勝負なんだけどね。

なんていうか、この世に存在しなかったものが生まれる瞬間、咲く瞬間に立ち会い、その美しさを愛でるって感覚がどうにも好きです。

 

難しい言葉もメロディも使わない、それでもここまで人の心の奥底まで響かせる藤井風、『花』。僕たちの日常を豊かに彩ってくれるマスターピースが、また咲いた。大切に聴いていく。

 

それでは、お元気で。

 

 

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