僕はレベル40

心が動いたことをかいていく

世界でバズる『死ぬのがいいわ』。果たして女性の恋の歌、なのか…?

藤井風Youtubeより

実はこの記事は8月前半にアップしようと準備していてあとは〆部分を書くだけだったのだけれども、あの伝説のRSRライブで全部吹っ飛んでしまっていた。機を逸した感があって、お蔵入りも考えていた。

どーしてくれんのよ風!?あんなすげーの見せられたらそら上書きされるわ!とばかりにウダウダ待っていたら、公式の武道館動画アップ。これは神のお蔵入りにすんなとのご意志と捉え完成させる事にしよう、そうしよう。

www.youtube.com

 

死ぬのがいいわ(Shinunoga E-Wa)

ついに日本の国境を越え、世界でバズリ始めた藤井風。

あー、風吹いてる。今まで何度も吹いてきたけどまた吹いとる。

先ほどの動画コメントにも「モロッコから聴いてます」、「エジプトから応援しとるぜよ!」みたいなコメントがあり、タイでチャート入りしただけではなく少しづつファンが外へ外へと拡大しているのを感じる。世界が風を見つける日も近いわ。

 

で、曲がバズるにつれて歌詞考察の記事がいっぱい上がってるんだけど、ヲイヲイヲイちょっと待ってよと。

この曲はただの色恋沙汰の曲じゃないわよと。なめんじゃないわよと。そう主張するための記事です(なんだそれ

タイトルが強ぇ

藤井風の低音が聴ける事でも人気が高いこの『死ぬのがいいわ』。

まずタイトルが強い。1stアルバムってね、もっと自己紹介的な曲で丸く平たい曲をセットするもんなんすよ。

大体アルバム名が"HELP EVER HURT NEVER"(常に助け、決して傷つけない)ですよ。それを「死ぬのがいいわ」て。

逆ゥゥゥゥゥ!!

普通「ゆびきりげんまん」とか無難に付けるけどこのギャップが面白みだし僕の大好物のクレイジー風成分が出てるタイトル付けだと思っております。

本人談によると

上京後、買い物帰りに「あなたとこのままおさらばするより死ぬのがええわ」というフレーズが降りてきた。

随分昭和な歌詞とメロディーだと思ったけど、それが今っぽいトラップ風ビートと合わさったおかげで絶妙におもろい個性的な曲になって大満足。

藤井風アプリ セルフライナーノーツより

懐かしいメロディにYaffleマジックが加わってTrap歌謡という奇跡的なバランスが生まれている。ヤッフルヤッフル!

そういう意味でモロ昭和歌謡な『罪の香り』と似て非なるスタイルになってる。

 

で、問題の歌詞。

 

結論から言っちゃうと、恋愛の色は確かに濃い。だがむしろもっと本質的な愛と誓いの歌だと思っている。

解釈の幅が相当広いって事なんだが項目に分けて書いていく。

女性目線と認識する2つの要素

まず気づくのが女性(と思われる)目線や口調での語り口。一人称が「わたし」、二人称が「あなた(あんた)」。これが女性目線曲と認識する大きな要素よね。

僕、「男が歌う女性目線曲大好き協会」の会長もしてるんですけどHEHNはそんな曲が多くって、他にも『優しさ』、『特に無い』、『罪の香り』なんかが該当する。*1

 

2つ目がこの歌詞。

鏡よ鏡よ この世で1番 変わることのない 愛をくれるのは だれ

 

言わずと知れた白雪姫の魔法の鏡の一幕を想像する。魔女が鏡に向かって尋ねているあのシーンを想像しちゃうんだから女性目線の曲とそりゃ認識する。

三度の飯よりあんたがいいのよ

あんたとこのままおサラバするよか

死ぬのがいいわ

死ぬのがいいわ

Yeah!!めっちゃ歌謡曲。男女の色恋を歌った曲に当然解釈可能、どころかむしろそう読むのが自然なくらい。

どっぷり沼っているメンヘラ女子を主人公においても良いし、結ばれる事の無い不倫の果ての悲恋として想像しても面白い。

この時点で聴き手の想像力が掻き立てられる凄い歌なんだけど、自分としては「藤井風が歌うからこそ」別の意味に取る事ができると思っている。

ヒントはあの曲?

そう、藤井風だからこそ曲に新しい文脈が生まれ意味が付いてくる。

どういうことか。そのカギを解くヒントは『何なんw』にある。

『何なんw』って全風曲で一番不思議な曲だと思っていてド頭の「青さ粉」とかサビの「何なん!」が強すぎて流しがちだけど、一度歌詞を眺めただけではなんの歌詞なのかよくわかんないんですよ。

そこでこちらの動画の本人コメントを参照する。



This song is about finding "higher self" within me in you in everyone.

Higher self is something like God, or you could say Angel, or Hero.

この歌は皆の中にいる「ハイアーセルフ」を見つけることを歌った楽曲です。

ハイアーセルフとは神様のような、天使やヒーローとも言えるべきそんな存在です

あーーーー、そういう意味ですか。

最初は恋人との思い出の曲なんかと思って流し聞きしてたんだけど、この動画でかなーり目鱗した。何食って生きてたら20歳そこそこで「ハイアーセルフ」に出会うんだよと。

つまり、神様(あるいは神的な何か目に見えない大きな力)に出会うための楽曲なのね。書いてて自分でもスピリチュアルだなと思うが、どの曲も根底にはその本質的な愛が流れている。

『damn』もニュアンスが近いし分かりやすい。「まさかこんなに惚れてまうとは」という歌詞がありつつも一義的な恋愛の曲では無く、あくまでも根底には "I will keep him in a safest fairest happiest place"という神へのラブレター的側面がある。

 

じゃあ『死ぬのがいいわ』この解釈を当てはめると、「死ぬほど、というか死ぬよりもあんた(神様)と一緒に添い遂げる」という深い愛のメッセージとなる

 

例えば「それでも時々浮つくMy Heartそんなダサいこと もうしたないのよ Goodbye」は他人に浮気する意味ではなく、不完全な自分への自己反省であり宣言と捉える事もできる。

 

改めて結論をまとめる。

 1.恋愛と解釈

⇒女性目線の激情の歌。いや、唄。主人公の境遇は聴き手に委ねられる。

2.神への愛と解釈

⇒神様への宣言・誓いのラブソング。

となる。ゆびきりげんまんして約束してるしな。どちらも正解で、聴き手の状況によって姿かたちを変えていく名曲が、この『死ぬのがいいわ』。

いかがだったろうか

この記事を書いて、一番声を大にして言いたい事は藤井風の楽曲はあらゆる場面で重層的で、それ故に深いという事。

身近で一般的なテーマじゃないからティーンには刺さりにくいかもしれないけど、人生重ねた人ほど身に、心に沁みていく気がしている。藤井風に30 overが沼る原因はこの辺りにあるのかもしれない。

これ1stアルバムですよ?熟練の20年目の歌手じゃないんですよ?もっとキラキラしててくれよ20代前半!って思っちゃうレベル。自分の22、3の頃を思い出したら痛すぎて死んじゃう。あらためてさすが風!そこにシビれる!あこがれるゥ! となったというお話。

 

それでは今日はこのあたりでアデュー。

 

 

*1:『調子のっちゃって』は微妙なライン

藤井風ライブ@RSR2022 セトリ&全曲感想

RSR2022公式YOUTUBEより

 

今8月14日1時50分、もうほんまに深夜のテンションで書いています。

凄いものを目撃してしまったので勢いでこのまま書ききりたい。いや、残さなければならないとすら思うほど感動したライブだった。

急遽すぎる出演を決断した藤井風はもちろん、配信にこぎつけたチーム風&RSR運営陣への惜しみない拍手と感謝を送りたい。

 

では順を追っていく。

 

そもそもRSRて何よ

RISING SUN ROCK FESTIVAL(ライジング・サン・ロック・フェスティバル)は、毎年夏に北海道石狩市の石狩湾新港樽川埠頭横 野外特設ステージで開催されている国内最大級の野外オールナイトロック・フェスティバルイベントの1つである。略称"RSR"、"RSRFES"。

ライジング・サン・ロックフェスティバル - Wikipedia

そう、歴史と伝統のオールナイト野外フェスなんですよ。深夜もやってるし、眩しい朝日を音楽と共に拝むからライジングサン。僕は3年くらいだけど北海道に毎年行ってテント泊してました。

もうね、最高な訳ですよ。深夜のスペアザとか朝のハナレグミとか沁みすぎて僕溶けてますから。電グルとか弾けすぎてゲル状になってますから。ステージはめちゃ広いし多いし飯もうまいしアーティストは楽しそうだし、人もあったけぇ。現地のRSRラバーはRSR好きすぎて前夜祭とかも非公式に主催してますからね。前にも書いたけど、ほんっと一番好きなフェスです。

そんな最高のフェスで今回急遽出演が決まり、フェスで一番デカイステージであるSUN STAGEに出演したのが我らが風さんです。

 

代打藤井風

SNSでパワーワードすぎると話題になってた代打藤井風。RSRもコロナ禍の中感染対策を施しながらも新しい開催のカタチを模索しているけれどアーティストの罹患だけはマジでどーにもならない。

今回はVaundyの代打を務める事となったけれど、他にもKing Gnuやカネコアヤノ、BiSHといった面々も出演を中止している。特にBiSHなんて解散も決まっているし来年なんてないんですよ、どんだけ悔しいか想像もつかない。

Vaundyと藤井風

アーティスト公式HPより

Vanudy。通称バウ君。唯一無二な声を持ち、多作かつ多種多様な超良い曲を作りまくっている今一番人気と勢いあるシンガーソングライターの1人。ちょっといい声の歌い手の声をA4ランクの牛だとしたら彼はA8はありますね、ええ。

RSRライブのMCでも言及していたけれど、風氏とデビューが近くってただのアーティスト同士の付き合い以上の縁を感じている模様。「藤井風」と呼び捨てするコメントに対して「藤井風さんだろ?(半ギレ)」と改めさせる動画が話題にもなっていた。

一方風氏も寝そべり配信で何度もVaundy楽曲をカバーしていたし、そんな双方リスペクトを送る関係だったからこそ、他ならぬバウ君の無念をはらすためだったからこその今回のライブが実現したのは間違いない。色々と熱すぎるしこれをエモいと言わずして何を言うんだよというレベル。

『不可幸力』と『東京フラッシュ』が初期の名曲で、ちょい前だと特に『踊り子』はめっちゃめちゃ聴いてた。



セットリスト

1. Vaundyメドレー 踊り子-恋風邪にのせて-napori-東京フラッシュ

2. 何なんw

3. 帰ろう

4. Vinyl -King Gnu-

5. 祝日 -カネコアヤノ-

6. オーケストラ -BiSH-

7. きらり

8. 旅路

9. まつり

 

全曲レポ

0. 開演直後

ピンク?のカジュアルなセットアップにサンダルの衣装にて登場。ピアノに向かわず、ステージ中央で深々とお辞儀。

礼儀正しいを超えて、「Vaundyというアーティストのライブを楽しみにしてくれとった皆さん、ワシですまん」とでも唱えてるんだろうかくらい深い深いお辞儀だった。僕、謙遜って藤井風を表す一つの重要な要素だと思ってるんですが、まずはそんな感想を抱きつつ、良いライブになる事を確信。

 

1. Vaundyメドレー 踊り子-恋風邪にのせて-napori-東京フラッシュ

と、思いきや『踊り子』のメロディを口ずさむ。永遠に聴いていたメロディだったので、0.5秒で曲を理解しこの時点でPC前にて固まる僕。あのストロークスっぽく前に出まくったベースを愛していたので一体どうなるかと思ってたけど、メロディラインを風ピアノがなぞるとまた違う魔法がかかる。この曲だけで5000字行っても良いですかね?

と思ったら『恋風邪にのせて』。もうね・・・ズルイですよ。風て。ちょっと来るかと思ってたけども。

混ざりゆく景色 雨越しに覗いた暖かい風が呼んできた

もはやこのカオスで暖かい謎な状況を描写してると言っても過言ではない。オーディエンスの手拍子に乗って曲がドライブしていく。

そして立ち上がっての『napori』。あのミニマルで変則的なビートがすっごいおしゃれなジャズ曲として生まれ変わるのはこれまた魔法。高音も美しい。

そしてこのメドレーの白眉、『東京フラッシュ』への繋ぎ。切り替わりの瞬間からサビの風フラッシュまでの間に五回くらい絶頂状態。浸るしかないだろこれ。

 

「どーもぉ、Vaundyでぇす」という小ボケからVaundyへの想いを語るのを見て、ほんまこの人愛の人やなと改めて実感。そらバッタも飛び乗ってきますわ!!

本人にもリスペクトがしっかりと届いた最高の出だし。

 

2. 何なんw 

デビューが同時期という共通項から『何なんw』をチョイスもう何回聴いたかわからんが、フェスで初風の人も多いんやろなぁと思いながら聴くとまた違う感慨深さ。しかし途中映るあまりの客の多さに引く。深夜なのに3万近くいたんじゃないか、これは・・・そらチケットも取れませんわ!!

3. 帰ろう

かなり意外なチョイス。ラストでもないしRSR自体も全然終わってないしどういう心境での演奏だったんだろうかね。曲を知っているだけにパフォーマンスの細かいところをむしろしっかり堪能できた。本当に本当に歌う表情が良い。いつもだけど

 

4. Vinyl -King Gnu- 

今日の最絶頂ポイント。「藤井風とVinyl」というテーマで2万字書ける自信があります、どーもJ太郎ですおはようございます。

「ぼっけぇ難しい」って何やるんだろうと思ったら「ヴァイナル」発音良すぎで「ファイナル」なんて曲ないんですけどmore・・・って思ってたらあのイントロだった。ヴィニルかよぉ!あれヴァイナルって読む奴初めて見たよぉぉと思いながら訳わからなくなる。

キーは下げて歌いつつも、井口パート・常田パートどちらも歌うアレンジだし白日じゃなくてあえてのチョイスとかでツボをつかれておかしくなった。

新井先生も喜んでる。

 

5. 祝日 -カネコアヤノ-

これまたもろストロークスな『ロマンス宣言』しか知らなかったのでこの曲は初聴き。僕は女性シンガーソングライターの掘りが足りないので新しい出会いができて有難い。

途中の風氏の表情が泣いているように見えてこっちもちょっと泣けてくる。

 

6. オーケストラ -BiSH-

ばう君に引き続き、寝そべり配信の文脈を持つこの曲。BiSHの楽曲は色々とチェックしているようなのでピアノイントロが綺麗な『プロミスザスター』あたり来るかもと思ってたけど真っ直ぐに『オーケストラ』だった。ちょっと歌い方がアイナジエンド風味だった気がしなくもない。来られなかったアーティスト達の想いを背負っちゃる!!なんて傲慢な意識はきっと無いだろうけど少なくとも僕の中では一つまた一つと昇華されていく思いがした。

 

7. きらり

藤井風というアーティストを観にきた以上、オーディエンスは当然風楽曲も聴きたいに決まってる。この日はそのバランスと配置が絶妙に良かった。

ここで自身最大ヒットの『きらり』投入。ただ、ファルセットが相当厳しそうだった

あの4つ打ちのダンスチューンは元々弾き語りに向かない上、本人もコロナに罹って間もないパフォーマンス。むしろよくここまで出てたなと。前もライブで地声やミックスは綺麗に出てるのに何故かファルセットが掠れる事があったけども今日もそんな感じだった。曲後に「Sorry」と言っていたように思えたし、プロとして本人が一番悔しいだろうな。

8. 旅路

やはり最後は旅路なのね。と思いつつ、まぁここはMCの素晴らしさよね。

昨日より今日が良い人であろうとか昨日よりも今日が優しい人であるように努力する事、そしてその努力する姿勢そのものの尊さを丁寧に説明する風氏。

前の記事で書いたLizzoのようにパワフルに牽引していくのではなく、自身の自然な振る舞い、そして出てくる言葉だからこそ伝わるメッセージがあるなと。人生って何かを考えさせられる28時半。

 

9. まつり

夏祭り頼むぅぅぅと思っていたのでラストのオケでの『まつり』にまた上がってしまう。藤井風TVでのフルバンドでのパフォーマンス以来二回目だったが、PCの前で手を上げる僕としては早く秋まつりに行きたいと心から願うばかりよ、マジで。

あのフェイクとシャウトを生で聴くことができる日を、そして何の気兼ねもなくまつりで踊ることができる日が来ますように。

 

いかがだったろうか

今朝の5時50分、鳥のさえずりが聞こえてきています。かなり腰痛いけど後悔はしていない。

「藤井風、RSR出演」と聴いて最初に検索したのが配信有無で、「やっぱ無いよなぁ」と落胆した後の配信決定だったのでここ数日気分がジェットコースターだった。冒頭でも書いたが何度でも言う。

アーティストは勿論、それを支えるバックステージの皆様、フェス運営の皆様。本当にありがとうございました、そしてお疲れ様でした。乗り越えるべきハードルいくつあったんだこの企画・・・

RSRはまだ続いてるけれど、そもそも僕たちが享受できているこの音楽の有難みすら感じる事ができた大切な時間になりました。今後もたくさん音楽を聴いてたくさん還元できるようにしようそうしよう。

 

それではアディオス・・・寝ます。

 

 

 

 

藤井風とLizzoに共通する「ありのまま」について

タイトル付けはいつも迷う。

最初「風とLizzoのただならぬ関係」と打ってから一時保存したけど、しょーもない週刊誌の釣りタイトルみたいでやめた。この2人のpositive vibesを下世話にしたくないしね。

Lizzo?でピンと来ない人もいると思うけど、藤井風Liveの「開演直前SE」になっているアガルあの曲と言えばわかるだろうか。音源で言うと青春病EPで初出、Love All Cover Allにも収録されている『Good As Hell』を歌うアーティストだ。

 
 
 
 
 
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サウンド/マインド面でも藤井風ににただならぬ影響を与えている彼女。7月リリースのフルアルバムがめちゃ良かったこともあり、色々と掘り下げていきたくなった。

 

Who is Lizzo?

デトロイト生まれ、ヒューストン育ち。

ウーマン・エンパワーメントで社会を動かすポップ・スター、Lizzo。

グラミー賞を3回受賞したシンガー、ソングライター、ラッパー、女優など、さまざまな顔を持つLizzoは、ポップ・ミュージックのサウンド、文化、スピリットに変革をもたらしてきた。2019年にリリースされたRIAAプラチナ認定デビュー・アルバム『CUZ I LOVE YOU』は、ビルボード200で4位を獲得し、プラチナ認定の「Tempo (Feat. Missy Elliott)」、プラチナ2冠の「Juice」、プラチナ4冠の「Good As Hell」 、プラチナ7冠の「Truth Hurts」など歴史的ヒットに支えられながら、その地位を確立。

Lizzo / リゾ プロフィール | Warner Music Japan

プロフィールにもあるようにシンガーでありラッパーでもあるっていうところが1つ目のポイント。90年代くらいまではラッパーが歌うとか踊るとかダセェからやめろという風潮があり揶揄の対象だったんですよね。シンガーは客演で呼ぶものだった。

しかしDrakeという「ラッパーも歌って良い」でUSミュージックを根底から覆したゲームチェンジャー以降、むしろ本人歌わないの?くらいの状況で歌もラップも両方やるハイブリッドなアーティストがガンガン出てきた。

そうしてラッパーとシンガーの境界線が薄くなってきた2010年代に、Nicki MinajとCardi Bという2人のメガヒットラッパー/シンガーが生まれる。2人ともリリック的にもヴィジュアル的にも所謂セックスアイコンとして売り出され、Fワードを乱発しつつ「私がどんだけイケてる女なのか」を歌い、セールス的にもチャートを席巻した事は記憶に新しい。

で、その2人の次、正に今の時代に取り上げられるべきネクストフェーズ・アーティストこそがLizzoというのが自分の認識。2つ目のポイントでもあるんだが、リリックの内容やインタビューやSNSでの受け答えが先に挙げた2人のラッパーと明確に異なっている

 

Lizzoと風

単純にすごいアガル曲というか。とにかくLizzoがライブでこの曲を歌ってる時の姿がものすごいupliftingでpowerfulでinspiringな、みんなをインスパイアさせちゃうようなすごいパワーを感じる楽しい曲だと思っとって。

藤井風がLizzoについて直接言及したのはスペースシャワーTV「V.I.P. -藤井 風- LOVE ALL “COVER” ALL SPECIAL」にて。uplifting(アゲアゲで)powerful(力強く)inspiring(刺激的)ともうこれ以上ない程褒める風氏。

 

NYに行かせてもらった時にフェスにLizzoが出てたのを見たんですけど、見る人を元気づけようとしているのがすごい伝わってきて聴衆もそれを全身に浴びてて、みんなイキイキしとって。こんなパワフルなライブ見た事ない感じた事ないくらいくらいに感動した。

おそらくだが、こちらがその時のライブ


『何なんw』のNYでの撮影が2019で、Lizzoの現地ライブがあったのはこの8月だけっぽい。死ぬほど探してたらはしゃぐ風さん映ってたりして。

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2022.08.09追記

複数の方から上の8月ライブ参加は不可能なのでは・・・?という連絡を頂きました。

NYに訪れたのは5月訪問と12月の何なんwのMV撮影の2回である事を把握しておらず、本人の「フェスで」という事から野外のライブを推測してしまい、誤った情報を掲載してしまいました。お詫びいたします。

本人の口から明言されていないので、断定はできませんがこちらの5月のライブ12月のライブのどちらかに行った可能性が高いです。

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さて、結論を言っちゃうと2人のアーティストに共通するのは"Love"の4文字だ。それも「ありのままの自分を愛そう」という"Love myself"の精神だ。

ありのままの自分を愛する、なんて文字で書くと陳腐になっちゃう気がするんだけど僕たちは中々これができない。いやほんとに。自分なんて・・・って思った事2万回くらいあるしな。

みなさんご存知の『まつり』において、

で、一体何がほしいわけ 誰に勝ちたいわけ

なかなか気づけんよね 何もかも既に持ってるのにね

と歌ったのは記憶に新しい。過去にも「ありのままの姿でいる」ことをインタビューでも話している。

藤井 風「ありのままを日々磨いていきたい」【GQ JAPAN】──特集:世界の未来のヴォイス | GQ JAPAN

 

誰かにそれを押し付けたりすることはせずあくまでも自分はこうしますよってくらいのニュアンスだと自分は思っていて、MCでも歌詞でもこう思うとええんじゃないやろか、と提案するくらいで発信している。

一方Lizzo

こちらはもはや自己愛の象徴みたいな存在で、「ありのままの姿でいる」というのは風氏と共通しているものの「ありのままの私って完璧なんで」っていう確固たる核を主張している点は相当ニュアンスが違う。だいーぶ強い

わかりやすい例で、既に伝説となっているイングランドの世界最大規模の音楽フェス、グラストンベリーでのスピーチがこちら。熱い熱いメッセージは53秒から。

I want you to go home tonight and look in the mirror and say, I love you! You’re beautiful! And you can do anything!

今夜家に帰ったら、鏡の前でこう言ってみて

愛してる!あなたは美しい! あなたは何だってできる!

 

完全にポジティブの権化。自己愛教のメシア。これは決して皮肉で言っているのではなくって、心の底から凄いと思ってる。悟空が人の元気を吸い上げて元気玉を打つのに比べてLizzoは全部あげてる、愛が伝播していくのが見えるよう。

国民性+本人のパーソナリティの両方によるものだと思うけれど、「絶対こうした方良いってば!!」くらいの押しと意志が見て取れる。

 

かと思えば、一抹の弱さも見せる。

And now I want you to look at me ‘cus I’ve been depressed lately, bitch, and I need it. 

じゃあ今度は私に向かって言ってちょうだい。私、最近落ち込んでるから、必要なの。

 "Body shaming"という言葉があって、簡単に言うと体型についての中傷行為の事なんだがこれにLizzoは大変悩まされてきたそうな。プラスサイズの体を散々中傷された事や荒らし行為の横行により実際にTwitter使用を中止したりもしている。*1

時に弱さを見せつつも、ありのままの自分を誇るその姿に魅せられて、体型にコンプレックスを抱く人々はもちろん、所謂Girls/Womenエンパワーメント団体やLGBTQのコミュニティからも彼女を支持する声は多い。*2

 

長くなってきたのでまとめに入る。

色々語ってきたけど、Lizzoの、「あらゆる鎖=縛るもの」からの解放とそれらを吹き飛ばすようなエネルギーに藤井風も相当殺られているのは想像に難くない。Lizzoが9歳年上という事もあり、アーティストの先輩としてきっと相当な影響を受けているし、今後もきっとインスパイアされる部分が出てくるはずだ。

 

いかがだったろうか

気になった人はぜひLizzoのNewアルバム"SPECIAL"をチェックして欲しい。「私もあなたも特別」とでも言うべきメッセージがこれでもかというくらい詰め込まれてる。グラミーの主要賞、あるで。中でもオススメなのはビルボードチャートを席巻*3した"About Damn Time"!!

Chicをオマージュしたディスコナンバー。この80'sリバイバル感たまらんわ、イントロのカッティングでご飯3杯おかわりできるレベル。

 

藤井風の敬愛するマイコーや今回書いたLizzoは勿論、彼がカバーするアーティスト達の原曲を知って文脈を理解すると、どういう心持で彼がLASAの境地に辿り着いたのかをあれこれ考えられて楽しいですぞ、というお話。

 

それではアデュー。

 

スペシャル (特典なし)

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  • アーティスト:リゾ
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雑記から特化へ。藤井風に全額BETします宣言、夏

この話を投稿しようか、ひじょ~~~に迷った。

実に半年以上迷った。

 

何を迷ったかって言うと表題の通り、このブログで取り扱うテーマを藤井風に特化するかどうかって事なんですよね。

元を辿ると、雑記ブログとして色々書いてきたのを一つのテーマに絞って書くよう方針転換するかを迷っている。いや、迷っていたが正解か。

 

今日は自分のこれまでの歩みと今後の当ブログ方針書いていく。

 

 

雑記型か特化型か問題

ブログを立ち上げる時に多くの人が通る「色んな事について書くか」、または「絞って特化させて書くか」問題がある。

 

雑記型:なんでも書く事ができるのでテーマに困りにくい反面、散漫でまとまりが無い記事の集まりになってしまいがち

※成功しているブログは「この人が書く文章が読みたい」と人が集まってくる場合が多い。

 

特化型:ブログ全体で統一感があり、特定の趣向を持つ人が集まる。反面、興味が無い人にはほぼ刺さらない。

※成功しているブログは「〇〇というテーマをしっかり扱っているブログ」という評価を得て人を集める場合が多い。

 

色んなメニューを揃えているレストランか特化したラーメン屋とどっちで勝負するか、みたいな話に近いかな。

 

「僕はレベル40」ってなんやねん

で、僕が気分であれこれ書いているこの「僕はレベル40」は前者の雑記ブログでして、音楽を中心に映画や漫画、昔はDJのやり方だとか歌が上手くなるには、良い写真の撮り方とかまで雑多に書いていた。

「僕はレベル40」とかいう謎な名前の由来は、それなりに器用で何をやってもある程度のレベルまではいくけど、どうしても突き抜けきれない僕を表してるんですね。

ドラゴンクエストなんかのRPGレベルで言うところの40くらいで、中ボスくらいは倒せるけどラスボスまでは倒しきれない感が実に僕っぽい!とつけたネーミング。

実際DJの記事は初めて多くの人に読まれた記事だったし、YOASOBIとヨルシカの記事なんかは未だに読んでくださる人がいて焦り散らしている。

20代半ばだった多感な僕は「いや、これが僕のアイデンティティなんで」ってな具合にあれこれ手を出しまくっていた。

感受性だけが自分の取り柄だし。どんだけ豊かな感受性かって言うと、「お~いお茶」のペットボトルに書いてる川柳で泣いちゃうくらい豊かですからね、ええ。

 

で、段々と音楽一本に絞っていくんだけど、これまた節操なく沢山の音楽に触れてきた。10代の物心ついてからはバンプとミスチルを筆頭に邦ロックにどハマりして、20代はロキノン⇒USパンク⇒メタル⇒UK⇒日本語ラップ⇒エレクトロハウス⇒ソウル・ファンク・ヒップホップと興味が意味不明に変遷しCDを買い漁り各所ライブに行きフェスというフェスを渡り歩いた。特に好きなフェスは北海道のRSRと福岡のSUN SET。なんか思い立って海外のフェスに行ったのは今でも忘れられない思い出。

ベルギーのTomorrow Landで撮影した写真。色々ともう行けねーな。

 

で、洋楽どっぷりだった自分を「今の邦楽めちゃくちゃ面白れぇ!」と感動して戻ってくるきっかけになった事件がKing Gnuの『Vinyl』だった。

基本心が動いた事を書いてるんだけど、もうエンドレスリピートっていうか再生ボタンのタップ箇所が凹むレベルで聴いた。

 

そしてそして、今世紀最大に貫かれたのが、藤井風の『HELP EVER HURT NEVER』だ。

人生を変えた1枚

初めて『優しさ』や『罪の香り』や『帰ろう』・・・ってか全部なんだが、通しで聴いた衝撃は今世紀最大風速更新した。

 

 

メロディもピアノも声もヴィジュアルもパーソナリティも全てに殺られて、最近は藤井風についてばっかり書いている、というのが今までのざっくりした流れだ。

宣言する意味あんの?

別にこのまま宣言をする必要も無くって、今までのように書いてれば良いんじゃね?とも思う。書きたい事ができたりもっと別のアーティストを推す可能性潰すかもよ、とも思う。

 

そんな感じでぐるぐる回っていたら、この記事を発見した。

news.yahoo.co.jp

 

ご存じ米津玄師のロングインタビューなんだが、芯から腑に落ちた。

 

「20代のうちは『興味がない』という言葉を禁句にしていたんです。そう言った瞬間に、自分のテリトリーみたいなものが決まってしまって、それ以上大きくなることがないなという感覚があったんですね。なんでもいいから興味を持って、自分とは全く違う人間と会って、そうやって自分の形を再構築していく、そんな時間が10年間くらいありました」

 

先生、これは僕の事ですかね?僕は米津なんですかね?

何これ怖いんですけど。

 

「でも、去年30歳になってその縛りを解禁したというか、もういいかなと思うようになりましたね。いろんなことに興味を持って、自分の形を作り替えていくことは、悪いことでは絶対にないと思うんですけど、そうやって躍起になっていろんなものに対して興味を持つより、自分にとって大事なテーマを深く見つけていったほうがいい時間なんじゃないかなってすごく思うんですよね」

 

あぁ、もはや米津が僕なんですかね?感電死しそう。



 いい加減そろそろレベルを上げたくなってきたのがここ1年くらいで、自分にとって大事なテーマで深く潜れる事の大切さに気付けた。

「筆が乗る」という表現があるが、あれはほんとで自分の文章を後で読み返す時に、ここ筆乗ってんなぁ~と思う記事はここ1,2年全部藤井風に関してなんですよね

よくよく考えると書く事を絞るからと言ってインプットを絞る訳じゃないしね。むしろ藤井風の音像を捉えるためには日本の、そして世界の音楽を聴いて感じないと絶対に辿り着けないし。

 多分これ以降、こんな高校生みたいなのめり込み方をするとは思えないので、一つここは直感を信じて、アンテナは今まで以上にバチバチな状態にしつつアウトプットを藤井風に集中するというように方針変更しようと思う。

 

僕は核心を突きたい

書いていて僕は核心を突きたいんだと改めて思えた。情報だけを整理して羅列するのではなく、自分なりの考察を通してアーティストの核心に迫りたいんだなと。だからこそ一番心地いいし深く潜りたいと思えるアーティストについて集中したい。その代わり自分のチャンネルを増やし、前々からやりたかった音声コンテンツについて本気で取り組んでみようかと。

 

あれもこれも魅力的でも私は君がいい

きらり/藤井風

 

藤井風に全額BET。今後はこれでいく。

 

それではあらためてアデュー。

今までありがとう、そしてよろしく。

 

 

藤井風のライブチケットが100年ぶりに取れた話

Fujii Kaze LOVE ALL SERVE ALL STADIUM LIVE 2022特設サイトより



ライブチケット

取れた…

マジで100年ぶりに取れた。体感としてな。

 

いやね、ほんとチケット取れなさすぎですよ、風。

 

Fujii Kaze alone at home Tour 2022(以下aahT)という全国ホールツアーが開催中なんですけども、全部ハズレ、ハズレ、目をこすってもハズレ。

f:id:imlv40:20220723145018j:image

e+の「チケットをご用意できませんでした」の文字が怖すぎて開封したくなくて、でも結果を知りたくて開けちゃう。で、現実の非情さに気づくところまでがワンセット。

いつだったかミルクボーイの漫才をパロってチケットの取れなさについて言及したんだが、流石に笑えない状況にまでなってきた。

 

 

で、しばらく深海に潜っていたんだけど、めげずにスタジアムライブは申し込む。

 

いや流石にアルバムの先行特典でしかもPanasonic Stadium Suitaとかいう巨大キャパ会場ならいけるっしょ!?と思ってたんだが、今の藤井風ならひょっとしたらひょっとするし最後まで怖かった。

 

出先の阪急梅田駅で「っっっっっっし!!!!」と熱いガッツポで不審者ムーブをかましつつ、興奮のまま自宅に帰りこれを書いているという。

 

藤井風生しぼり100%のaahTも死ぬほど行きたかったが、あの幻の日産スタジアムライブの続きを見れる、歴史の目撃者になれるっていう意味では今回の”Fujii Kaze LOVE ALL SERVE ALL STADIUM LIVE”は絶対に外せなかった。

 

藤井風とスタジアムライブ

藤井 風、 この秋 Panasonic Stadium Suitaにて 史上初の音楽ライヴを開催いたします。自身初の有観客野外ライヴです。 「風の秋まつり」 2022年10月15日(土)・16日(日)、 パナスタ(大阪府吹田市)で会いましょう。

Fujii Kaze LOVE ALL SERVE ALL STADIUM LIVE 2022

 

こちら。特設サイト掲載の風メッセージ。

2021年に最大規模のインパクトを残した日産スタジアムでの無観客配信ライブ。普段はサザンやミスチルといった日本のトップオブトップがライブする会場ですよ。

ある意味有観客での実施より、"FREE"を体現していたとも言えるがそりゃあ本音はファンの前で歌いたかったに決まってる。

だからこそ、LASAリリースタイミングでファンへのLOVE(愛)、そしてSERVE(奉仕)をスタジアムで届けるってのは本人にとってもチーム風にとっても重要な意義を持つってことに異論を唱える人はいないだろう。

 

地味に注目して欲しいのが特設サイトのURL。

https://fujiikaze.com/lasa_matsuri/

 

"lasa matsuri"。"satudium live"とかじゃなくてまつり。きちんとメッセージに対応してて、本気でスタジアムでお祭りぶち上げるつもりでいる。時期が時期なら浴衣で行きたいレベル。

 

秋祭り、冬休み みな抱きしめたら踊りなさいな

藤井風/まつり

 

今から10月が待ちきれない。

ライブに向けて色々書こう、はじめよう、そうしよう。

 

それでは今日はこの辺でアディオス。

 

 

心を震わせる藤井風の12の名歌詞Vol.2 LASA編

藤井風は哲学者だと思っている。

そう、だからこの記事のサブタイトルは「歌う哲学者、藤井風」でも良い。

冒頭から何だコイツゥゥまーた訳わかんない事言っとんなコイツゥゥと感じた人もいると思うが僕は心からそう信じてる。

なぜそう信じられるのか。またなぜ彼の歌を聴くと心が震えるのか。今日はそんな事を色々と語っていく。

 

位置づけ的には、前に書いたこちらの記事のLOVE ALL SERVE ALL(以下LASA)編と思ってくださいまし。(『青春病』は書いた当時のままVol.1に入れ込んでいます)

 

 

何故藤井風の歌詞が現代人の心をとらえるのか

具体的な歌詞に入る前にまずは前置き。

 

言うまでも無く、歌詞は時代の空気感や世相を敏感に反映している。分かりやすいところではスマホ、ポケベル、手紙といった通信手段が出てくるケース。例えば恋愛に紐づくツールとして時代を反映し、聴き手に風情や懐古を感じさせる手法。「あったねそんなんっ!!」ってなるアレだ。それ以外にもテレビやYOUTUBEといったメディア、あるいはUberみたいなサービスを具体名で歌詞に入れ込む歌も結構ある。宇多田ヒカルなんかはもろにそのタイプ。

メール無視してネトフリでも観て

パジャマのままでウーバーイーツでなんか頼んで

宇多田ヒカル/BADモード

一方、そういう具体的な固有名詞ではなく「その時代の価値観」を反映させた歌詞もある。つまり、20年代には20年代の、90年代には90年代の価値観があり、その時代で受容される/されない歌詞が存在するってことなんだが、まぁ令和とバブル期で受容される/されない歌があるのは当たり前で、今聴くと「キッツイな・・・これ」となる歌もあるし逆に今の歌を過去に持っていっても「は?」となるよね。

 

で、藤井風だ。

彼の歌詞には今の時代を、そして今の世界をどう生きるのか、どうあるべきなのかという哲学がこれでもかという程に込められている。

じゃあ彼はどう生きようとしているのか?

僕が思うに、藤井風は「何を得ようとしているのか」ではなく「何を捨てるのか」あるいは「何をしないのか」という事を主眼に生きているように思える。

後で取り上げるつもりの『まつり』や、僕の人生で最も大切な曲『帰ろう』などがわかりやすくって、僕らはみな満ち足りている。だからこそ全て人に与えよう、要らない感情は捨ててしまおう。というのが彼の根源的発想だ。

人間、誰しも足そう足そうとしてしまうところを風はどう引いていくかを考える。

そう、引き算の美学である。

バブル期のイケイケな時代にそんな事を歌っても辛気臭いと言われるのがオチだろうが、この飽和してるけどなんか不安で孤独な時代を生きる僕らには刺さる。刺さりすぎる。

後世に残る歌にはすべからくその時代の恋愛観や哲学が歌詞に反映されているが、間違い無くそんな歌を歌うのが藤井風であると思う。

 

それでは紹介していく 

相変わらず前置きが長いが本題に入る。

まつり

Pick upフレーズ 1 

で、一体何がほしいわけ 誰に勝ちたいわけ

なかなか気づけんよね 何もかも既に持ってるのにね

Pick upフレーズ 2

あれもこれもが大当たり 比べるものは何もない

勝ちや負けとか一切ない ない ない

のっけからアレだが、この曲すべてに心震えたと言いたい。だが、あえて!あえて一番ハッとさせられたのは上2つ。まずこの『まつり』という曲自体が今の藤井風を体現していると思っていて、そのスタンスを明確に表したのがこの歌詞。

ひたすらにフラット。僕らは既に持ってるし満ち足りている、後は自分の捉え方次第であると言われているようで、自分の中に生まれたネガティブは基本この歌詞に相殺される。

燃えよ

Pick upフレーズ 3

クールなフリ もうええよ 強がりも もうええよ

汗かいてもええよ 恥かいてもええよ

藤井風の150キロのど真ん中ストレート曲。本人的にも"Childish"かもしれないと表現するほどまっすぐな歌詞。聴いてて玉置浩二のある名曲を思い出した。

こんな僕でも やれることがある 頑張って

ダメで 悩んで 汗流して できなくって

~中略~

何もないけど 君のために 野に咲く花のように

玉置浩二/MR.LONELY

無論ニュアンスは異なるが、真っ直ぐ自分を肯定してくれる感覚は近いと感じてる。

やっぱね、クールぶったり斜めに物を見たり、無駄にイキったりする事ってあると思うんすよ。何頑張っちゃってんの?みたいな冷めた目とか。でもね、「もうええ」んすよ、そんなしけたアティチュードは。一生懸命やって汗かいて恥もかいて前に進んだ先にきっと答えがあると背中を押してくれる曲が今求められている。

藤井風の過去曲『もうええわ』をもじって韻踏んでたりして実は結構テクいことやってる曲でもある。

旅路

Pick upフレーズ 4 

お元気ですか 僕たちはいつになれど少年です

このフレーズ、実は超非凡と思ってる。だってさ、脈絡なく「お元気ですか」って歌詞にいれます?え?風って陽水なの?風&太陽&水?アーティスト界の三元素、藤井風をよろしく。

このフレーズ一つだけで大切なメッセージを誰かに届けている手紙的なニュアンスが足される。それを踏まえて冒頭から歌詞全体を読むと違った情景が浮かび上がる。これは凄い事ですよ。震える。

Pick upフレーズ 5

あーあ 僕らはまだ先の長い旅の中で 何かを愛したり

忘れたり 色々あるけど

極めつけはこちら。「色々あるけど」。ここも再三言及してるんでまたかよって人もいると思うが、放り投げた表現に聴こえるのに、そうだよなぁと妙に納得するのほんと凄い。ほんと色々あるよね、人生って旅路は。

damn

Pick upフレーズ 6

愛してくこの先ずっと 守ってく明日もずっと

i love me, and i will keep him in a safest fairest happiest place baby

この曲、実はLASAで一番ストーリーに起伏があると思ってる。とにかく内省的で、過去の自分の楽曲をセルフオマージュまでするSelf-reflectな楽曲が最後には強い決意表明に変わる。

注目して欲しいのが英語詞。

ここで「藤井風楽曲に英語詞が出てきたらそこは一番言いたい事説」を提唱したい。

『特にない』とかもそうだったが、英語に対して強い思い入れがある事は周知の事実として、すごく本心むき出しにしちゃってる感がある。ここも内なる自分を安全で公平で幸せにしておくっていう大切なメッセージを発している。よく考えたらLASA通して、現代の潮流でもある「Well-beingな状態」でいる事を歌ってるしな。

あと、"i"も含めて全て小文字にしてるのもおしゃれ。確かJ-WAVEのラジオだったかで「小文字がクールという流行りに乗っている」と話していた気がするが、あえて内なる自分=iと意図的に表現してるんじゃないかと深読みしたい。

やば。

Pick upフレーズ 7

何度も何度も墓まで行って

何度も何度もその手合わして

やば、やば、やば、やば。

はい、クレイジー出ました。もちろん、”It’s so crazy”=「やば」って意味だ。

あろうことかサビで「」というワードをチョイスし、その後「やば。」というカジュアルなワードと組み合わせるという異形の発想。

HAKAじゃないよ、墓ですよ?

オールブラックスのHAKA

そんな歌「私のお墓の前で泣かないでください」しか知りませんよ。え?もしかして「千の風になって」ってそういう・・・?

しかも地味~に「墓」と「やば」の"aa"で韻踏んでグルーヴを担保している。たぶん日本、いや世界初めてこの二語で韻を踏んだ人間だと思う。

風歌詞を面白いと思う理由の一つに、「言葉と言葉の飛距離」が離れている事がある。『罪の香り』なんかもそう。「おっと 罪の香り」とかさ、もう絶対組み合わせないしフレッシュすぎるでしょ。

それでは、

Pick upフレーズ  8

あたたかな日差しに ひれ伏すとき

あなたは揺らめく わたしを導いた

なにもない荒野は このわたしは

ありあまるほどの 果実に口づけた

「叙景詩」とでも言うんだろうか。映画の主題歌のように壮大なスケールをもつこの楽曲の歌詞はひたすらに情景描写が美しい。

なぜこの表現に震えたかというと、歌と歌詞のリンクが自分の中で最高到達点に達したからだ。細かすぎて伝わらない系のマニアック視点で申し訳ないが第一声の「あたたかな」のあたたかさは完全にK点超え。息の量、伸ばし方、ピッチのどれをとってもこれ以上ない歌唱とのリンクにまずやられてしまった。This is 表現力。

あと、「導いた」、「荒野」、「果実」のように何となく旧約聖書を連想させるワードを散りばめ、神聖な雰囲気を醸し出している点も曲のスケールの大きさに一役買っている気がする。ちなみに、自分的MVを作ってほしいランキング第1位。ほんと誰か監督頼む。そしてその主演は藤井風本人であってほしい。

きらり

Pick upフレーズ 9 

どこにいたの 探してたよ 連れてって 連れてって

何もかも 捨ててくよ どこまでも どこまでも

『きらり』、もう何回聴いたかわからないんだけど、改めて考えて聴きなおすと何とも不思議な歌だよ、ほんと。このフレーズは実際にライブで聴いた時に震えるほど感動したから入れた、というごく個人的な理由でピックアップ。ここでもやはり「捨ててくよ」という基本姿勢はぶれていない。サビで捨てる人、他にいます?

Pick upフレーズ 10

あれもこれも魅力的でも私は君がいい

「あれもこれも魅力的でも」っていうフレーズも自分に刺さりすぎた。目移りしちゃうタイプだし、一つに絞るなんて無理!むしろ色々興味があるのが自分の強みと思ってたんだけど、相当影響受けてる。余談だが「私は風がいい」って人が増えすぎてチケットとれなさ過ぎるのだけが困りもの。うーん、複雑。

ガーデン

Pick upフレーズ 11

だから冬よおいで 私を抱きしめて

その手の温もりで 生きさせて 溶けるまで

さてガーデン。LASAで一番好きな曲なので、もう絶対に絞るの無理ぃぃって感じだが、あえて選ぶ。まずこのフレーズ。もうなんて素敵な表現だろうとため息でますよ、風。

凍える冬だからこそ感じられる温もり。抱きしめられた幸福感、そして生の実感…書きながら冬嫌いが治りました。

Pick upフレーズ 12

人は出会い別れ 失くしてはまた手に入れ

それでも守り続けたくて 私のガーデン 果てるまで

そして最後のフレーズはやはりここ。結局言うことの本質は一切変わってない。

別れと出会い。喪失と獲得、そして死と生。この輪廻の果てに何があるかはわからないけれど、それでも守り続ける、生き続ける覚悟…書きながら胸の奥が熱く震えている。ここまで原稿用紙10枚分くらいグダグダ述べてきたけどこの感動を言葉にできない。

 

いかがだったろうか

『きみに読む物語』(原題: The Notebook)の原作者で知られるニコラス・スパークスが素敵な言葉を残している。

Our love is like the wind. I can't see it, but I can feel it.

(僕たちの愛は風のようなもの 目には見えないけれど感じるんだ)

A Walk to Remember(1999)/Nicholas Charles Sparks

藤井風が2022年に放った特大のLOVEは目には見えなくともしっかりと心に刻まれた。一方でみんなはどうSERVEするの?という問いかけを貰っている気もする。

 

長くなったが、まだまだ味わい尽くせない藤井風の歌詞世界をこれからも楽しんでいきたい。

それではこの辺でアディオス。

 

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