藤井風の唯一無二性に彼の書く「歌詞世界」がある.。
のっけから言うのもなんだが、藤井風の書く歌詞は所謂トレンドな歌詞ではない。
一回読んだだけじゃ何やらよく分からないし、読み込んだところで結局男女の色恋の話でもない。
だけれども、彼にしか書く事ができない、彼の歌でしか響かない世界観が存在している。
新規公開されたMVを主軸に色々と考察していきたい。
MV
色気。
色気。
色気。
気づいたら3行も色気って書いてたわ。そんくらい「スタイリング」が最高だしセクシー。
リーゼントにフリルシャツのコンビネーションが醸す色気にもはや我々がどうすりゃいい\(^o^)/状態。
画面越しにも伝わる圧倒的オーラ。人間オーラの泉。僕が女子だったら鼻血5ℓPC画面にぶちまけてたわ。リーゼントがセクシーな男圧倒的1位にArctic Monkeysのフロントマン、Alex Turnerがいたんですがそれに並びましたね、ええ。
と、まだまだ溢れる魅力についてキャーキャー語りたいところだが、このMVは重要な描写が多いのでそこについて触れる。
曲のテーマと演出
今作で、特に重要だと思っている演出が以下5つ。
①鏡を見る
②『帰ろう』、『きらり』、『燃えよ』が挿入される
③一人(+黒子)で踊る
④景色がスタジアムに変わる
⑤うんこ踏みからの変顔
①~③は「もがいて自分を見つめなおして、その上で愛していく」というこの曲のテーマを正に演出していると思っている。
ここで一旦歌詞に立ち戻る。Earth, Wind & FireのLet's Grooveを彷彿とさせるベースとキャッチーでライブで盛り上がる事間違い無しなアレンジの割に、歌詞が相当ネガティブだ。
だんだんバカになったこのおれどうすりゃいいどうすればいい
あぁ幸せってどんなだったけな
どけ そこどけおれが通るやめ
それやめ むしず走るだめもうだめぜんぶ終る
全て流すつもりだったのにどうした?
何もかも捨ててくと決めてどうした?
明日なんか来ると思わずにどうした?
曲調と歌詞のギャップに面白みがある。前も書いたが、「言うは易く行うは難し」的な壁に本人ブチ当たっていた時期があるのかなと思っていて、達観し悟りの境地に辿り着いたような彼もまだ20代。「こんな事歌っとんのにワシ全然やな・・・」とそりゃあ思うでしょうよ。
Listening Partyにおいて本人が
好きになったり、こじらせたり、もがいたり、自虐したりしてるけど、結局はまず自分で自分を愛していかんとね。
セルフラブソングとでも言いましょう。
とセルフライナーノーツしていたが、誰かを追い求めていく恋愛の曲と思わせつつ、実はこの曲も本来の自分に気づき、「ハイヤーセルフ*1」と対峙し自己を愛するという楽曲である事がわかる。
愛してくこの先ずっと
守ってく明日もずっと
i love me, and i will keep him in a safest fairest happiest place baby
最後ポジティブになって曲調と波形が合いながら終局する。これぞカタルシス。
上のフレーズがセルフラブソングを象徴していて、"me"ってのが当然自分自身、そして"him"っていうのが「ハイヤーセルフ」、あるいは「神様(目に見えない大きな何か)」かと今は解釈している。
藤井風の書く詞が他のアーティストのそれと何が違うかって一見して恋愛ソングの皮を被りつつ、本質的には全て自分自身のために歌う内省的な歌であるって事なんですよね。
特にこの『damn』はその色が濃くって、
①鏡を見る⇒自分自身を見つめる
②『帰ろう』、『きらり』、『燃えよ』が挿入される⇒言わずもがな過去の自分への言及と内省
③一人で踊る⇒ハイヤーセルフと向き合うのは結局自分自身だけである
と解釈している。
『きらり』や『燃えよ』なんかでダンサー達とあれだけ迫力ある共演をしていたのに今作一人きりなのは『damn』だからこその演出。流石は山田健人監督、風ストーリーをよく練り込んでいらっしゃる、天晴。
だいたい、自分を省みて自己言及の曲を作るのは20年選手ですよ、普通。そこをたった2年で総括するなんて、普通の人の10倍濃縮な人生を送ってるわ、風。精神と時の部屋に住んでる可能性がある。
「④景色がスタジアムに変わる」についてはもはや多くは語るまい。パナスタでのLASAまつりがどれだけ重要な位置づけかをMVで表してきた。ライブ当日を想像するだけで不眠症になりそう。
そして、⑤ラストのdamnのタイトルを回収するうんこ踏みからの変顔ね。
茶目っ気ってレベルじゃなくもはやこっちが本性では無いかと毎回疑ってしまうが、damnには「台無しにする」とか「ダメにする」というニュアンスもあるのでこれだけかっこよかったMVを"damn"にしてやる、みたいな意図があってタイトル回収していると予想。ハメもばっちり。言うまでもなく"damn"=くそ=うんこでオチというくだらなさでMVは〆。
『死ぬのがいいわ』が世界でバズっている中、あえて正反対の曲調を打ち出す戦略。藤井風というアーティストの幅広さがまた伝わりそうでファンとしては嬉しい。
いかがだったろうか
トレンドセッターという言葉がある。流行をいち早く取り入れる、あるいは一歩先をゆく人という意味だ。
冒頭、藤井風の歌詞はトレンドではないと言い切ったが、彼はトレンドセッターなんて言葉には到底収まりきらない。むしろゲームチェンジャーとでもいうべき、業界やポップミュージックの流れを変えてしまうかのような可能性すらある。
これからもdamn(ヤバくて)でdamn(アホ)でdamn(最高)な藤井風を応援していきたい。
新曲、『grace』も出るしね!
それでは今日はこの辺でアディオス。
*1:『何なんw』に代表される藤井風楽曲頻出の精神性のこと