もうただただ、ずっと聴いていたくなる。
そうなんすよ、最初はこの「声」に惚れたんだった。
新しい音源、という意味で言えばなんと『grace』ぶりのリリースであったということもあり、久しぶりのオクスリあらためて藤井風の声の持つ魅力を噛みしめ、浸っている。用法用量なんて守れませんぜそりゃあ。
今日はそんな中毒性の激高のJVKEと藤井風が織りなす黄金色の時間、『JVKE - golden hour (Fujii Kaze Remix)』について語っていきたい。
2人の声を意識すると聴こえ方がまた変わってくるしなーんとなく聴くには勿体なすぎるのでぜひ耳の感度を最高にしてから聴いてみてほしい。
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LAでの近況
ビジュアルも大きく変わり、LAを満喫していたっぽい風氏。
トレードマークとも言える黒髪をバッサリカットし、赤メッシュのワイルド風になったのも結構前の事に感じてしまうくらい色々と動きがあったここ数日。
ASIA TOUR開催発表が最大風速として、細かくレコードの再販やら服袋の販売やら…情報は出し惜しみせず、短い期間にガッと出す。これ基本ね。
そして情報解禁のラストを飾る?大風、『JVKE - golden hour (Fujii Kaze Remix)』のリリース。こいつにまたしても耳が殺られてしまったという訳です。いや、耳が蘇生したとでも言うべきか。
JVKEとのコラボレーション
JVKE (読み:ジェイク)
アメリカ合衆国は、ロードアイランド州クランストン出身のシンガーソングライター&プロデューサー。
母はパブリック・スクールの音楽教師、父は牧師という、音楽家系に育つ。JVKEは3歳からピアノ、ギター、ドラムなどの楽器をはじめ、7歳には週一で行われていた地元の教会の音楽隊をまとめるほどになっていた。14歳にて音楽制作を本格的にスタート、18歳のときにカレッジを中退し、初めてパブでの演奏契約を結ぶ。
2020年6月、JVKEはTikTokをはじめ、彼の制作する音楽のクオリティの高さが徐々に話題となり、僅か2カ月間あまりでのべ300万人のフォロワーを獲得。彼はしばしば実母とのマッシュアップ・ビデオをポストし、その投稿が著名TikTokerの間で使用されたりと更なる話題を呼んだ。そしてTikTokにて火が付いた楽曲「Upside Down」は、失恋の思い出を歌ったエモーショナル・ポップ・ソングで、累計1,500万以上の再生回数を記録。
チャーリー・プースをフィーチャリングしたヴァージョン「Upside Down (feat. Charlie Puth)」を発表し、今、大きな話題を呼ぶアーティストである。
幼少期、しかも3歳からピアノに触れていたという意味では藤井風と共通する育ち。ロードアイランド州も佐賀県くらいの大きさの州で、大都市というよりは郊外の街からの出自だし、TikTokからのバズ等色々と重なって共感するところもあったのかもしれないね。
僕はチャーリー・プースがめっちゃ好きでこの『Upside Down (feat. Charlie Puth)』だけJVKEと認識せずに知っていたのだけど、彼の趣向として他のアーティストを招いて原曲をリミックスしていくというのが一つのスタイルのよう。その流れの中で今回風さんが相手になった、というのが僕の想像するストーリー。そしてその曲こそ彼の代表曲の一つ、『golden hour』だった、と。
まずもって原曲が素晴らしい。語りだすとまーた1万字を超えるので自重するが、抒情的なメロディ、一瞬のブレイクからの”Shine”のカタルシス、Radiant beamとかDonald Glover(じゃないよ)みたいな独特のワードチョイス等好きが散らばっている。
個人的にデカイのは若い才能が爆発してる二人のコラボレーションであることなんですよね。所謂大御所アーティストがフックアップしたのではなく、レコード会社も違う二人が互いの音楽性に惹かれ合って実現したということが尊い。メジャーのレコード会社を超えたコラボレーションってそんな簡単じゃ無い。
golden hour (Fujii Kaze Remix)
相変わらず前置きが長いが本題!
“golden hour”は朝や夕方に空の境界が金色に輝くあの瞬間のことを指す。テレビのゴールデン帯じゃないぞ、その間違いは感動全部台無しになるレベル。
まずはアートワークがセンス◎
世界でも“Origami”で知られる折り紙をモチーフにし、和の雰囲気を漂わせた素敵なビジュアルイメージ。こういう一つ一つの積み重ねが、この世界観好き!ずっと浸っていたいと思わせてくれる。
Remixの意味
注目したいのはRemixという表現。よく〇〇リミックス~みたいな表記でレゲエやらEDMやらのテイストに変化することがあるよね。本作はちょっと違っていて、『Kirari Remixes』のようにリミキサー名を冠して「誰々Remix」みたいになっているパターンで、『golden hour (Fujii Kaze Remix)』になっている。リミキサーである藤井風が原曲をどう捉えどう活かし、何を加え何を引くかというセンスが問われる、自分との勝負の場でもある。
今作の大きなポイントは大きく3つ。
アウトロのカット
まずはアウトロを大胆にカットしている点。原曲の構成と違ってverse 2から藤井風が歌い出し、ラストのchorus後にすぐに終わる。一見地味だが、このアウトロのカットが何周もリピートしてしまう大きな理由の一つになっている。この曲だけリピートしてもシームレスにイントロまで繋がってしまう感じね。
結果、トレンドを掴んだ2分台で終わる楽曲に仕上げている。風パートもあえて短くなっているようにも感じた。Tiktokで使いやすいからかな?
verse 2の歌詞
2つ目のポイントは上述のverse 2、藤井風の歌パートの歌詞。
原曲ではビートレスなverse 1後からクラップっぽい音が入りビートに乗ってJVKEがラップするんだが、ここからがまるっとリミックスされている。
黄金色の Planet
Don’t you ever try to break it
たどり着いた Secret
You’re never ever gonna fake it
目を覚ませば We’re gonna fly forever in the sky
「黄金色」がもちろん”golden”に対応している訳だが初聴時、「黄金色のタネ」かぁ…金の稲穂的なナニカ?と思ったらPlanetだった。やはり風は地球規模。
"Don’t you ever”という表現も『死ぬのがいいわ』を思い起こさせるね。お気に入りの英語表現なのかな?
原曲の歌詞の内容としては最愛の恋人との車中での一幕だったりするのだが、そこに風エッセンスが加えられ、一つ上のステージに昇華している。
恋人との関係性を更にミステリアスに描写した内容にも取れるし、”Higher-self”へ辿り着く様にも取れるし、という内容。この多重性はマジでぶれない。
今回の歌詞でグッときたポイントとしては日本語と英語が絶妙にミックスされたこの歌詞、このバランスよ。片方の言語のみで歌うでなく、自分の出自や響きを大切にしつつコラボ相手やそのリスナーとの距離感も近づける。例えばBLACK PINKら世界を席巻するK-POPアーティストが韓国語+英語の表現で世界と勝負しているように、あるいは『死ぬのがいいわ』で日本語と英語が絶妙にミックスされ、そこに興味深さを感じさせたように、その言語の持つ響きをメロディに合わせ、最大限に活かした点に脱帽です。
風ハモリ
そして、今作の白眉とも言える3つ目の最重要ポイント。そうです、風ハモリ。
You and I, uh, got no tears in our eyes
See everything with a smile
What a beautiful sight
上の”You and I”の箇所から自分の声に自分の声を重ねる手法で入り、小節の終わりは全て母音を"ai"に揃え韻を踏んでいる。この時点で聴き心地は最高だが本領発揮はむしろここから。
原曲と、あるいは1番とでもよーく聴き比べてみてほしいんだが、所謂”Pre-chorus”と呼ばれるサビ前のブリッジ部分から最後までずっとKAZE&JVKEのハーモナイズされた声が聴ける。
I was all alone with the love of my life
She's got glitter for skin
My radiant beam in the night
I don't need no light to see you (Ahh)
ここね。ほんっと気持ち良過ぎじゃない?主旋に絡む声よ…藤井風が最も大事にしている「コード感」を存分に発揮してる。
極めつけは大サビ*1”Shine”の超高音ファルセットハモリ。もはや男性の出す声域超えてる…鳥か?何周もしてるとこの神聖な高音は昔よく聴いてたシガー・ロスを思い出す。この曲自体もUSの音作りというよりかは「北欧み」を感じてるんよね。白夜感ある。
原曲の持つ胸が締め付けられるほどの抒情性に、天にも昇るような浮遊感を加え、”golden hour”に誘うハーモニー。JVKEと藤井風の声と魂が重なる黄金色の時間にずっと浸っていたい。もう狂おしいほど好き。
いかがだったろうか
2人とも声質が柔らかいし優しいので今どっち歌ってる?ってなるくらい親和性があるよね。あまり意識した事がなかったけど、彼の声は人と声を合わせることで最高に輝くのかもしれない。2021年の紅白でも魅せたあのパフォーマンスは確かにMISIAの神懸った声を支え、音に魔法がかかったのを思い出すね。
人を支えることで力を発揮するパターンの楽曲もいっそう聴いてみたくなった。
その名の通り、風のようにさらりと頬を撫で、人を癒す声にいつだって殺られ、蘇生させられる。ここ数日で何回一人黄泉がえりしたかわからんぜ、オイ。
それでは、今日はこの辺で。
*1:海外ではサビはChorusと表記されるが、ややこしくなるため分かりやすい表記にしています