タイトル付けはいつも迷う。
最初「風とLizzoのただならぬ関係」と打ってから一時保存したけど、しょーもない週刊誌の釣りタイトルみたいでやめた。この2人のpositive vibesを下世話にしたくないしね。
Lizzo?でピンと来ない人もいると思うけど、藤井風Liveの「開演直前SE」になっているアガルあの曲と言えばわかるだろうか。音源で言うと青春病EPで初出、Love All Cover Allにも収録されている『Good As Hell』を歌うアーティストだ。
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サウンド/マインド面でも藤井風ににただならぬ影響を与えている彼女。7月リリースのフルアルバムがめちゃ良かったこともあり、色々と掘り下げていきたくなった。
Who is Lizzo?
デトロイト生まれ、ヒューストン育ち。
ウーマン・エンパワーメントで社会を動かすポップ・スター、Lizzo。
グラミー賞を3回受賞したシンガー、ソングライター、ラッパー、女優など、さまざまな顔を持つLizzoは、ポップ・ミュージックのサウンド、文化、スピリットに変革をもたらしてきた。2019年にリリースされたRIAAプラチナ認定デビュー・アルバム『CUZ I LOVE YOU』は、ビルボード200で4位を獲得し、プラチナ認定の「Tempo (Feat. Missy Elliott)」、プラチナ2冠の「Juice」、プラチナ4冠の「Good As Hell」 、プラチナ7冠の「Truth Hurts」など歴史的ヒットに支えられながら、その地位を確立。
プロフィールにもあるようにシンガーでありラッパーでもあるっていうところが1つ目のポイント。90年代くらいまではラッパーが歌うとか踊るとかダセェからやめろという風潮があり揶揄の対象だったんですよね。シンガーは客演で呼ぶものだった。
しかしDrakeという「ラッパーも歌って良い」でUSミュージックを根底から覆したゲームチェンジャー以降、むしろ本人歌わないの?くらいの状況で歌もラップも両方やるハイブリッドなアーティストがガンガン出てきた。
そうしてラッパーとシンガーの境界線が薄くなってきた2010年代に、Nicki MinajとCardi Bという2人のメガヒットラッパー/シンガーが生まれる。2人ともリリック的にもヴィジュアル的にも所謂セックスアイコンとして売り出され、Fワードを乱発しつつ「私がどんだけイケてる女なのか」を歌い、セールス的にもチャートを席巻した事は記憶に新しい。
で、その2人の次、正に今の時代に取り上げられるべきネクストフェーズ・アーティストこそがLizzoというのが自分の認識。2つ目のポイントでもあるんだが、リリックの内容やインタビューやSNSでの受け答えが先に挙げた2人のラッパーと明確に異なっている。
Lizzoと風
単純にすごいアガル曲というか。とにかくLizzoがライブでこの曲を歌ってる時の姿がものすごいupliftingでpowerfulでinspiringな、みんなをインスパイアさせちゃうようなすごいパワーを感じる楽しい曲だと思っとって。
藤井風がLizzoについて直接言及したのはスペースシャワーTV「V.I.P. -藤井 風- LOVE ALL “COVER” ALL SPECIAL」にて。uplifting(アゲアゲで)powerful(力強く)inspiring(刺激的)ともうこれ以上ない程褒める風氏。
NYに行かせてもらった時にフェスにLizzoが出てたのを見たんですけど、見る人を元気づけようとしているのがすごい伝わってきて聴衆もそれを全身に浴びてて、みんなイキイキしとって。こんなパワフルなライブ見た事ない感じた事ないくらいくらいに感動した。
おそらくだが、こちらがその時のライブ。
『何なんw』のNYでの撮影が2019で、Lizzoの現地ライブがあったのはこの8月だけっぽい。死ぬほど探してたらはしゃぐ風さん映ってたりして。
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2022.08.09追記
複数の方から上の8月ライブ参加は不可能なのでは・・・?という連絡を頂きました。
NYに訪れたのは5月訪問と12月の何なんwのMV撮影の2回である事を把握しておらず、本人の「フェスで」という事から野外のライブを推測してしまい、誤った情報を掲載してしまいました。お詫びいたします。
本人の口から明言されていないので、断定はできませんがこちらの5月のライブか12月のライブのどちらかに行った可能性が高いです。
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さて、結論を言っちゃうと2人のアーティストに共通するのは"Love"の4文字だ。それも「ありのままの自分を愛そう」という"Love myself"の精神だ。
ありのままの自分を愛する、なんて文字で書くと陳腐になっちゃう気がするんだけど僕たちは中々これができない。いやほんとに。自分なんて・・・って思った事2万回くらいあるしな。
みなさんご存知の『まつり』において、
で、一体何がほしいわけ 誰に勝ちたいわけ
なかなか気づけんよね 何もかも既に持ってるのにね
と歌ったのは記憶に新しい。過去にも「ありのままの姿でいる」ことをインタビューでも話している。
藤井 風「ありのままを日々磨いていきたい」【GQ JAPAN】──特集:世界の未来のヴォイス | GQ JAPAN
誰かにそれを押し付けたりすることはせずあくまでも自分はこうしますよってくらいのニュアンスだと自分は思っていて、MCでも歌詞でもこう思うとええんじゃないやろか、と提案するくらいで発信している。
一方Lizzo。
こちらはもはや自己愛の象徴みたいな存在で、「ありのままの姿でいる」というのは風氏と共通しているものの「ありのままの私って完璧なんで」っていう確固たる核を主張している点は相当ニュアンスが違う。だいーぶ強い。
わかりやすい例で、既に伝説となっているイングランドの世界最大規模の音楽フェス、グラストンベリーでのスピーチがこちら。熱い熱いメッセージは53秒から。
I want you to go home tonight and look in the mirror and say, I love you! You’re beautiful! And you can do anything!
今夜家に帰ったら、鏡の前でこう言ってみて
愛してる!あなたは美しい! あなたは何だってできる!
完全にポジティブの権化。自己愛教のメシア。これは決して皮肉で言っているのではなくって、心の底から凄いと思ってる。悟空が人の元気を吸い上げて元気玉を打つのに比べてLizzoは全部あげてる、愛が伝播していくのが見えるよう。
国民性+本人のパーソナリティの両方によるものだと思うけれど、「絶対こうした方良いってば!!」くらいの押しと意志が見て取れる。
かと思えば、一抹の弱さも見せる。
And now I want you to look at me ‘cus I’ve been depressed lately, bitch, and I need it.
じゃあ今度は私に向かって言ってちょうだい。私、最近落ち込んでるから、必要なの。
"Body shaming"という言葉があって、簡単に言うと体型についての中傷行為の事なんだがこれにLizzoは大変悩まされてきたそうな。プラスサイズの体を散々中傷された事や荒らし行為の横行により実際にTwitter使用を中止したりもしている。*1
時に弱さを見せつつも、ありのままの自分を誇るその姿に魅せられて、体型にコンプレックスを抱く人々はもちろん、所謂Girls/Womenエンパワーメント団体やLGBTQのコミュニティからも彼女を支持する声は多い。*2
長くなってきたのでまとめに入る。
色々語ってきたけど、Lizzoの、「あらゆる鎖=縛るもの」からの解放とそれらを吹き飛ばすようなエネルギーに藤井風も相当殺られているのは想像に難くない。Lizzoが9歳年上という事もあり、アーティストの先輩としてきっと相当な影響を受けているし、今後もきっとインスパイアされる部分が出てくるはずだ。
いかがだったろうか
気になった人はぜひLizzoのNewアルバム"SPECIAL"をチェックして欲しい。「私もあなたも特別」とでも言うべきメッセージがこれでもかというくらい詰め込まれてる。グラミーの主要賞、あるで。中でもオススメなのはビルボードチャートを席巻*3した"About Damn Time"!!
Chicをオマージュしたディスコナンバー。この80'sリバイバル感たまらんわ、イントロのカッティングでご飯3杯おかわりできるレベル。
藤井風の敬愛するマイコーや今回書いたLizzoは勿論、彼がカバーするアーティスト達の原曲を知って文脈を理解すると、どういう心持で彼がLASAの境地に辿り着いたのかをあれこれ考えられて楽しいですぞ、というお話。
それではアデュー。